風の向くまま薫るまま

その日その時、感じたままに。

鶏舞

2015-01-16 15:27:05 | 岩手・東北




この前の記事の一番最後にUPした動画『リトル・フォレスト【冬編・春編】』の予告編動画の中で、橋本愛ちゃんが「鶏舞(とりまい)」を舞っている場面が、一瞬映し出されていました。


鶏舞は、岩手県南部(奥州市付近)から宮城県北部(大崎市、栗原市)付近辺りまでのエリアで主に伝承されている、「南部神楽」のオープニングで舞われる演目です。











激しく回転する動きを特徴とする舞で、天の岩戸を開く時に鳴いた、「常世の長鳴鶏」を表現したものであろうとされています。

衣装は非常にカラフル。鳥兜を被り、長い鉢巻に襷に帯を垂れ流しているのは、おそらく鶏の尻尾のイメージなのでしょう。左手に扇、右手には「錫杖」と呼ばれる飾りのついた短めの棒状のもの、地域によっては「ほこ」と呼ばれる祓い幣を持って舞います。








岩手県奥州市衣川区(旧胆沢郡衣川村)には、この南部神楽とりわけ鶏舞の、後世への伝承を目的とした活動が盛んに行われており、小、中学校でも教育の一環として取り入れられ、ダンス風の群舞にアレンジし直した鶏舞が授業に組み込まれているようです。



私は衣川出身ではありませんが、私の在籍した中学校でも、このダンス風群舞としての鶏舞の授業がありました。当時の私は、地元の伝統文化などには、ほとんど興味がなく、仕方なくやらされている感がハンパなかったですね(笑)今考えるともったいないことをしたな、と思いますね。もっと真面目に憶えておけばよかった。








さて、Wikipediaによりますと「神楽」の語源は「神座(かみくら)」にあるとか。神座とは神が依られるところ。神を降ろし、参拝者の祓い浄めを行うためのものだったそうです。伊勢神宮の神楽殿で行われる神楽は、この祓い浄めですね。

これが山伏によって地方に伝播されるに及んで、神楽は祈祷や奉納のためのものに変化して行き、芸能色が強くなっていきます。




南部神楽の発祥地は、岩手県一関市萩荘地区の奥にある小高い擂鉢型の綺麗な山、自鏡山であるとされています。

この自鏡山は古代よりの信仰の地であったようで、この山に鎮座する吾勝神社は、ヤマトタケルノミコトによる建立と伝えられており、御祭神はアメノオシホミミノミコト。ヤマトタケルが岩手県に来たという記事は、「古事記」にも「日本書紀」にも書いておりませんが、岩手県南にはヤマトタケルに縁起を持つ神社が多く、おそらくは古代東北の開拓と、なんらかの関係があるのでしょう。

それはともかく、この自鏡山を管理していたのは、出羽三山系の修験者たちで、この修験者たちが代々、神楽を伝えてきたわけですが、明治維新による神仏分離令によって、山伏はその存在そのものを否定されてしまいます。

山伏が去った後、神楽が途絶えてしまうことを危惧した地元民によって、神楽は伝承されることになります。これが「南部神楽」と呼ばれ、現代まで連綿と伝えられているのです。



自鏡山は今でこそ辺鄙なところにありますが、古代から中世にかけては、街道が近くを通っていたであろうことが推察され、広範囲に渡っての信仰を集めていたようです。かの奥州平泉藤原氏も、この自鏡山に寺社を建立し、手厚く保護したと伝えられています。

零感の私にはわかりませんが、こんな辺鄙な田舎の小さな山には、多くの人々の信仰を集めるに足るような、なにやら秘密があったようですね……。



自鏡山



南部神楽のなかでも、「みかぐら」と呼ばれる鶏舞は特にフューチャーされることが多い。そのダイナミックな躍動感のある舞は、多くの人の目を惹きつけます。

神楽のルーツは、天岩戸で舞われたアメノウズメの舞ともいわれております。天岩戸からアマテラスを誘い出すための舞がルーツなのです。

鶏舞は「常世の長鳴鶏」を模したものとされています。鶏は朝の到来を告げる鳥。つまり、アマテラスが天岩戸がお出ましになることを告げる鳥でもあるわけです。

神楽のルーツであるアメノウズメの舞と鶏舞は、天岩戸を通して繋がっているわけですね。









ところで、「天岩戸」とは、一体何処にあるのでしょう?

言わずもがなですね。それは、

一人一人の、心の中に。



岩手県奥州市衣川区「磐神社」にて奉納された御神楽(鶏舞)。13分と長いですが、そのダイナミックな舞を堪能していただきたい。









ももクロ夏のバカ騒ぎ2014日産スタジアム大会「桃神祭」より。

この画像の曲目は「天手力男」。天岩戸神話で、アマテラスを岩戸から引っ張り出した力自慢の神です。

この衣装といい、曲のタイトルといい。ももクロの「舞」もまた

ある意味、「神楽」です。

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4 コメント

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Unknown (玲玲)
2015-01-16 15:43:52
読みながら、これはももクロちゃんが出てくるかも?キターーー!と思って読みました。

自鏡山、三角山ってこういう山のことを言うのかしら?
とても、素敵な風景です。行ってみたい、あっ残ねんながら仔犬が生まれた為に今年もどんと祭は行けず、主人は焼き芋売りに仙台行って来ました。ズルいー。
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Unknown (薫風亭奥大道)
2015-01-16 19:21:32
玲さん、はい、御期待通りです(笑)桃神祭のBlu-Ray&DVDは3月発売でしたか。KISSとのコラボ・シングルは今月末。来月末には「幕が上がる」公開。あと「ドラゴン・ボールZ」の新作の主題歌も、ももクロが担当するとか。
今年は念頭からももクロ尽くしですよ(笑)
仔犬が生まれましたか。それはめでたい!
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コココココナッツ~ の歌ではなかった(笑)。 (トキトキ)
2015-01-17 06:30:46
博士、映像拝見しました。

たまたま高野山の青葉祭りを見て感じたのですが、この踊りは、各地の花笠音頭と、いうのか、阿波踊りなどの、笠をかぶった踊りがあるお祭りと近いのかも知れませんね。あちらはゆっくりなのですが。衣装の色彩も似ています。ももクロの色彩も共通していますね。
江戸時代、地味な色が流行ったり、お寺の彩色の剥げたものを見慣れていると、気づきませんが、お祭りや太極殿など、極彩色、蛍光色こそ使用されてきたのだなと感じます。
韓流ドラマを観ると、女性の伝統衣装の派手な色に驚きます。
もしかするとその感覚は、天の岩戸神事の頃から伝わる、お祭りでこそ使用する色彩がそこにあるから、なのかも知れません。ふむふむ。ありがとうございます。
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Unknown (薫風亭奥大道)
2015-01-17 07:46:36
おトキさん、祭りは「ハレ」ですから、ここぞとばかりに派手な色彩を使うのでしょうね。それは元を糺せば、すべて天岩戸に繋がっているのかもしれません。
映像観ましたか。この奉納が行われた磐神社というのは、その名のとおり巨大な岩をそのまま御神体にしている神社なんです。野原の真ん中になぜか一つだけ、巨大な岩がゴロンと転がっている。明治以前は鳥居も拝殿もなく、そのままの岩を祀っていたんです。おそらくは縄文の頃からの聖地だったでしょう。
そんな場所で舞われる鶏舞には、なにやら特別な感慨があります。
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