能楽の心と癒やしプロジェクト
第22次被災地支援活動
(2014年05月18日~19日)
第22次被災地支援活動
(2014年05月18日~19日)
〔活動報告書〕
【趣旨と活動の概要】
東日本大震災被災地支援を目指す在京能楽師有志「能楽の心と癒やしプロジェクト」では、能楽の持つ邪気退散、寿福招来の精神を被災地に伝えるべく、2011年6月よりすでに21度に渡り岩手県釜石市、陸前高田市、宮城県石巻市、気仙沼市、南三陸町、女川町、東松島市、仙台市、大崎市、登米市および福島県双葉町の住民が避難していた旧埼玉県立騎西高校避難所にて能楽を上演することによって被災者を支援する活動を行って参りましたが、このたびプロジェクトメンバーのうち能楽チームの八田、寺井は、去る05月18日~19日の2日間に渡り宮城県・気仙沼市および登米市にて能楽ワークショップを行いました(※注2)。
今回の活動は2つの有料ワークショップというところが、これまでのプロジェクトの活動とは一線を画すものです。それというのも震災から3年を経てプロジェクトの活動資金の原資としての募金がほとんど頂けなくなり、活動について現実的な困難に直面したことによります。我々プロジェクトのような活動を続ける団体の中ではかなり長い期間、心ある方々から募金を頂戴し続けてきたのもまた事実で、プロジェクトの活動にご賛同ご協力頂きました方々には改めまして御礼申しあげます。
しかしながら現実には4月からの消費増税、高速道路の通行料金の割引制度の撤廃および縮小が活動にかかる基本的な支出を圧迫している事情もあります。また一方プロジェクトでは仮設住宅や仮設商店街への慰問活動のほかに、「文化の復興」の目標を持って、音楽家等とのコラボレーションによる「星と能楽の夕べ」「能とピアノの夕べ」などのイベントを展開して参りました。これらの共演者の交通費等につきましても、同じボランティアだからといって全額の負担を求めるばかりでは活動の将来性の展望は開けず、その一部をプロジェクトから支出しており、これまた活動費を圧迫する原因となっております。
団体として活動を継続するため、また被災地の復興の現状から考えて、活動を有料にすべき というご意見は、1年くらい以前からでしょうか、他ボランティア団体からも何度か助言を頂いておりますが、プロジェクトとしてはあの震災のあまりにも深刻な被害を見て、被災地に寄り添いたい、という気持ちの原点を考えるとなかなか踏み出せないでおりました。
そこで、実際の活動の継続が困難になる現実を見据えて、プロジェクトの活動を大きく2種類に考え、一部の公演を有料化することに致しました。すなわち「文化の復興」のための「公演」を広く被災地の市民を対象に行い、ワンコインか千円程度の入場料を頂戴すること。仮設住宅の慰問や仮設商店街の振興のお手伝いとしての活動はこれまでどおり無償奉仕とし、「公演」で得た資金をもとに活動を継続する、ということです。前述の他ボランティア団体からは「仮設住宅での活動であっても有料で良いのではないか」とご意見を頂いてはおりますが、プロジェクトとしては当面、それは無償での活動として続けてゆきたいと考えております。「公演」については有料である以上、ある程度以上の内容の質を確保すること、宣伝に力を入れなければならないこと、などこれから考えていかなければならない点は多いと思いますが、とりあえず方針を上記のように定めることに致しました。
今回の活動は実質的なその最初のもので、2つのワークショップはいずれも「公演」です。それであればプロジェクトの「支援活動」には当たらないのではないか、とも考えましたが、「文化の復興」も復興を目指すのは支援活動の一環でありますし、また実際のところ、どちらの公演にも仮設住宅にお住まいの住民さんが参加してくださいましたことを考え、「支援活動」と考えることに致しました。
会場となった気仙沼の煙雲館は現ご当主の鮎貝文子さまのご厚意を頂き、茶道裏千家気仙沼支部会さまの会員さまが多数参加くださり、また気仙沼市民でプロジェクトの協力者である村上緑さんの活躍により事前の宣伝活動が周知された結果、一般のお客さまも多くご参集くださいました。また今回はじめて活動させて頂く登米市の柳津虚空蔵尊さまは、石巻の湊小学校避難所時代に活動をご一緒させて頂いた古川の神戸さんのご紹介でした。副住職さまの奥様である杉田史さんは「お寺カフェ」「お寺マルシェ」を開催したり、また独自に被災地の支援活動を行っておられる活発な方で、こちらもご厚意により宣伝の労に努力頂いたほか、宿泊・食事までおもてなし頂きました。まことにありがたく、改めまして御礼申しあげます。
2度の公演により、おかげさまをもちまして活動資金を頂戴することができ、プロジェクトの今年の活動の継続についても見通しが立てられる状態になりました。これらは決算報告書で明細を明らかに致しますが、関係各位のご協力によって達成できたもので、重ね重ね御礼申しあげます。
【出演者】
八田達弥、寺井宏明(能楽の心と癒やしプロジェクト)
【協力者】(敬称略)
村上緑/鮎貝文子(煙雲館)/茶道裏千家気仙沼支部会/佐々木優子/柳津虚空蔵尊/杉田史/浅野ゆか
【主催】
能楽の心と癒やしプロジェクト
【活動記録】(敬称略)
5月17日(土)
八田のみ昼に東京出発、今回 煙雲館で上演する能『松風』の後見を勤める村上緑さんの稽古を仙台で行う。ご友人の浅野ゆかさんが稽古の会場として自宅を提供くださり、また食事・宿泊もお世話になりました。
5月18日(日)
寺井が夜行バスで仙台に到着、3人で気仙沼に向かう。途中南三陸町の田束山の つつじを見、「しろうおまつり」で賑わう歌津復幸商店街にご挨拶、今後の活動の相談をする。
◎「能楽の心と癒やしをあなたに」
14:30~ 能『松風』 出演(八田・寺井、後見=村上緑、佐々木優子)
煙雲館ご当主・鮎貝文子さまのご挨拶、寺井による解説に続き能『松風』の上演。終了後に能楽ワークショップを行う。茶道裏千家気仙沼支部会さまのご厚意により大勢の会員さまがお見えになり盛況だったほか、終了後には会食もご用意頂き、大変ありがたいことでした。後見の大役を果たされた村上緑さんはじめ関係各位に御礼申しあげます。
終演後、緑さんを気仙沼市内にお送りして、南三陸町のホテル観洋にて入浴、それより登米市の柳津虚空蔵さまに到着。杉田史さんに食事と宿泊のご用意を頂き、翌日のワークショップのことや今後の計画などを話し合う。
5月19日(月)
◎「能楽の心と癒やしをあなたに」
14:00~ 能『羽衣』 出演(八田・寺井)
副住職さまの奥様である杉田史さんが宣伝に尽力くださり、40名ほどのお客さまがお見えになった。
史さんのご挨拶、寺井の解説、能『羽衣』の上演、能楽ワークショップという構成は前日と同じ。
仮設住宅の住民さんもお見えになる。
これにて今回の活動は終了、深夜にならずに東京に到着しました。
【収入・支出】
震災から3年が経ち、ほとんど募金が集まらなくなり、プロジェクトの活動資金は大変厳しい状況に陥りました。これにより「文化の復興」活動の一部を有料化することとし、今回は試みとしての上演となりました。結果的には大成功で、本年の活動全体について見通しが立つ状態にまで資金状況が改善されました。詳しくは決算報告書を参照ください。
プロジェクトの活動資金としては、前回活動の繰越金が82,101円あるほか、前回活動でご一緒した寺井の笛の生徒さんから募金を頂戴し、これによって繰越金を含めた活動開始時点での資金の総額は87,101円となります。また今回の活動中に茶道裏千家気仙沼支部会さまより40,000円、煙雲館にお出ましになった一般のお客さまからの入場料15,000円、気仙沼北野神社の菅原宮司さまより募金5,000円、柳津虚空蔵さまでのワークショップの入場料37,500円を頂戴し、収入の合計は184,601円にのぼりました。
一方支出は、増税によるガソリン価格の高騰も現在までのところ影響は見られず、また東北までの往路は東京~仙台間と短かったのに加え、土曜であったため高速道路利用料は休日割引の対象となりました。さらに宿泊は柳津虚空蔵さまのご厚意によってご用意頂きました。またチラシ印刷費も寺井が安価な業者を開拓してくれ、これらの要因によって支出はかなり切りつめられ、ガソリン代、高速道路利用料、チラシ印刷費の総額で32,900円に抑えることができました。次回活動の繰り越し金は差し引き151,701円となります。
プロジェクトの訪問公演の支出につきましては節約を旨としております。交通費節約のため、できるだけ深夜割引の制度を利用して終夜運転をして早朝に現地に到着するなど工夫はしておりますが、体力や公演スケジュールによって、必ずしも深夜走行ができない場合もあります。宿泊につきましては、従来は住民ボランティアさま等のご厚意により無料、または安価での宿泊ができましたが、街が落ち着きを取り戻しつつある昨今では旅館などに宿泊する機会も増えてきました。この場合にも宿泊費はおおよそ5,000円まで、素泊まりを旨としており、食費については酒食の区別がつきにくいため、すべて自己負担としております。
【成果と感想・今後の展望】
今回は歴史建築と寺院での2回のワークショップのみの活動となりました。まずはプロジェクトの活動資金を捻出するために始めた計画ではありましたが、結果としてお客さまにもお喜び頂くことができ、またプロジェクトの活動資金も良好な状態に改善されました。今後も有料公演は随時開催してゆく予定ですが、無償奉仕の仮設住宅への慰問、仮設商店街の振興のお手伝いなどの活動も継続して行ってゆく予定です。また今回も気仙沼市民の村上緑さんの活躍はめざましく、煙雲館との交渉、宣伝チラシの配布などに尽力頂きました。改めまして御礼申しあげます。
震災3年目を迎え、仮設住宅や仮設商店街もいずれは解消されて、いずれは次の段階へと進んでいくことになりますが、我々の活動もその時々の状況に応じて形を変えていく事になります。息長い支援のために皆さまの変わらぬご支援をお願い申し上げる次第です。
平成26年6月20日
「能楽の心と癒やしプロジェクト」
代表 八田 達弥
(住所)
(電話)
E-mail: QYJ13065@nifty.com