私的CD評
オリジナル楽器によるルネサンス、バロックから古典派、ロマン派の作品のCDを紹介。国内外、新旧を問わず、独自の判断による。
 




Mozart: Coronation Mass • Exsultate, jubilate • Vesperae solennes
Archiv 443 353-2
演奏:Barbara Bonney (Sporano), Chatherine Wyn Rogers (Contralto), Jamie MacDougall (Tenor), Stephen Gadd (Bass), Choir of the English Concert, The English Concert, Trevor Pinnock (Direction)

モーツァルトは、1771年に任命されたザルツブルク宮廷楽団の楽士長の地位を1777年に辞し、マンハイムでの新たな職を求めた運動が成果無く終わった後パリへ向かったが、1778年7月3日に母が死亡、結局ザルツブルクに戻り、1779年1月17日に宮廷オルガニストの職に就いた。この年の3月23日に完成したのが「戴冠式ミサ」ハ長調(KV 317)である。この作品は、4月4日の復活祭のミサで初演されており、ザルツブルクの北側の丘の上に建設された教会の聖母戴冠像のために作曲されたという説や、1791年にプラハで行われたレオポルト2世の戴冠式で演奏されたという説も事実ではないようで、その名称は19世紀になってから付けられたものである。ミサ通常文のキュリエ、グローリア、クレド、サンクトゥス、ベネディクトゥス、アニュス・デイの6楽章からなっており、演奏時間はおよそ26分である。
 ソプラノ独唱のモテット「喜び歌え(Exsultate jubilat)」(KV 165 [158a])は、1773年のイタリア旅行中にミラノで作曲され、1月17日に、前年オペラ「ルツィオ・シッラ(Lucio Silla)」( KV 135)を上演した際のカストラート歌手、ヴェナンツィオ・ラウッツィーニ(Venanzio Rauzzini)の歌唱で初演された。この曲には、後に1779年にザルツブルクで異なった歌詞が付けられ、三位一体祭および降誕祭に演奏できるようにした異稿がある。この稿では、元のオーボエのパートをフルートで演奏するように変更されている。全体は4楽章からなり、特に最終楽章の「アレルヤ(Alleluia)」は有名である。古い話になるが、1937年作のアメリカ映画、邦題「オーケストラの少女」の中で、主演のディアナ・ダービンがレオポルド・ストコフスキー指揮で歌う「アレルヤ」によって、日本でも人気曲となった。
 「聖証者の荘厳晩課(Vesperae solennes de Confessore)ハ長調」(KV 339)は1780年に作曲された、モーツァルトのザルツブルク時代最後の宗教曲である。カトリック教会の聖職者の聖務日課の内、日没後に捧げる夕べの祈りを「晩課(Vesperae)」と言い、通常はグレゴリア聖歌が歌われるが、特別な日には、規模の大きな曲が演奏される。聖証者のための挽歌は、聖人を祈りの対象としたもので、歌詞は5つの詩編、「主は言われる(Dixit Dominus)」(詩篇110、ダヴィデの歌より)、「主をほめまつる(Confitebor tibi)」(詩編112)、「幸いなるかな(Veatus vir)」(詩編111)、「誉め称えよ、しもべ達よ(Laudate pueri)」(詩編113)、「主を誉め称えよ(Laudate Dominum)」(詩編117)と聖母賛歌「我が心は主をあがめ(Magnificat)」からなっている。モーツァルトのこの作品も、典礼様式を厳格に守っているが、晩課に演奏する曲としては不釣り合いなほど大規模な編成である。全体は合唱主体で、部分的に独唱で歌われる。6つの楽章の末尾すべてに、「栄唱(Doxologia)」が置かれている。これら6つの楽章は独立性が強く、調性もハ長調、変ホ長調、ト長調、ニ短調、ヘ長調、ハ長調と異なり、個別にも演奏される。この作品は、オペラ的要素が強い。
 今回紹介するのは、トレヴァー・ピノック指揮のイングリッシュ・コンサートによる演奏のアルヒーフ・レーベルのCDである。ピノックやイングリッシュ・コンサートについてはすでに何度も触れた。その合唱団も、オーケストラ同様、ロンドンにいる音楽家達の中から選ばれた人たちによって構成されているのだろう、イングリッシュ・コンサートが合唱を含む作品を演奏するときに編成される。バーバラ・ボニーは、1956年生まれのアメリカのソプラノ歌手で、オペラ歌手として出発して、リートにも活動を拡げ、現在は後進の指導にも当たっている。キャスリーン・ウィン・ロジャースは、1958年イギリス生まれのメッツォ・ソプラノ(コントラルト)歌手で、主にリートやオラトーリオ歌手として活動している。ジャミー・マクドゥーガルは、スコットランド生まれのテノール歌手で、主にバロックや初期古典派のオペラなどをレパートリーとしている。スティーヴン・ガッドは、1964年イギリス生まれのバリトン歌手で、オペラ歌手として広範囲に活躍している。
 このCDに収録されている3つの作品は、1993年9月にロンドンで録音され、1994年に発売された。このCDは現在でもドイツ・グラモフォンで販売されている。

発売元:Deutsche Grammophon Archiv

* 「聖証者の荘厳晩課」については、混声合唱団サンデー・ハーモニーのサイトにある「 http://sunday-harmony.jpn.cx/Vesperae.htm Vesperae solennes de Confessore(聖証者の荘厳晩課  ハ長調) W.A.Mozart  K.339  (1780)」の解説を参考にした。

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