私的CD評
オリジナル楽器によるルネサンス、バロックから古典派、ロマン派の作品のCDを紹介。国内外、新旧を問わず、独自の判断による。
 



Giorgio Mainerio: Il primo libro de balli
TACTUS TC 531301
演奏:Ensemble Consort Veneto

ジオルジオ・マイネリオ(Giorgio Mainerio, 1530/1540 - 1582)はパルマに生まれ、1560年から10年間はウディーネ、さらにその後はアクィレイアに移り、1578年にはアクィレイア聖堂の楽長に任命され、1582年に死亡するまでこの地に留まった。聖職者の資格も持っていたが、音楽で身を立てることを望んだようである。マイネリオは宗教曲を多く作曲したようだが、その名前が今日まで残っているのは、1578年に出版した「舞曲集第1巻(Il primo libro de' balli...)」による。前に紹介したプレトリウスやスサートと同様、この曲集の中の作品は自ら作曲したものではなく、当時広く知られていた曲を集めたものである。この曲集の特徴は、広くヨーロッパ各地の曲を集めていることで、その題名には、フランス、イギリス、ハンガリーあるいはミラノ、パルマなどの地名を見ることが出来る。この曲集は、かなり好評を博したようで、5年後には様々な形で、ほとんどは編者のマイネリオの名前なしに転載されたり、編曲されたりして広まった。そのため、これらの曲は、長らくマイネリオとは結びつけられていなかった。
 この曲集の中で最も興味深いそして謎に満ちた作品は、”Schiarazzola Marazzola”と題された歌謡=舞曲であろう。この奇妙な名前の曲については、1624年6月10日付のアクィレイアの宗教裁判の記録に、ある迷信を信ずる女性達が、精霊降臨祭の日の真夜中に、教会に背き、雨乞いのため”Schiarazzola Marazzola”で始まる歌を歌いながら家の内と外を磨いた、という記述があることが最近発見され、この曲の由来が分かったそうだ。この曲は、ルネサンス舞曲CDには必ずと言っていいほど収録されている。
 このCDで演奏をしているのは、Consort Venetoというイタリアのグループで、中世から初期バロックの作品、特にヴェネチア周辺に由来する作品の演奏を中心に活動している。指揮者のGiovanni Toffanoはヴェネチアやパドヴァの音楽学校で学んだリコーダー奏者である。この演奏にはトッファーノを含め11人奏者が参加していて、リコーダー、ボムバルド(オーボエに近い2枚リードの楽器)、ドゥルシアン、コルネット、トロンボーン、 ギロンダ( ヴィエル・ア・ルー)それに打楽器、チェンバロ、レガールを演奏している。
先に触れた”Schiarazzola Marazzola”の演奏は独特で、その秘儀的性格を表現するためか、極めてゆっくりとしたテンポで静かに始まっている。演奏時間は4分18秒と異例に長い。この曲をはじめ、他のルネサンス舞曲のCDでよく演奏される作品を含むが、マイネリオの曲だけを集めたCDは、おそらくこれだけだろう。

発売元:Tactus Records

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