【脚本】安倍徹郎。【監督】小野田嘉幹。
この作品のハイライトは何と言ってもラストの鬼平さんのセリフです。そういう意味では「時代劇」カテゴリーとともに、「名ゼリフ」カテゴリーにも入れられるべき名作であるといえるでしょう。
主人公は鬼平さんではなく、鬼平の妻、久栄(多岐川裕美)です。
鬼平こと長谷川平蔵(中村吉右衛門)はじめ火付盗賊改一党は、甲州の方へ盗賊捕縛のため出張し、留守を久栄が守っておりました。
そんな久栄の元へ、一通の手紙が届きます。
差出人は近藤唯四郎(鹿内孝)。この男かつて久栄も家の隣に住み、世間知らずの少女だった久栄を口説き落とし散々弄んだ挙句に捨てた男でした。
かつては平蔵と同じ旗本だった近藤でしたが、人を殺めるなどして身を持ち崩し、今では盗賊の用心棒になり果てていました。
近藤の狙いは久栄の過去をネタに、捕らえられていた盗賊砂吉(きくち英一)を釈放させることでしだ。
しかし久栄はこれを毅然と跳ねのけます。近藤としては、昔の世間知らずの小娘だったころの久栄のイメージしかなかったのでしょう。この久栄の態度に戸惑います。
「おんなははじめての男を忘れぬものだが……」などと腑抜けたことをいうような男、それが近藤唯四郎でした。久栄の心底軽蔑したような視線にたじろぐ近藤。
これでは埒が明かぬと、近藤とその一味は久栄の姪と女中を拉致し、久栄を脅しにかかります。
しかしこれに屈するような久栄ではありません。近藤は久栄の家来や息子の手によって捕らえられ、蔵に入れられます。
帰ってきた平蔵が近藤と対面します。
近藤は平蔵に、久栄をおんなにしたのはこの俺だ、と勝ち誇ったように言い放ちます。
男にとって、特に武家の男にとっては、自分の女房に自分より先に男がいたなどというのは屈辱的なはず。自分が鬼平に勝てるのはこの点だ、と思っていたのでしょう。
しかし平蔵さんは平然として言い返します。以下そのセリフをほぼ全文掲載いたしましょう。
平蔵「それがどうした。だからどうだというのだ
そんなことは百も承知だ。承知の上で久栄を娶ったんだよ。
久栄はおもちゃにされ、傷ものにされて捨てられた。だがな、
久栄はおれの女房となって生まれ変わったのだ。
おめえの覚えている久栄は抜け殻同然の女だ。あの時久栄の親父殿がもう嫁にはやらんとあんまりこぼすんでな、よしそんならおれがもらおうと言ったんだ。
よくよく考えてみると、とうの昔から久栄に惚れていたんだな。ははははは。
惚れなきゃあ駄目だ。女にゃあ心底惚れなきゃ、女のほんとうの値打ちはわからねえ。
おれもお前さん同様さんざん道楽はしたが、命がけで惚れたは久栄たった一人だ。
久栄をほんとうの女にしたのはこのおれだ。
それがわかっているのは世の中、おれと久栄のたった二人きりだ」
私は基本、恋愛等の話はいたしません。ただ男女のことについて、なにか云える事があるとすれば、
それは、「リスペクト」があるかどうか、ということではないかな。
この鬼平さんのセリフには、久栄さんに対する強いリスペクトを感じます。久栄さん個人に対してもそうですが、女性全般に対するリスペクトも含まれている感じすらしますね。
基本、女性に対するリスペクトのない男は駄目なんじゃなかろうか。近頃話題の某俳優の裁判。あれなどは女性対するリスペクトのない男の典型なんじゃなかろうか、と思う今日この頃。
ちなみにこのセリフ、原作にはない、ドラマオリジナルのセリフなんです。でもいかにも鬼平さんが云いそうなセリフでしょ?
鬼平さんことをよく理解しているからこそ書けるセリフでしょう。流石です。
だから「鬼平犯科帳」は素晴らしいのだね。
時代劇、いいですね〜!!!
かっこよかったですね、
毅然とした態度の久栄さんも鬼平も。
男殺しで女殺しだ・・・。
やっぱり鬼平は永遠だな・・・。
昨日初めてリトルフォレスト観ました。
・・・すごいや、
やるじゃん、腹黒ゆいちゃん!
この回はもう最高も最高、永久保存版で録画にロックかけました(笑)
平蔵さん、素敵すぎます!久枝さんも美しい〜