1.ハワードの田園都市構想
2.田園都市論の現代的意義
3.日本型田園都市構想
4.和歌山市都市計画と学園城郭都市
5.近代ニュータウンの系譜
-理想都市像の変遷-
6.世界遺産登録に向けた取り組み
7.街道と湖上交通と都市形成
伊吹山の天気(百名山)
8.観光の現況と近未来
前章では、琵琶湖上交通が衰退期にあり、観光あるいはツ
ーリズの資源として、もう一度捉え直し、或いは解体した
上、再構築(ルネサンス)の手立てを試みる。
8-1 観光あるいはツーリズムの経済的意義
ツーリズムが、イギリスの産業革命の進展を歴史的背景と
する社会現象を描写する言葉として確立され、その経済的
インパクトが歴史的経過とともに巨大なものとなっていき、
一国の経済を左右するほどの規模となってきた。
さらには、21世紀の世界経済の基幹産業の一つとなり、多
くの発展途上国の経済的発展にとって欠かすことのできな
い産業としての地位を、固めつつあることは衆目の一致す
るところである。
また、エコツーリズムは、地域資源の健全な存続による地
域経済への波及効果が実現することをねらいとする、資源
の保護+観光業の成立+地域振興の融合をめざす観光の考え
方である。それにより、旅行者に魅力的な地域資源とのふ
れあいの機会が永続的に提供され、地域の暮らしが安定し、
資源が守られていくことを目的としていることを踏まえ、
湖上交通をコアとして滋賀の観光立国としての可能性を素
描する。
2011年から15年にかけ、日本を訪れた外国人(訪日外客)
数は年間33%成長。これは世界でも最速の成長率である。
その背景分析はさておき、日本政府は、インバウンド観光
が日本経済を成長させる強力な原動力になり得ると考え、
年間の訪日外客を15年の1,970万人から20年には4,000
万人にまで倍増させ、訪日外客が日本国内で消費する額を
3兆5千億円から8兆円に急増させる大きな目標を立てい
る。
これに対し、マッキンゼーは、最新レポート「日本の観光
の未来: 2020年への持続可能な成長に向けて」※1で、以
下のような目標達成に向けた課題と、取り組むべき方策を
提言している。
● インバウンド観光成長のための3大課題
(1)アジア以外からの訪日外客が少ないこと(訪日旅行
者の国籍の偏り)
(2)東京・京都・大阪の3大都市に旅行者が集中しすぎ
ていること(訪日旅行者が行く、日本国内の地域の偏
り)
(3)主要都市の観光関連インフラのキャパシティ不足
アジア人の観光客の偏重、三極集中、インフラ不備の3つ
の課題に対し、政府はつぎの4点の是正を行っている。
- 米エアビーアンドビー(Airbnb)などの個人住居の
バケーションレンタルや民泊の規制緩和 - 羽田・成田空港の航空機の発着キャパシティ不足の
解消 - 主要地域以外の高級ホテルの建設
- 地方空港は、着陸料の一部を免除して格安航空会社
(LCC)の新たな路線開設
前出のマッキンゼー社の分析では、①西欧の旅行者が少な
いのは、単に日本でどんな観光ができるのかを知らない。
②したがって、取りこぼしをなくすことした上で、③根源
的課題に取り組むにあたり共通して必要となるのは、様々
な局面での官民の連携行動――官民パートナーシップの重
要性を指摘している(下図)。
● インバウンド観光を推進する5つの施策
- 日本の観光地マネジメントモデル(日本版DMO: De-
stination Management Organization)の強化 - 旅行者の入国から出国までの旅行体験をサポートす
るプラットフォームを構築 - 宿泊施設や観光地のインバウンド観光への対応能力向
上の支援 - マーケティングおよびプロモーションに外国人旅行者の
視点の取り入れ - 旅行者を「アンバサダー」(ambassador)にするための、オ
ンラインプロモーションの強化
※ 二神真美 「持続的な観光地マネジメントの国際動向と課題」
Mar. 09.2017
以上の提言を行い、日本は、官民パートナーシップを通じて様
々な関係者の力を結集させることで、インバウンド観光の成長
を妨げる表面的な問題だけでなく、根源的課題に取り組み、旅
行者の様々なセグメントに日本の魅力を伝えることができる。
入念に調整された戦略的な行動を取ることが、日本のインバウ
ンド観光のポテンシャルを開花させるために必要であると結ん
でいるが、問題はこの「根源的課題」が何であるかである。
この項つづく
● 大久保のセツブンソウ
長浜・米原・奥びわ湖を楽しむ観光情報
【脚注及びリンク】
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- 日本を観光立国にするための3つの課題:日経ビジ
ネスオンライン 2016.11.17 - 世界観光機関アジア太平洋センター
- ツーリズムと観光の定義 佐竹真一 2010.03.23
- 企画展示「湖の船」開催記録 びわ湖最後の船大工・
松井三四郎大いに語る 琵琶湖博物館研究調査報告
19号 2012.03.21 - 古代の都支えた湖畔の製鉄炉 古きを歩けば(49)
源内峠遺跡 2013.03.12 NIKKE STYLE - 鉄鉱石の採掘地と製鉄遺跡の関係についての試論―
滋賀県の事例を中心に―」(大道和人 滋賀県文化財
保護協会紀要 No.9 2012.06.08 - 淡海文庫 「信長 船づくりの誤算―湖上交通史の再
検討」用田 政晴【著】1997.07.20 - 世界遺産の保全と住民生活-「白川郷」を事例とし
て-」才津祐美子、福岡工業大学、環境社会学研究
(12)、 23-40、2006-10-31) - NPO法人 彦根景観フォーラム 第4回世界遺産を目
指す彦根の課題 2008.02.29 - 世界遺産所在自治体の保全と観光活用に関する取組
事例集 国交省観光庁 2014.10.24 - 世界遺産登録による経済波及効果の分析 えひめ地
域政策研究センタ 2007.01.11 - 世界遺産登録と持続可能な観光地づくりに関する一
考察『地域政策研究』(高崎経済大学地域政策学会)
新井直樹 第11巻,第2号,2008年9月 - 世界遺産を活用した観光振興のあり方に関する研究
運輸政策研究所 第35回 研究報告会 小室充弘
2015.08.05 - 世界遺産登録に向けた取り組み(2014年度)彦根市
- 世界遺産に登録されるまで|世界遺産検定 NPO法
人 世界遺産アカデミー - 高句麗平壌城の都市形態と設計 閔徳植、 国際日本
文化研究センター学術リポジトリ - 松本市の都市計画 松本市
- ひこにゃんがいてもダメ? 彦根城はなぜ世界遺産
になれないのか 週刊朝日 2013年6月28日号 - 利用者が“便利”だと思えるパーク&ライド ECO
JAPAN インタビュー前編 2007.03.02 - 利用者が“便利”だと思えるパーク&ライド ECO
JAPAN インタビュー後編 2007.03.09 - 第1回 ポストケインズ派経済学とは何か 佐々木
啓明 2011.10.05 - 第2回 ポストケインズ派経済学とは何か 佐々木
啓明 2011.10.07 - 第3回 ポストケインズ派経済学とは何か 佐々木
啓明 2011.10.19 - 第4回 ポストケインズ派経済学とは何か 佐々木
啓明 2011.10.26 - 第8次彦根市交通安全計画 2012,03.22
- Core Strategy (2013) - Milton Keynes Council
- "The New Towns: There Problems and the Future”
Department for Communities and Local Government,
2002.11.21 - 日本エシカル推進協議会(Japan Ethical Initiative) -
エシカル日本 - 明治期廃絶城郭の公園化について ―史跡の保存活
用の前史として― 佐々木孝文 2015.06.26 - 都市とは何か 都市計画なぜ必要か - 東北大学
奥村誠 2015.10.15 - 和歌山市都市計画マスタープラン 和歌山市
2017.01.12 - 和歌山市立地適正化計画 2016.12.22
- 日本型田園都市構想―イギリス田園都市と比較し
京田辺市を見直す―2001.12.11 西村利也 - 田園都市とエソテリシズム 吉村正和 2004.03.05
- 田園都市論の現代的意義 中井検裕 家とまちなみ
45、2003.7.8 - 住宅地計画論 1.ハワードの田園都市構想園都市
- 都市思想の二人の巨人、ジェイコブズとハワード:
宮﨑洋司市 - 近代ニュータウンの系譜―理想都市像の変遷-、
佐藤健正、2016.06 28 - 近代ニュータウンの系譜―理想都市像の変遷-、
佐藤健正、2016.07 26 - 近代ニュータウンの系譜―理想都市像の変遷-、
佐藤健正、2016.07 26 - 近代ニュータウンの系譜―理想都市像の変遷-、
佐藤健正、2016.07 03 - 平成 28年度 主要事業 彦根市
- 都市づくりの基本方針(全体構想) 彦根市 橋梁長寿命
化修繕計画による対策橋梁について滋賀県 - 彦根市都市計画道路網見直し検討調査
- 「まちづくりはひとづくり」をめざし 市民主導の
まち創る-近世城下町彦根市本町地区の2例の場合
-(これからの都市づくりと都市計画制度全国市長
会) 中島一 2005.05.09 - 中国城郭都市社会史研究 川勝守 著 汲古書院
- 都市計画の世界史、日端康雄 講談社現代新書
- ドイツ流 街づくり読本 水島信
- 続・ドイツ流 街づくり読本 水島信
- 完・ドイツ流 街づくり読本 水島信
- 都市計画1 日本の都市計画制度の概要 大谷英一
- 都市計画2 都市の歴史と都市計画 大谷英一
- 都市計画の理論 系譜と課題 高見沢実編集
- 「道路をどうするのか 五十嵐敬喜・小川明雄 岩波
新書 - 日本の道路史 武部健一 中公新書
- 道のユニバーサルデザイン 鈴木敏 技報堂
- 道路が一番わかる 窪田陽一 技術評論社
- 「道路」についての国際比較 藤井聡 2010.3.14
- 彦根市都市計画道路網見直し指針
- 地域別のまちづくり方針(地域別構想)-彦根市
- 彦根市立図書館|簡易検索
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