おりおん日記

電車に揺られて、会社への往き帰りの読書日記 & ミーハー文楽鑑賞記

もっともっと幸せな横浜公演♪ 文楽・秋の巡業

2009年10月20日 | 文楽のこと。
 府中公演で打ち止めのつもりでしたが…たった2日で禁断症状に襲われ、横浜公演に緊急参戦。諸般の事情から「絵本太功記」のみの拝見でしたが、もっともっと幸せを満喫しました。

 突然思い立ってギリギリに会場に駆けつけたにもかかわらず、上手側の前から4列目の席が売れ残っていました。私的には超ラッキーなのですが、こんなスゴイ公演の、こんないい席が売れ残っていていいの? しかも、真ん中より後ろの席はほとんどカラッポ。横浜公演のチケットは、なんと、出血サービスのA席でもたった3000円。千円札3枚で世界遺産が見られるんですよ!いったい、横浜市民の民度はどうなっているの??? 横浜市民を代表して技芸員の皆様方に土下座して謝りたい気分でした。

 3回目の太功記は心静かに味わうつもりでした。仙台・府中も前の方の席だったのですが下手側。横浜公演で、初めて、上手側の席に座ってみて、断然、お人形ちゃんの表情やさりげない所作までもがバッチリと見えることがわかりました。しかも、顔を右に向ければ、すぐそこに床があって、大夫さんの汗がキラキラと光り、三味線さんの呼吸までもが聞こえてくるのです。平常心ではいられません。仙台で感激し、府中で興奮し、横浜で我を失ってしまいました。秋巡業、私的には、期待三倍、四倍以上の収穫でした。

【勘寿さん、勘十郎さま、勘弥さん】

 3人が遣われる3世代の女たちが素晴らしいことは仙台公演の時から感じていました。それを上手から拝見して、表情がわかると、感動もひとしお。

 すべてを達観したさつき。夫にも、息子にも、姑にも、嫁にも気を配り、思いやりをかける操。全身で十字郎への思いをぶつける初菊。それぞれが純粋で、真っ直ぐで、切なくて、そして、年齢にふさわしい美しさが滲みだしていてゾクゾクしてしまいます。その上に、3人の遣い手の最高の芸がぶつかりあうエネルギーで鳥肌が立ちました。本当に、凄いものを見せていただきました。文楽に巡り合えた幸運に深く深く感謝!

 ストーリー展開上は、観客の目が十字郎に引きつけられている場面でも、さつきは不肖の息子に刺された傷に苦しげに耐えている。息子や夫のことも気掛かりながら、傷を負った姑のよりそう操。2人が静かに、押し殺した息をしているのが見えるのです!

 そして、枕を交わしたこともない男と一緒に死にたいという初菊。痛々しいほどの幼さが全身から伝わってきます。死に際の十字郎に抱き締められるのが初菊にとっての一番幸せな瞬間だなんて悲しすぎる-。なのに、その場面、本当に美しかった。文楽の演出にスローモーションなど無いのですが、でも、まるで、スローモーションで映像を見せられているように2人が手を取り合い、抱き合うのが見えるようでした。かなり、テンション上がりました! 心拍数下がるのに3日ぐらいかかりそうです。

 勘弥さんの初菊が超かわいらしく、一輔さんの十字郎は男の色気が漂ってました。

【津駒さん】
 
 始まって30秒で首筋に汗がキラリ。2分で顔からボタボタと玉の汗が落ち始めました。お着物や袴はたくさん替えがあるのでしょうか。 スポーツマンが「汗をかいて、トレーニングウェアを絞れるぐらい」というのは聞きますが、津駒さんは、少なくとも、長襦袢は絞れるんじゃないかと思います。

 もちろん、それだけの大熱演。浄瑠璃、ほんとうに素晴らしかったです。本公演でも津駒さんの語りは大好きですが、床と至近距離で聞くと、空気が震えるのまで伝わってくるようで、さらに感動です。

【清介さん】

 ミスチルって、長年に渡って、高いレベルで安定した品質の楽曲を供給し続けていて凄いなぁと思うのですが、でも、絶頂期は、シーソーゲームとかesとかの頃だったと思うのです(あくまでも私見ですが…)。 あの頃、歌っている時の桜井和寿の目は完全にイッちゃっていました。それこそが、有無を言わせぬ迫力を生み出し、聴く人の心をとらえて離さないパワーだったと思うのです。

 で、清介さんの目は、あの頃の桜井和寿ぐらい、イッちゃってました。床の近くに座っているだけで、物凄い、圧力を感じるのです。文句なくカッコよかった!

 府中ではちょっと席から床が遠かったため「あの超絶技巧をアップで見たい~」と身悶えましたが、横浜では念願適って、アップで拝見。節くれだったゴツゴツした指(ごめんなさい! でも、清志郎さんの細く、スッーとした指とはあまりにも雰囲気が違ったもので…)が、存在感のある豊な音色を生み出していくのは、かなりセクシーでした。

【勘十郎さまアゲイン】

 やっぱり、誰がなんと言ってもカッコよすぎます。秋巡業ではイケメン勝頼と、狐が憑依した八重垣姫の左、そして老女形の操。まったく違うタイプの役なのに、全てを完璧に遣われていて、「この役は、勘十郎さま以外に考えられない」という気にさせられてしまうのです。

 今公演ではありませんが、女殺のキレる若者、一つ家のスプラッター婆さん、浪花鑑の棒手振り団七に、狐忠信-。 もう、何もかもカッコイイです。 私は宗教を持たぬものですが、でも、勘十郎さまを見ていると、きっと、神さまがどこかにいるような気になってしまいます。

 さて、しばらくは文楽断ちの日々を送らなければなりません。「働かざるもの大阪遠征するべからず」-ということで、まじめに働きますっ。 


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