二次元が好きだ!!

SSなどの二次創作作品の連載、気に入ったSSの紹介をします。
現在ストパン憑依物「ヴァルハラの乙女」を連載中。

(短編)エリーをマブラヴに参戦させてみた (DeadSpace2×マブラヴTE)

2012-07-12 20:53:55 | 習作SS
(♯д・)<いつから宇宙CQCが使えるのがアイザックだけと錯覚いしていた?
( 二)<なん・・・だと



対BETA戦において一番会いたくないのは兵士級かもしれない。
突撃級のような衝撃力、戦術機ごと食らう戦車級も衛士にとって悪夢だが、衛士はまだいい。
レーザー級に生きたまま焼かれる恐怖があっても、戦術機は曲りなりとも装甲で防御され、低空ながらも空を飛べる。

生身で戦う事を強いられている大部分の歩兵どもからすれば羨ましいことこの上ない。
兵士級は突撃級のように馬鹿正直に突撃するだけの脳なしではなく、密かに浸透してくるという脅威がある。
平野部ならともかく常に近接戦闘を強いられている都市部での戦闘ではもはや悪夢どころの話ではない、地獄への片道切符を渡されたようなものだ。

そして1998年、帝都京都で数多くの兵士が地獄への特急電車に乗せられる中。
また一人、未だ幼さを残す一人の少女衛士が生き残ると言う信念と共に地獄への片道切符を握らされた。

「クリア・・・」

京都タワー近くの空き地に不時着してから篁唯依は拳銃を構えつつ慎重に歩を進める。
周囲は既に暗闇に包まれており、暗視装置もなく拳銃に取りつけてあるライトだけが頼りだ。
ここら辺はまだBETAが本格的に侵攻していないせいか、先ほどまでいた戦場とは違い遠くから届いた砲声と銃撃音が静かに響いている。

(いや、それはあまり頼りにならない。
 さっきはいきなり突撃級に体当たりされたし、戦線が錯綜しすぎているから兵士級が浸透していても可笑しくない)

対BETA戦争で人類は数的に常に不利なゆえにしばしば戦線が破らると、訓練学校で学んだことを反復する。
ふと、厳しくも優しかった教官、みんなでお菓子を食べながら帰った夜、切磋琢磨に訓練を重ねた日々を思い出す。
しかし、この戦いで短くても良き思い出に登場する人物たちの大半はたった10分そこらであの世へと旅立ってしまった。

「くそ・・・・・・」

誰かが言った、この世界は滅びの道を歩んでいると。
ある人は言った、それは人の業の深さが招いたものであると。
ならば、人類は一体どれほどの業を背負わせられたのだろうか?

もし神や仏が居るとしたら彼らはよほど人間が嫌いに違いない。
そうでなければこんな地獄を現世に体現させるような真似などするはずが――――。

『たす・・・けて・・・』
「和泉!!?」

場所が市街地であったこともあるが、重金属の雲が京都一帯に展開されているせいで機能を殆ど果たしていなかった携帯無線機が能登和泉の音声を捉えた。
唯依は友達が生きていたことに安堵し、孤独の恐怖から解放されたが明確に聞こえた次の音声に背筋が凍りついた。

『助けて!!!兵士級が兵士級が私をわたしぉおおお!!!』

絹を切り裂く、という生易しい物ではない絶叫が響きわたり銃声が轟く。
発砲炎が暗闇を切り裂き、唯依の肉眼は恐怖に震え、滝のように涙を流しながら出鱈目に撃っている和泉の姿を捉えた。
それだけでなく彼女に近寄る捕食者、すなわちBETAの姿も捉えた。

「兵士級!!」

エスカレーターを降りて右手約10メートル、数はおおよそ5、6体。
下半身が膨らみ、灰色の肌を持つ化け物共が歯を鳴らしつつ今まさに哀れな少女を食わんとしていた。

「くそ、どうすれば・・・!!」

ここで友を見捨てるのは極めて簡単だ。
兵士級は動けない和泉に注目しているからまわれ右で何も見なかった事にすれば自分だけは助かる。
しかし、それよりも友への愛情、高貴たる者の義務感がそれを阻み、その場に踏みとどませる。

だが、現実は非情である。
彼女には友達を助けるだけの装備も何もなくただ指を咥えて見守るだけしかないだろう。

「そんな、こと・・・できるか!!」

否、それでも唯依は友達を助けようと決意する。
幸い、あっちの方に意識が集中しているから奇襲の一撃でうまくいくかもしれない。
アサルトライフルどころか自殺用以外の用途がない拳銃だけだったが、しっかりと両手で構え――――。


突然現れた施設作業車が兵士級の群れに突撃し、轢き殺すと共に周囲に血漿をぶちまけた。


重量50トンはある90式戦車ほどの威力はないが、
時速50キロ、重量28.6トンの鉄の塊が与えた衝撃は凄まじく兵士級が宙に舞い、肉が千切れる。
ある兵士級は車体前面に固定されたシャベルで引き裂かれ、体が二つに裂けると下半身はそのまま踏みつぶされてしまった。

派手に轢いたせいで車体はもちろんキャタピラが進んだ痕に従って兵士級がぶちまけた体液が描かれている。
キューポラが持ち上がり、体液で汚れた車体からBEATを轢き殺した張本人を眼にした。

「この子、なかなか悪くないわね。コロニーで動かしていたデカブツよりも身軽だし」

そう言いつつ現れたのは帝国軍の野戦服を着込んだ片目の白人の女性であった、恐らく難民によって結成された外国人部隊出身なのだろう。
しかし、片手には拳銃にしては妙に厳つい代物を持っており唯依が知る限りあんな物が帝国軍に制式採用された覚えはない。

「いたたた・・・けが人だからもっとちゃんと運転してよね」
「いいじゃないか、アンタが言っていたお友達と合流できたのだし」
「うそ・・・山城さん!!!」

もう片方のキューポラから探していた山城総が痛みに耐えるように頭に手を当てつつ顔を覗かせた。

「まあ、それよりそこのアンタとアンタ。
 とっととこの辛気臭い場所から離れるわよ。
 さっきの音であの化け物共のが聞きつけてやって来るだろうしもたもたしないで乗りなさい」

返り血を浴びて腰が抜けた和泉と現実に追いつけない唯依にエリーが乗車を促す。
片方しか残っていなかったがその鋭い眼光は歴戦の戦士であること証明し、殿として散った教官を思い起こさせ、2人は条件反射的に頷いた。

「しまった・・・左にBETA!戦車級が3体、闘士級が2体こっちに来ているわ!!!」

人ではない足音に真っ先に反応したのは総であった。
その言葉につられて残りの3人が左に視線を向けると確かに戦車級と闘士級が自分たちを目指していた。
しかも、距離が近い上に脱出経路からやって来たためそれらを倒さない限り逃げることはできない。

「そんな・・・」

唯依が絶望の言葉を吐く。
戦車級は施設車どころか戦術機を食うような化け物共であるから強行突破など無謀だ。
さらに、徒歩で逃げても野生動物が狩りをするがごとく素早い闘士級には後ろを向いて逃げても無駄だ。

ここまで来てこの結末なのか?
地獄で得た幸運は零れ落ち、直面した絶対的な死の運命に唯依だけでなく幼い少女たちは黒い感情に潰される。

「まったく、次から次へと。アンタたちはそこでじっとしてなさい」

そんな中ただエリーは施設車から降りると、近くのコンビニでも行くようなノリでBETAに対峙する。

まさか、教官と同じく囮になるつもりか!
エリーの無謀すぎる行動に少女たちは思ったが直ぐに疑問を覚える。
なぜなら彼女は『逃げろ』ではなくこう言ったのだ、『そこでじっとしてなさい』と。


「今回はあの野郎を庇いながら戦わないですむから楽なものね」


少女たちから背中しか見えなかったが回想するように呟いた。

突然だが、ここで一つの仮説を提示したい。
アイザックは整備用のパワースーツを身にまとい幾万と襲いかかるネクロモーフを相手に、孤軍奮闘を続けたことは宇宙最強のエンジニアの名にふさわしいだろう。

しかし、だ。しかし、ここで宇宙最強のエンジニアについて異議を申し立てたい。
たしかに彼はSAN値葬な目に二度も合い(何れ三度目も経験する)、あげくにやむを得ずとはいえトラウマである石村へと突入する程の強さがある。
それだけではない、衛星から自由落下しても直ぐに立ち上がりアイテムを探す余裕があり、黄金の右足はネクロモーフの骨ごと砕くなど体力面においても注目される。

だが、彼はエンジニア用の(後半から軍用に切り替えたが)パワースーツを常に身にまとっていた。
翻ってエリーはアイザックのような派手さははないがレーザーカッタ―を除けばほぼ丸腰であった。
加えて、便利な道具であるギネシスもステイシスもないという縛りがあったにも関わらずあの地獄を駆け抜けた。
しかもお荷物を一人抱えつつもネクロモーフが徘徊する中を生き延び、最終的にはアイザックを拾い上げて衛星タイタンから脱出すらしてみせた。

これらの事実から導き出されるのはすなわち、

エリー>>>アイザック>>>>>>(人類が超えられない壁)>>>>>>禿げモンド>>>(やられキャラの壁)>>>スプロール=俺ら

の公式が成り立つ。
そして、散々SAN値チェックをされたエリーにとってBEATとの戦闘はごみ処理のようなものであった。

BETAの群れは広く展開できない都市部ゆえに密集している。
醜さと食われるという恐怖で普通の人間はパニックに陥っただろうが、エリーはプラズマカッターを構えて間髪いれずに連発。

光の刃が先頭にいた戦車級の一体の脚を切り裂き、バランスを崩してその巨大な口が地面と接吻を果たす。
後ろにいたBETAはその戦車級が障害物となって一時的に立ち止まる。その刹那の時間を見逃さないエリーがさらに発砲。

人が対応できない速度で突撃してこそBETAは立ち止まればただの大きな的にすぎずない。
2体の戦車級の脚を刈り取られ横転、闘士級が1体巻き込まれ地面の染みと変化した。

一方的な展開に少女3人は呆然と見守る。
訓練学校で学んだことは一体何だったのだろうかと考えてしまう。
そして唯依は武骨な代物の正体が明らかにオーバーテクノロジーであることに気づき、きっとそれのお蔭なんだと考える。

しかし、そんな考えはすぐに訂正される羽目になった。

「一体来た・・・!?」
「この・・・!」
「いやぁ!!?」

歩兵で対峙した場合最低対戦車ミサイルが必要とされる戦車級相手に圧倒的勝利を収めていたが。
闘士級が1体すり抜けるようにエリーに襲い掛かり目と鼻の先まで来てしまう。
対し総は反応できず、唯依は拳銃を構えるが間に合わない、和泉はただ悲鳴を発する。
少女らは彼女が闘士級によって首を取られると思ったが。

「Hum!!」

宇宙CQCを習得しているのは何も某エンジニアだけでなく、
エリーは名状しがたきバールのようなもの・・・ではなく、プラズマカッターを大きく振りかぶって闘士級に叩き付ける!!
突進系の化け物など散々体験した彼女からすれば実に手馴れてもので、最初の一撃で昆虫のような眼球が半分潰れ、闘士級の象のような鼻がへし折られる。

「Fuck!!Fuck!!Fuckingbitch!!」

よろける闘士級に一切の情けも容赦もなく連打を繰り返す。
腕を振りかざすたびに工具が唸りを上げて、肉を潰し穂骨を粉砕してしまう。

そして、グチャァア!!ベキィィ!!ボキィ!!と生々しい音声がBGMとして奏でられ、
そんなスナッフフィルムなシーンを見せられた少女たちはただ震えて見守るしかなかった。

「Yeeeeeeehaaaaaaa!!!」

宇宙CQCを極めた匠は決して手を抜かない。
相手が倒れたらすかさず、黄金の右足を振り上げて勢いよく踏み抜きしっかり止めを刺し、ビクビクと瀕死の状態であったがを上げてついに闘士級は動きを止めた。

「ふう、さて行きましょうか」

いい汗かいたぜ、といいたげに額に浮かんだ汗を拭って何事もなかったかのように少女達に振り返る。

(いや、いや、格闘戦でBETA相手に勝つって貴女は何者なの!!)

助けてくれたのはありがたいが彼女が見せつけた非常識ぶり一体全体何処から突っ込めばいいのかと唯依は悩む。
それは残りの2人も同じで、呆然やら驚愕した顔をしていた。


エリー・ラングフォード。


唯依達は知らなかった、彼女は地獄のサバイバルを生き抜き、遥か未来から招かれた――――ただのブルーワーカーであることを。
そして一人の人物の見せ場を完全に潰したことも知らなかった。







某衛士<・・・・・・・・・

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