勿体ない精神のはき違え。

当店に咲いたクンシランです。
ヒガンバナ科クンシラン属の植物で、我々が通常君子蘭と呼んでいるものは、受け咲き君子蘭というものです。
鮮やかなオレンジ色のこの花がなんともかわいらしい。小さなアマリリスのような花が集まって、葉の間からにょっきり顔を出して咲かせている。
そこだけ違う世界のように明るいのです。
花束のぼんぼんみたいでしょ？

ゴールデンウィークも終わった。
しかし月日のたつのは早い。毎日仕事していると曜日や、日にちの感覚がづれていき、全く今日が何の日かわからなくなる私がいる。
しかし、さぁ　儲からないけど　仕事だ仕事だ！

　さてもさても・・
規模こそ数段違うとは言いながら　一応食べ物商売をしているので、偽装に毒入り...相次ぐ食に関する事件には敏感になる。
あの「船場吉兆」がなんとお客が食べ残した料理の使い回しをしていたという。
なんでも「勿体ない」精神から前社長の指示で行なわれていたらしい。
うん万円も出して使い回しとは、あいた口が塞がらないし、お店側は丸儲けだよね。

　吉兆といえば「細雪」（谷崎潤一郎）に出て来る。
時は戦時下、「酒も料理も窮屈になってきましたが、ここはいつもこんなご馳走が出るのでしょうか？」

時は飽食の今。
使いまわし料理でも三ツ星料亭なら　満足満足。

高級料亭の体裁の裏では、まるで黒澤映画の野良犬に出てきたのような、焼け跡闇市の雑炊食堂のごときやりよう、いじましいよね。

　話は飛躍して申し訳ないが、つい最近読んだ太宰治の「佐渡」という短編に「私は1つ皿の上の料理は、全部食べるか、そうでなければ箸をつけないか、どちらかに決めている。金銭は無駄に使っても、それを受け取った人のほうで有益に活用するであろう。料理の食べ残しは、はきだめに捨てるばかりである。」というくだりがあった。
　昔は宴会などで食べ残した料理はお持ち帰りが出来た。ところが、最近は店から持ち出せない、食中毒とかの原因になると店が営業停止になるからか、保険所が厳しく取り締まっているのだ。しかしそれを店で使いまわすのはいのかといいたい。

とはいっても、営業再会後も船場吉兆は高級車で乗りつける客で繁盛しているんだって。日本のブランド信仰健在なり。
一食数万円も払って他人の食べ残しを食べていたお客に味のほどを聞いてみたいわ！
いやぁ　それにしても高級料理など食べた事ない庶民は　鰯の頭も信心からと、高級信仰で鰯の頭を有難がって食べていた人のことを想像するだけで可笑しいよね。

そうそう　先ほどの太宰の「佐渡」だけど、食べきれぬ料理を酌の女性に懇々と勧める。「女は私の野暮を憫笑するように，くすと笑って馬鹿丁寧にお辞儀をした。けれども、箸はとらなかった。」

あぁ～私なら喜んで食べるのに、だって蟹　鮑、蠣　が山のように出されたんだよ。読みながら涎が出る、全く食いしん坊の私です。

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