城郭都市の設計史33

2016年03月31日 | 湖と城郭都市

【事例研究:道づくり Ⅱ】

前回は、上代から近世に亘る道路について、彦根-多賀、
彦根-永源寺の二つの参道について俯瞰したが、今回
上代から現在までの道路整備の歴史を俯瞰し未来の都

と道路のありようを素描してみる。尚、この考察に当

っては脚注の4冊の本――五十嵐敬喜・小川明雄 共著

『道路をどうするのか』、武部健一著『日本の道路史』、
鈴木敏著『道のユニバーサルデザイン』、 窪田陽一著
『道路が一番わかる』――を参考にする。

例えば、古代エジプト人はギザの大ピラミッドの建設資
材運搬
に巨大石重量に耐える石畳の道を整備。中国では
一部石畳で整備した全長を4万キロメートルの大規模な
街道を、
インカ人が伝令たちが使う街道をアンデス山脈
に張り巡らせ
マヤ人もメキシコで石畳の道路網を整備。
道路整備は統治や徴税、軍事のため「すべての道は、

ーマに通ず」と言われ道路は領土の拡大と繁栄に貢献し
た。そのアッピア街道など
の維持補修費は道路を伸ばす
ほど膨れあがり、帝国滅亡の要因――総労働に占める割
合が逓増しといわれ(上図参照)、
絹貿易の陸路シルク
ロード沿いには隊商を迎える中継都市が
栄え、ハンザ同
盟などによる都市間交易が盛んとなる。

ところで、アッピア街道時代の情報伝達速度は、現在の
ように、一秒間で地球を数周できる時代と大きくことな
り一日10キロメートルで時代が下って鎌倉時代でも一
日百キロメートル強と情報伝達速度の側面からも重要で
あった。

このように、歴史的変遷事例を「東海道ルート」で俯瞰
すると下表のようにまとめられているので参考に掲載す
る。

 

● 3つの環境と道路整備

伝代の道路整備は、従来の統治と経済的側面に加え環境
配慮――自然環境・歴史環境・社会環境の――が必須と
なっている。
例えば、日本道路公団元常任参与で道路技
者の武部健一に影響を与え、名神高速道路の技術指導し
た西ドイツのアウトバーンの設計専門家クサヘル・ドル
シュは次のような言葉を残こしている。


 世界に道路の数は多いが、名神高速道路ほど周囲に
 すばらしい景観を持つ道路は他にない。したがって
 このように風致にすぐれた地帯を通る区間では、で
 きるだけ風景との調
和を図らねばならない。風景の
 美しさと高速道路の近代的で優雅な線形の融合、い
 いか
えれば、自然と人工的に築造された高速道路と
 の完全な調和が実現した場合、高速道路
 は非常に
 価値のあるものになる。

          
『クサヘル・ドルシュ報告書』




その具体的事例として湖東三山の一つ西明寺の参道の景
観を損なわれないように道路を地下に参道を高架交差さ
せるように施工しているが(上写真)、これは景観(歴
史)的環境配慮、騒音対策のアクリル製遮音壁は、景観
と社会的環境配慮の事例であり、災害・排気ガス・渋滞・
交通事故など社会的環境配慮――対策としては、リダン
ダシー(redundancy)つまり、余裕・重複・冗長の意味
をもたせるた、拡幅・バイパス(避難)道路や信号機を
除去したラウンドアバウトなど、また、排気ガス対策と
しての除去(電気自動車の普及)が該当――など挙げら
れるだろう。

● 道路とは何か

ところで道路の定義に関して、『日本の道路史』で武部
は「道路とは、交通のためにそれに耐えうる基盤を持ち、
その上に一定の空間えお連続的に備えた帯状の施設」と
規定(コード化)すが、インフラ(電気・上下水道・通
信・ガス・鉄道などの公共施設に密接に絡み付加価値が
年々高まっている。あるいは、電線の地下埋設化やバリ
ヤーフリー化、融雪・凍結防止、あるいは、太陽光輻射
防止、透水舗装化などの高付加・高機能化が進んでいく
ものと考えられる。左様に未来の道路は発電し給電し、
音声を発したりするいわゆるロボット化していくのでは
とも思える。そこで、『道路が一番わかる』では次のよ
うに新しい道路を素描する。

● 新しい道路イメージ

  1. 道路景観
  2. 自然環境との調和
  3. 人と車との共存
  4. 道路のユニバースデザイン 
  5. 公共交通機関との共存
  6. 情報化と道路交通
  7. 道路の災害対策
  8. 道路と公共施設の高機能的融合

さらに『道のユニバーサルデザイン』ではパブリック・
コード(準拠すべき公共規定・倫理規定)の原則を次の
ように提示している。

● ユニバーサルデザインの7原則

  1. 誰でも公平に利用されること
  2. 使う上で柔軟性に富むこと
  3. 簡単で直感的に理解できること
  4. 必要な情報が簡単に理解できること
  5. 単純なミスが危険なことにつながらないこと
  6. 身体的な負担が少ないこと
  7. 接近して使える寸法や空間になっていること  

● 財政的一考察

『道路をどうするか』に掲載された表4-2(下表)に
よると可住む面積当たりでの比較数値が示されているが
分析がなされず、次節の「借金の残高」に移る。地形が
複雑で道路などの工事もそれに伴い複雑化するだろうと
予測され、つまり、工事の質が高くなるはずだかこれだ
けでは不詳である。また、日本のおよそ半分の人口で国
土は同しぐらいのドイツが記載されていないが、道路総
延長距離数では、2010年度調査で日本が121万キ
ロ、ドイツが半分の64.5万キロと約半分で人口比と
ほぼ同じである。つまり、このような比較は意味がない
ように思えるし、例え可住面積当たりで飛び抜けていて
も、車の保有台数当たりの比較かの数値や、道路利用率
(定義が難しい)とかの多角的分析が必要だろうし、根
本的には、必要とされる道路(どの程度?これも定義が
難しい)であれば、有効需要と見なし財政処理を行えば
よいわけで、保全費用がか嵩むというのであれば、総労
働力(=生産力)の配分バランスを考え新規・改修延長
距離の増長を制御すればよいと考える。

  

                             この項つづく

【エピソード】 
 
   
       

観光客の視点から彦根のみた場合、物足りないものは、
日本一のパワースポットである琵琶湖を散策しながら見
ることができないところ。それじゃと思い立つのが「
通り街構想」。夢京橋から一直線で湖岸に出て、湖岸道
路の手前で地下道を通って人工渚に出て渚でちょっした
クルージングやオープンテラスで休息できるような施設
を設けるいうもの。

 

【脚注及びリンク】
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  1. 「地域資源・交通拠点等のネットワーク化による
    国際観光振興方策に関する研究」国土技術政策総
    合研究所 プロジェクト研究報告 2008.05.21
  2. 「歴史まちづくりのてびき(案)」ISSN 1346-73
    28 2013.11.13
  3. 歴史まちづくりの特性の見方・読み方 国土技術
    政策総合研究所 2013.04.11
  4. 「まちづくりはひとづくり」をめざし 市民主導
    のまち創る-近世城下町 彦根市本町地区の2例の
    場合-(これからの都市づくりと都市計画制度 全
    国市長会) 中島一 2005.05.09
  5. 「城と湖のまち彦根」中島一 サンライズ印刷出版
  6. 「続・城と湖のまち彦根」中島一 サンライズ印刷
    出版部 
  7. 中島一・水野金一・田中治是『建築空間における
    都市計画額』コロナ社
  8. 中島一元彦根市長 Wikipedia
  9. 内藤昌編著『城の日本史』角川書店
  10. ドイツ:ニュルティンゲン市「市民による自治体
    コンテスト1位のまち(1)」 池田憲昭
     内閣
    府経済社会総合研究所
  11. The Neckar river near Heidelberg  Wipipedia
  12. ラウフェン・アム・ネッカー Wipipedia
  13. ボーデン湖 Wikopedia
  14. コモ湖 Wikipedia
  15. ネッカー川 Wikipedia
  16. 『ヘルダーリン詩集』 川村次郎 訳 岩波文庫
  17. 『ヘルダーリン』小磯 仁 著 清水書院
  18. 三島由紀夫 著『絹と明察』
  19. 三島由紀夫の十代の詩を読み解く21:詩論とし
    ての『絹と明察』(4):ヘルダーリンの『帰郷
    』詩文楽
  20. 三島由紀夫の十代の詩を読み解く18:詩論とし
    ての『絹と明察』(1)~(7)詩文楽-Shibun-
    raku
  21. フリードリヒ・ヘルダーリン  Wikipedia 
  22. フリードリッヒ・ヘルダーリン - 松岡正剛の千
    夜千冊
  23. ヘルダーリンにおける詩と哲学あるいは詩作と思
    索頌歌『わびごと』を手がかりに 高橋輝暁 2010.
    09.06
  24. 『ヘルダーリンの詩作の解明』、ハイデッガー著
    イーリス・ブフハイム,濱田恂子訳
  25. 南ドイツの観光|ドイツ観光ガイド|阪急交通社
  26. バーデンヴェルテンベルク州&バイエルン州観光
    局公式日本語
  27. リンダウ - Wikipedia
  28. ハイデルベルグ Wikipedia
  29. ハイデルベルク城 - Wikipedia
  30. 城郭都市 Wikipedia
  31. List of cities with defensive walls Wikipedia
  32. ヨーロッパ100名城 Wikipedia 
  33. 中国の城郭都市 : 殷周から明清まで 愛宕元著
  34. 中国城郭都市社会史研究 川勝守 著 汲古書院
  35. 万里の長城 世界史の窓  
  36. 中国厦門の城郭都市研究における外邦図の利用
    山近久美子(防衛大学校)2005.08.25
  37. ヨーロッパ100名城 Wikipedia
  38. 近江佐和山城・彦根城 城郭談話会編 サンライズ
    出版
  39. 淡海文庫 44 「近江が生んだ知将 石田三成」太
    田浩司 サンライズ出版
  40. 佐和山城 [5/5] 大手口跡は荒れ放題。現存する移
    築大手門は必見 | 城めぐりチャンネル
  41. 中井均 『近江佐和山城・彦根城』サンライズ出
    版2007
  42. 彦根御山絵図 彦根三根往古絵図など古絵図デジタ
    ル・アーカイブ化に、彦根市立図書館  2012.05.
    27 
  43. 彦根市指定文化財 「山崎山城跡
  44. 都市計画の世界史、日端康雄 講談社現代新書
  45. ドイツ流 街づくり読本  水島信
  46. 続・ドイツ流 街づくり読本 水島信
  47. 完・ドイツ流 街づくり読本 水島信
  48. 都市計画-1 日本の都市計画制度の概要 大谷英一   
  49. 都市計画-2 都市の歴史と都市計画 大谷英一
  50. 都市計画の理論 系譜と課題 高見沢実編集
  51. 「協働的プランニング」の都市計画理論 Patsy He-
    aley ,“Collaborative Planning”2010.02.13
        
  52. 第4回 リスク社会論 ベック・ギデンズ・ルーマ
    ンの「リスク」論(現代都市文化論演習 2009)筑
    和 正格 2010.05.25
     
  53. ビフォア・セオリ 現代思想の<争点> モダンと
    ポストモダン 慶應義塾大学出版会|人文書
     
  54. 道路をどうするのか 五十嵐敬喜・小川明雄 岩波
    新書
  55. 日本の道路史 武部健一 中公新書
  56. 道のユニバーサルデザイン 鈴木敏 技報堂
  57. 道路が一番わかる 窪田陽一 技術評論社
  58. 「道路」についての国際比較 藤井聡 2010.3.14
  59. 彦根市都市計画道路網見直し指針 
  60. 地域別のまちづくり方針(地域別構想)-彦根市 

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