6月18日。俳優、加藤剛さんが逝去されました。80歳でした。
名奉行・大岡越前守忠相役が生涯最大の当たり役でしたね。子供の頃はこの『大岡越前』と『水戸黄門』はほぼ欠かさず観ていた記憶があります。
大河ドラマでも活躍された方で、『風と雲と虹と』の平将門役も印象的でしたが、加藤さんで大河と言ったら、なんといっても『獅子の時代』でしょう。
『獅子の時代』は昭和55年(1980)放送で、脚本、山田太一。音楽。宇崎竜童。幕末から明治にかけての激動の時代を生きた薩摩藩士、苅谷嘉顕(加藤剛)と、会津藩士、平沼銑次(菅原文太)の二人を主人公にしたドラマで、お分かりかと思いますが、この主人公は両名とも架空の人物なんです。
架空の人物が主人公ということで、当時の大河ドラマとしては大変画期的なものでした。
パリの万博で知り合った二人は、お互いを認め合いながらも、立場の違いから反目し合う。やがて両者は会津戦争で再開します。
苅谷は官軍としての体面を保つため、兵士たちに略奪・強姦等の非道な行為を慎むよう指示しますが、略奪は戦時の倣いと違反する兵士があとを絶たない。苅谷はこれらの兵士たちを軍規に違反したという罪で処刑します。「厳しすぎる」との声が上がりますが、苅谷は自説を曲げません。この後苅谷は明治政府の重要ポストについていきますが、清廉で真っすぐ過ぎる性格は、政府内でも疎まれるようになっていく。
一方の平沼は会津戦争の後、函館まで転戦して戦い続けますが、遂に敗れ、家族とともに陸奥のさいはての地、斗南へと送られます。斗南の極寒のなかでの極貧生活を耐える家族でしたが、廃藩置県により藩そのものがなくなってしまい、藩に全てを捧げていた平沼の父、銑造(加藤嘉)は精神を病み亡くなってしまう。
平沼は社会の底辺にあって、明治という時代を見つめ、やがて自由民権運動から秩父困民党の一揆に参加していく。一方苅谷は政府の内側から社会を良くしようと奔走しますが、なかなか思うように行かず、最後には反政府主義者によって暗殺されてしまいます。
明治という時代を、薩摩と会津両者の視点から描いた画期的なドラマで、大好きでした。
もう一つ、加藤剛さんといえば思い出すのは、昭和56年(1981)にTBSで放送されたスペシャルドラマ、『関ケ原』の石田三成役です。武骨で不器用で真っすぐ過ぎるが故に人望を得られず、敗北していく人物を見事に演じていて、これも大好きなドラマでした。
知的な二枚目で、文武両道に秀で、清廉潔白な人物を演じさせたら右に出る者はありませんでした。時代劇『剣客商売』の秋山大二郎役などは代表的です。一方で映画『砂の器』の、知られざる過去を持つピアニスト、和賀英良役も印象的でした。
近年ではご自身が製作にあたった映画で伊能忠敬、映画『舟を編む』では辞書作りに生涯を賭ける国語学者と、やはり知的で良識的な人物を演じており、そのイメージが崩されることはありませんでした。
なんといいますか、この方の場合、真面目さに嫌味がまったくないんですね。役者などはどこか崩れたところがあった方が魅力的だったりするものですが、この方の場合は違っていた。その真面目さが最大の魅力であり、むしろずっとそのまま真面目であって欲しいと思わせる方で、実際それを貫き通した方だったように思います。
ある意味、とても稀有な俳優であったように思いますね。
また一人、昭和の名優が逝かれました。その真面目で清廉なる魂に、最大限の敬意と感謝と、哀悼を込めて
合掌。
『関ケ原』
そして時代劇の似合う御仁でしたね。時代劇通のお兄様の心中をお察し致します…。
私もおそらく観ていたであろう[獅子の時代]は、会津と薩摩の両方の立場から作られたドラマだったのですね。改めて観たくなりました!
加藤剛さんの御冥福を感謝と哀悼の意を込めてお祈りいたします。
お顔が美しい。うちの母親は加藤剛さんが好きだったそうで、それ聞いて、お母さんが憧れた人ってどんな人なのか、ちょっと調べたことを思い出しました。そうしたら、品のある嫌味のないイケメンでした。
キャストの国広富之さんも若いですね!最近はコーヒー道が頭に浮かんでしまいますが、藤岡弘さんも出演されてたのですね。
キャスティングも良くて、平沼銑次の妹を演じた大竹しのぶさんとか、可愛いですよ(笑)家族揃って初めて牛鍋を食べようとするシーンで、大竹さん演じる妹さんが牛の生きている姿を思い浮かべてしまって、食べられなくなってしまうんです。するとそれが家族全員に伝染して、みんな吐き気をもよおして食べられなくなるという(笑)あれは可笑しかった。
あと岡本信人さんが珍しく嫌な奴の役で出ていて、薩摩の権威主義的な嫌味な官僚で、平沼銑次になにかと意地悪をするんです。これもみどころですかね。
大原麗子さんは綺麗だし、そっちの方面から見ていくのも面白いですよ。
藤岡さんは加藤清正役で、清正は関ケ原合戦に参加していませんので、最初の方にしか登場しません。丹波さんは福島正則役ですがちょっと年齢が合わな過ぎじゃないの?と思いつつ、まっいいか(笑)みたいな。
その他宇喜多秀家に三浦友和。島津義弘に大友柳太郎。そして大谷吉継には高橋幸治。大谷吉継と石田三成の友情も泣かせ所です。
機会があれば是非!
ご遠慮ください。