<仙台、分町で吉次(2)>
国分町だが、一丁目はオフィス街、二丁目は東北随一の歓楽街、三丁目は市役所やイベントを行う市民広場がある。
鹿児島の繁華街「天文館」が地元で「天街(てんまち)」という愛称を持つように、仙台の繁華街「国分町」の飲食街・歓楽街のある二丁目を地元では「分町(ぶんちょう)」と呼ぶそうだ。週末の金曜土曜には国分町の通行量は一晩七万人を数えるという。
ホテルでもらった地図を頭に叩き込むと、タクシー利用を勧められたが二キロもないので国分町へは歩いていった。
二十分足らずで賑やかな(国)分町通りに着き、住所をたよりに目当ての店を探しだすとちょうど開店五分前だった。灰皿があったので一服しているうちに看板が灯されたので地下の店に降りていく。
わたしは勝手に「まる特」と短く呼んでいるのだが、実際の店名は「浜の漁師居酒屋こちらまる特漁業部」とあきれるほど長い。ここが本店だが仙台のあちこちにあり、山形に一店舗、東京にも二店舗だしている。
入口には本日供されるのだろう、活きのいい魚介が入った魚箱(とろばこ)が積みあげられている。
予約なしなのだがというと、こちらへどうぞと奥に案内される。通路の両側には、グラスやら箸やらが整然とセットされた個室の予約席がずらりと並ぶ。まだ早いので誰もいないが。
いちばん奥にテーブル席が並んでいて、ここが当日客専用なのだろう。
とりあえず芋焼酎の水割りを頼み、メニューを点検する。「吉次の煮付」を発見すると、念のために焼き吉次の有無を確認してから煮付を注文した。
突出しで焼酎をゆっくり呑んでいると、見当違いの別テーブルから「オイオイ、おれたちは吉次なんか頼んでいないぞ」という声が聞こえたので、「たぶん、それこっちです」と叫ぶ。
せっかくの吉次なので、焼酎から地酒「一ノ蔵」の辛口の燗酒二合に切りかえた。
(う、旨すぎる・・・)
口中でほろほろ崩れる身の甘みと口一杯に広がる上質な脂にあらためて瞠目してしまう。
前に東京森下の居酒屋で絶品の銀だらの煮付を食べたときに書いた文章を引用する。
『この煮付けには半端ではない手間をかけたことと推察した。
わたしが魚で一番好きなのは、なんといってもキンキ(吉次、キンキン、メンメともいう)である。
初めて食べたのが、出張で行った仙台の盛り場国分町だった。
「ぜひぜひ、食べてみてください」
と言われ、焼き魚で出されたキンキを一口食べて、世の中にはこんなにも美味い魚があるんだと思い切り舌を巻いてしまった。
とにかく美味である。
きれいに食べきっていったん下げた皿が、湯を注いでまたテーブルに戻ってきた。自分が食べたキンキの骨から
とてつもない旨い出汁と脂が沁みだして、極上のスープとなっていたのである。
その、キンキと勝るとも劣らない美味な煮付けであった。
キンキも銀だらも、同じカサゴ目と知ってなんとなく腑に落ちた。』
熱燗二合をお代りするときに、さっぱりしたカッパ巻きも追加した。
吉次とカッパ巻きそれに濃い芋焼酎が一杯と熱燗四合で勘定して、国分町通りに出た。
「味よし」は老舗ラーメン店だ。いまはなぜか東京の赤坂にも支店がある。
わたしも出張の夜は痛飲したあとにここのラーメンを食べてからホテルに戻るのが常だった。カウンター席だけの小さな店だが深夜二時まで客は絶えない。
(まだ、締めには早いな・・・)
すこしだけ呑みたりないから、もう一軒探すとするか。
店先に飾られた可愛いというより瓢軽な、目玉の飛び出した猫にバイバイと手を振ってネオン街の奥に向かった。
→「天街(天文館)で呑む(1)」の記事はこちら
→「天街(天文館)で呑む(2)」の記事はこちら
→「天文館(1)」の記事はこちら
→「天文館(2)」の記事はこちら
→「仙台、分町で吉次(1)」の記事はこちら
→「読んだ本 2013年7月」の記事はこちら
国分町だが、一丁目はオフィス街、二丁目は東北随一の歓楽街、三丁目は市役所やイベントを行う市民広場がある。
鹿児島の繁華街「天文館」が地元で「天街(てんまち)」という愛称を持つように、仙台の繁華街「国分町」の飲食街・歓楽街のある二丁目を地元では「分町(ぶんちょう)」と呼ぶそうだ。週末の金曜土曜には国分町の通行量は一晩七万人を数えるという。
ホテルでもらった地図を頭に叩き込むと、タクシー利用を勧められたが二キロもないので国分町へは歩いていった。
二十分足らずで賑やかな(国)分町通りに着き、住所をたよりに目当ての店を探しだすとちょうど開店五分前だった。灰皿があったので一服しているうちに看板が灯されたので地下の店に降りていく。
わたしは勝手に「まる特」と短く呼んでいるのだが、実際の店名は「浜の漁師居酒屋こちらまる特漁業部」とあきれるほど長い。ここが本店だが仙台のあちこちにあり、山形に一店舗、東京にも二店舗だしている。
入口には本日供されるのだろう、活きのいい魚介が入った魚箱(とろばこ)が積みあげられている。
予約なしなのだがというと、こちらへどうぞと奥に案内される。通路の両側には、グラスやら箸やらが整然とセットされた個室の予約席がずらりと並ぶ。まだ早いので誰もいないが。
いちばん奥にテーブル席が並んでいて、ここが当日客専用なのだろう。
とりあえず芋焼酎の水割りを頼み、メニューを点検する。「吉次の煮付」を発見すると、念のために焼き吉次の有無を確認してから煮付を注文した。
突出しで焼酎をゆっくり呑んでいると、見当違いの別テーブルから「オイオイ、おれたちは吉次なんか頼んでいないぞ」という声が聞こえたので、「たぶん、それこっちです」と叫ぶ。
せっかくの吉次なので、焼酎から地酒「一ノ蔵」の辛口の燗酒二合に切りかえた。
(う、旨すぎる・・・)
口中でほろほろ崩れる身の甘みと口一杯に広がる上質な脂にあらためて瞠目してしまう。
前に東京森下の居酒屋で絶品の銀だらの煮付を食べたときに書いた文章を引用する。
『この煮付けには半端ではない手間をかけたことと推察した。
わたしが魚で一番好きなのは、なんといってもキンキ(吉次、キンキン、メンメともいう)である。
初めて食べたのが、出張で行った仙台の盛り場国分町だった。
「ぜひぜひ、食べてみてください」
と言われ、焼き魚で出されたキンキを一口食べて、世の中にはこんなにも美味い魚があるんだと思い切り舌を巻いてしまった。
とにかく美味である。
きれいに食べきっていったん下げた皿が、湯を注いでまたテーブルに戻ってきた。自分が食べたキンキの骨から
とてつもない旨い出汁と脂が沁みだして、極上のスープとなっていたのである。
その、キンキと勝るとも劣らない美味な煮付けであった。
キンキも銀だらも、同じカサゴ目と知ってなんとなく腑に落ちた。』
熱燗二合をお代りするときに、さっぱりしたカッパ巻きも追加した。
吉次とカッパ巻きそれに濃い芋焼酎が一杯と熱燗四合で勘定して、国分町通りに出た。
「味よし」は老舗ラーメン店だ。いまはなぜか東京の赤坂にも支店がある。
わたしも出張の夜は痛飲したあとにここのラーメンを食べてからホテルに戻るのが常だった。カウンター席だけの小さな店だが深夜二時まで客は絶えない。
(まだ、締めには早いな・・・)
すこしだけ呑みたりないから、もう一軒探すとするか。
店先に飾られた可愛いというより瓢軽な、目玉の飛び出した猫にバイバイと手を振ってネオン街の奥に向かった。
→「天街(天文館)で呑む(1)」の記事はこちら
→「天街(天文館)で呑む(2)」の記事はこちら
→「天文館(1)」の記事はこちら
→「天文館(2)」の記事はこちら
→「仙台、分町で吉次(1)」の記事はこちら
→「読んだ本 2013年7月」の記事はこちら
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