二次元が好きだ!!

SSなどの二次創作作品の連載、気に入ったSSの紹介をします。
現在ストパン憑依物「ヴァルハラの乙女」を連載中。

過去と現在-Ⅲ (ヴァルハラの乙女たち)

2011-05-30 18:54:59 | 習作SS

調理場でミーナ、エーリカ、宮藤が何やら話している。
何かは知らないが、雰囲気的にあまりいい話ではないことは確かだ。
意味ありげに私の方に視線を飛ばしたミーナからしてどうやら私に関することのようだ。

いや、誤魔化すのはやめよう。
本当は知っている、私が宮藤のことを『クリス』と呼んだ事が原因だと。

「はぁ・・・・・・。」

眼を閉じてため息を吐く。
宮藤をクリスと重ね合わせて見たのはここ最近見る夢のせいだ。
あの子を死なせることになった故郷での防衛線の情景が再び私に付きつける。

おまえのせいだと。

かつては忘れることで私は空へと戻り戦い続けた。
忘れてしまえば楽なのだ、罪悪感も何もかも抱えなくすむから。
人間、いちいち過去へ拘っていたら未来へと進めないからそれが普通で、それが最善なのだ。

けど、あの子。
宮藤芳佳が来てから思い出し始めた。

容姿はやや似ている程度だが、纏っている空気というものがすごく似ている。
前向きで、めげずに、優しく、人のために一生懸命な所が特にだ。
けど、そんなあの子はもういない。遺体になり、それはネウロイ占領下の故郷とともにある。

「おはよう、諸君。
 むぅ、どうしたバルクホルン、覇気がないぞ?」

「・・・おはようございます、坂本少佐。」

いきなり声をかけてきた坂本少佐に応じる。
この人とは随分、長い付き合いだが元気な所に変化がないな。
普通、こうした体育会系は無駄に熱く、うざったいがこの人にはそういった所がなく、見てる側も元気になりそうだ。
私と違い、すごい人だよ。

「なんだ、バルクホルン。さてはミーナと同じく便秘か?」

色々と台無しなこの鈍感を除けばな。
女の子ばかりの場所でも食事前に言う所なんてさすがもっさんと褒めるべきか。

さらに、さりげなく私の隣に座る。
気のせいかな、横から殺意じみた視線が突き刺さっているのは。うん、放置しておこう。
見えないけどなんか黒い瘴気が漂っている感じが調理場からするのも、気のせいだ!

「いや、少佐。私は至って健康ですから。」
「そうか、そうか、だが私には肉体でなく、心が疲労しているように見えるが?」
「・・・・・・そうですか?」

・・・鋭いのか鈍感なのか図り切れんな。
いや、最初のセリフはあれか?坂本流のジョークなのか?最初からわかっていたのか?

「別にバルクホルンを軟弱だと責めているわけではないのだぞ。
 そうやって悩んでいると部下を放置するのは、私の信条に反しているからな。」

ほれ、言ってみろと催促する。
うーむ、気持ちはすごくありがたいけど。今は、その。

「今は少し、自分でも気持ちの整理をつけたいので。」

「そうか・・・バルクホルンがそう言うなら今はそうしておこう。
 だが、話す気がでたらいつでも私の方へ話すがいい。上官ではなく戦友として、な。」

「はい・・・。」

こういう話が分る人は非常にありがたい。
ただの熱血馬鹿でない所が坂本少佐の素晴らしさの一つだと言える。
根性で何とかしろとか、ずかずかと土足で入り込むような真似をせず、人の気持ちに配慮できるのは貴重な人材だ。
前世は・・・思い出せない、いや思い出したくないな。

「だが、バルクホルン。一つだけ言わせてもらおう。」

改めて真面目な表情で坂本少佐が私に語る。
一体、何を言うつもりだろうか。

「バルクホルン、総力戦という定義は分るか?」

「ええ、まあ。
 それまで軍事と民間とはハッキリと区別されており、
 軍事行動に民間は干渉を受けなかった。が、生産性の向上は戦争に必要な物量の増加を招き、
 ありとあらゆる資源が国家によって統制をうけ、戦争は民間人にまで影響をうけるようになった―――これが総力戦の定義ですね。」

「うむ、上出来だ。宮藤もこのくらい頭が良ければいいのだが。」

ジト眼で台所へと視線をずらし、
釣られて見ると宮藤が恥ずかしげに苦笑していた。
いや、気にしなくてもいいんだよ、ついこの間まで民間人だったし。

「おっと、話がずれたな。
 次に聞くが数百万の軍人が動員され、
 同じく万単位のネウロイと戦う戦場において個人が果たす役割はどうだと思う?」

坂本少佐、まさか貴女が言いたいことは。
だとすると、そんなの知っている。
私はすでに知っている。けど、どうしても納得できないのだ。

「少佐、つまりどうしようもなかった言いたいのですか?
 総力戦において個人が戦争を左右することなど不可能だから、
 祖国を失ったのは仕方がない、どうしようもなかったから諦めろと、クリスは――――。」

「よく聞け、バルクホルン。」

静かに、私をなだめる。

「そうではない、私が言いたいのは人は一人では戦ってゆけない。
 総力戦とは言うなればチーム戦、個人プレーではない。
 どんな異才があっても一人では意味がなく、チームで初めて戦力を発揮する。
 だから、バルクホルン。一人で抱え込むな、おもえはもっとチームを頼ってくれ、甘えてくれ、そう言いたいだけなのだ。」

・・・前向きな発想だった。
で、自分は「どうしようもない」という後ろ向きな発想から始まっているのを比べて恥ずかしくなってきた。
自分、心理テストでコップの水は「もう半分しかない」と答えてしまう人間だからな。

「その、努力。します。」
「むう、微妙な返事だがわかればよろしい、ほめてやるぞ。」

そう言って私の頭に手を伸ばし―――ええ!?

「よしよし、偉いぞ。」
「・・・・・・・・・。」

2名ほど驚きの絶叫が聞こえたが気の(ry
な・・・何を言っているのかわからないが、私も何をされているのかわからなかったぜ。
ゴホン、それより現状を報告しよう。端的に言うと坂本少佐に頭をなでられている。

えらい、えらいとなでられている。
この人、癒し系も含むキャラだったかと思わず混乱してしまった。
にしても、なんか本当に甘えたくなってきそう。
それに坂本少佐の笑顔が凄く眩しい、同性だけど惚れてしまいそう―――。

「ば、バルクホルン大尉。
 そのなんて羨ましい・・・いえ、
 大尉とあろう方が将校の威厳をそこなう行動をするなんて・・・見損ないましたわよ!!」

妙な沈黙を初めに破ったのはペリーヌだった。

「そ、そうね。
 わたしも宮藤さんやリーネさんの前でそうやって威厳を損なう行為はどうかと思うわ。」

「あれー?ミーナさん、
 なんか『わたしもされたことがないのに』とか言ってませんでしたか?」

「宮藤さん、駄目。
 声に出しちゃだめだって。」

続けてミーナの意見が出るがすぐに宮藤に突っ込まれる。
やがて当事者2人を置いてけぼりにし、ワイワイ、ガヤガヤと食堂は喧騒に包まれる。

「まったく、頭をなでたくらいでそう騒ぐのはおかしいと思わないか、バルクホルン?」

不思議そうに、
本気で不思議そうに首を傾げ少佐は私に意見を求める。
まったく、これだから。

「これだから少佐は少佐というわけだ、結局。」
「・・・何を言っているのだ?」

でも、そうした所が坂本少佐の個性で美点かもしれない。
少なくとも、貴女のおかげで少しだけ気分が晴れた。

夜が来て、再び悪夢を見るまでは。




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