<永平寺初参詣(2)>
法堂からは、下りになる。
輝くように磨きこまれた回廊を滑らぬようにそろそろと降りていく。
永平寺は座禅修行の道場であるので、わたしもそこでぜひ座禅を短時間でも体験したい。そう思って、来る前に調べてみた。
鎌倉や京都のチャラチャラした観光寺院だと、短時間で座禅体験やら写経などができるが、さすがに永平寺にはそんな甘っちょろい短時間体験コースはない。
ただし、一泊二日(¥8,000)、と三泊四日(¥12,000)の体験修行があることをみつけたのだった。
その修行の日課とは、次ぎのようなもので、冬季は30分から1時間起床時間が遅くなる。この永平寺での短くも厳しい修行を体験すれば、いまよりもさらに真人間になるに違いない。
3:30 起床洗面
3:50 暁天座禅
5:00 朝課(諷経)・・・朝の勤行。諷経(ふぎん)といって読経のことである。
7:00 小食(しょうじき)・・・朝食・・・お粥、胡麻塩、漬物
8:30 作務
10:00 座禅
11:00 日中(諷経)・・・昼の勤行。
12:00 中食(ちゅうじき)・・・昼食・・・麦飯、味噌汁、漬物、一菜
13:00 作務
14:00 座禅
16:00 晩課(諷経)・・・夕の勤行。
17:00 薬石(やくせき)・・・・夕食・・・麦飯、味噌汁、漬物、二菜
19:00 夜座・・・座禅
21:00 開枕(かいちん)・・・就寝
(朝の未明三時半から夜九時までびっしり・・・なんとも厳しいスケジュールだ・・・)
しかし・・・朝は早いのは問題ないし、粗食もオッケー、煩わしい所作や面倒な作法やきつい作務にもすぐに適応し慣れることだろう。テレビも新聞も携帯もなくても構わない。禁煙や禁酒も数日間であればなんとかなりそうだ。原則、私語禁止も寡黙(ほんとうかよ)なわたしは平気である。
ひとつだけ問題がある。
最低でも十人位と共に就寝するわけだが、これが困る。
わたしは寝相が悪い(らしい)。歯ぎしりつきで鼾をかくわさらに寝言をいう(らしい)のだ。だからこそのひとり旅好きでもあるのである。
それが本当なら一緒に寝るひとは堪ったものではない。自覚がまったく無い睡眠たっぷりのわたしを、周りは秘かに憎悪の眼で睨む。連夜の睡眠不足のあげく、憤激する修行仲間たちに濡れた薄紙で鼻と口を塞がれ、間引かれても困る。
というわけで、今回は体験修行を見送った。
そんなことを思いだしながら、回廊をゆっくりと歩む。
― 続く ―
→「永平寺初参詣(1)」の記事はこちら
法堂からは、下りになる。
輝くように磨きこまれた回廊を滑らぬようにそろそろと降りていく。
永平寺は座禅修行の道場であるので、わたしもそこでぜひ座禅を短時間でも体験したい。そう思って、来る前に調べてみた。
鎌倉や京都のチャラチャラした観光寺院だと、短時間で座禅体験やら写経などができるが、さすがに永平寺にはそんな甘っちょろい短時間体験コースはない。
ただし、一泊二日(¥8,000)、と三泊四日(¥12,000)の体験修行があることをみつけたのだった。
その修行の日課とは、次ぎのようなもので、冬季は30分から1時間起床時間が遅くなる。この永平寺での短くも厳しい修行を体験すれば、いまよりもさらに真人間になるに違いない。
3:30 起床洗面
3:50 暁天座禅
5:00 朝課(諷経)・・・朝の勤行。諷経(ふぎん)といって読経のことである。
7:00 小食(しょうじき)・・・朝食・・・お粥、胡麻塩、漬物
8:30 作務
10:00 座禅
11:00 日中(諷経)・・・昼の勤行。
12:00 中食(ちゅうじき)・・・昼食・・・麦飯、味噌汁、漬物、一菜
13:00 作務
14:00 座禅
16:00 晩課(諷経)・・・夕の勤行。
17:00 薬石(やくせき)・・・・夕食・・・麦飯、味噌汁、漬物、二菜
19:00 夜座・・・座禅
21:00 開枕(かいちん)・・・就寝
(朝の未明三時半から夜九時までびっしり・・・なんとも厳しいスケジュールだ・・・)
しかし・・・朝は早いのは問題ないし、粗食もオッケー、煩わしい所作や面倒な作法やきつい作務にもすぐに適応し慣れることだろう。テレビも新聞も携帯もなくても構わない。禁煙や禁酒も数日間であればなんとかなりそうだ。原則、私語禁止も寡黙(ほんとうかよ)なわたしは平気である。
ひとつだけ問題がある。
最低でも十人位と共に就寝するわけだが、これが困る。
わたしは寝相が悪い(らしい)。歯ぎしりつきで鼾をかくわさらに寝言をいう(らしい)のだ。だからこそのひとり旅好きでもあるのである。
それが本当なら一緒に寝るひとは堪ったものではない。自覚がまったく無い睡眠たっぷりのわたしを、周りは秘かに憎悪の眼で睨む。連夜の睡眠不足のあげく、憤激する修行仲間たちに濡れた薄紙で鼻と口を塞がれ、間引かれても困る。
というわけで、今回は体験修行を見送った。
そんなことを思いだしながら、回廊をゆっくりと歩む。
― 続く ―
→「永平寺初参詣(1)」の記事はこちら
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