水曜日のカップ戦（大分戦）

西風に煽られるジェット機。
激しく揺れる機内。
「低気圧接近中なんだよね」
「また大分、天気悪いんだ…」
この地で晴天に恵まれたのは、いつだっただろう。
ガツン！
ほぼ定刻どおりに大分空港到着。
「涼しいね」
「雨も何とかなりそうだし」
レンタカーを借り、ゆっくりのんびりと九石ドームに向かう。
並びや駐車場の心配がいらない幸せ。

アウェイ席に大きく広げられたダンマク。
「それしか来ないってことだよね」
水曜日、アウェイ、カップ戦。
少ない人数でも“浦和は浦和”。
選手たちの力にならなければ。

ＧＫ山岸
ＤＦ細貝・堀之内・坪井・西澤
ＭＦ啓太・阿部勇樹・直輝・セルヒオ
ＦＷ原口・エジミウソン
リザーブ都築・濱田・峻希・アレックス・林・赤星・高原
闘莉王、暢久が帯同せず。
ホリがＣＤＦ、与志也が右ＳＢに、
濱田水輝、林がベンチ入り。
「ウチも怪我人多いよね」
「大分よりウチの方が多いんじゃない？」
ナビスコ杯予選。
ここを乗り切れば残り３試合はホームゲーム。
勝ち点３を奪って優位に立ちたいところ。
「座ってる人、結構いるね」
「試合始まっても、なのかな」
不安は的中。
「どうしてだろ？」
「仕方ない、か」

動かない、動けない。
「重いな…」
人が、ボールが、連動しない。
「足元、気になってるのか」
駆け上がる度に捲れ上がる芝生。
「これは酷い…」
「選手が怪我しなきゃいいんだけど」
ホリと細貝が交錯、転倒。
「大丈夫か！？」
連携上手くいってない！？」
地に足が着いていないような立ち上がり。
競り負ける、前線にボールが収まらない。
「監督の指示？じゃないよね」
左右に振られ、カウンターからシュートへ。
大分が、来る。
「しっかり！」
与志也の前後を狙われる。
「苦しいか、与志也」
暢久不在の痛手を感じる。
形が作れない。
棒立ちにも見える選手たち。
「蒸し暑いかな、ピッチ」
掘り下げ式のスタジアム。
風が通らない。

自陣右サイドで与志也がボールを奪う。
「良くやった！」
坪井へパス。
「クリアだ！」
「えっ？」
ギシくんにバックパス。
「あっ…」
「だよな…」
金崎に浚われ失点。
３６分、大分先制１－０。
「集中しろよ、集中！」
漸く目を覚ます浦和。
阿部勇樹のヘッドはクロスバー。
「一発殴られないと起きないのかよ、まったく」
たどたどしいパスが繋がる。
あれよあれよとゴール前に進出。
４１分、直輝が決める。
浦和同点、１－１。
「相手だってその程度なんだから」
「どうして相手に合わるんだろう」

前半終了、１－１。

ＨＴセルヒオｏｕｔ高原ｉｎ。
「今日のセルはね、良くないセルだったね」
「流れ変えてくれよ、タカ」
凸凹のピッチ、ウチには不利な条件。
「動かなきゃ、もっと！」
決定機を生み出す大分、防戦一方の浦和。
いつ勝ち越されてもおかしくないような展開。
「ねぇ、太鼓遅くない？」
僕の気持ちが逸るのか、太鼓の音まで緩く感じてしまう。
「遅いと思うよ、太鼓」
「そうだよねぇ」
選手もゴール裏も、相手のリズムに嵌っている。

５６分、堀之内警告。
「（試合に）乗り切れてないか、ホリ」
５８分、細貝警告。
「引っ張らないと止められないのか…」
苦しい、苦しい時間帯が続く。
坪井が孤軍奮闘、
直輝がボールを引き出そうとする。
「セットプレーじゃないと（点は）入らないかも…」
６４分、細貝ｏｕｔアレックスｉｎ。
「動かないならアレのクロスの方が怖いかもね」

ギシくんのファインセーブと大分の決定力不足。
「相手が強かったら何点決められてるか分かんないよ」
８１分、原口ｏｕｔ峻希ｉｎ。
「掻き回せ！」
直輝のシュートはＧＫ正面。
エジのミドルはクロスバーの上。
苦手九石ドーム。
嫌な予感がする。
ますます逸る気持ち。
声が、跳ねが、前のめりになる。
「勝とうぜ、勝とうよ」

ロスタイム３分経過。
試合終了、１－１。
「勝てないのか…」
もっとやれたんじゃないか。
もっとやらなきゃいけなかったんじゃないか。
不完全燃焼だった。
ナビスコ杯だからって、舐めてた訳じゃないんだけど…。

代表選考

直輝がね、選ばれたんだね。
喜ばしいことだよ。
高いレベルで経験を積む事は、
選手としての幅が広がるからね。

ただ、次のナビスコ杯予選は厳しくなるな。
代表４人が抜ける上に、ホリが出場停止。
こちらも“若手の登竜門”として
貴重な公式戦だから。
１試合でも多く本物の試合が組まれるようにしなければ。

緊張感溢れるトーナメント戦。
そして“あの場所”での決勝。
前回のことを知らない選手たちが増えてきたしさ。

[追記]
だって、
他人が喜んでる様をただ眺めているのは癪じゃない？