城郭都市設計史Ⅷ

2015年12月24日 | 湖と城郭都市

 

 

 【佐和山城郭都市考 4】 

● 都市構造の成り立ち

日本の各都道府県の中心的な都市は、そのほとんどが近世
(およそ安土桃山時代~江戸時代位)に城下町として発展し
た都市である、明治維新以降、城郭や寺社地は破壊等され
現存していない場合も多いものの、その当時に整備され
都市基盤を継承している。

城下町以外を起源とする歴史的な都市は、例えば門前町を
起源とする(善光寺や伊勢神宮、港町を起源とする新潟
や函館市等かある。特に城下町は、領主の拠点である城
郭を中心に家臣の居宅領域である武家地、寺社地、町人地
等といった、武士と町人の領域が複合的に立地することで都
市として発展し、城下町の中にいくつもの特徴的な町が形成
された。街道と接する領域は宿場町へ、舟運等により物資集
積の拠点となった地区は港町へ、製造や生産を主とした領域
は在郷町へと発達したことで、現在では城下町としての歴史
性よりも、個別に発展した領域での歴史性が色濃く表れてい
る都市も多いと考えられる。ほとんどのまちは、こうした歴史
的な都市の構造を背景に有しており、歴史まちづくりの資質
を備えている。

まここでは、ちの歴史的な成り立ちや都市の構造等の観
点から、(1)城郭を核として武家地・
町人地・寺社地
を配した城下町、(2)江戸時代に入り、消費社会の成
熟とともに農産物の生産地
や鉱業・工業の製造に特化し
て集住し発展した在郷町、(3)巡礼の旅から物見遊山
の旅行や行楽
への人々の変化とともに寺社の門前に発達
した門前町(鳥居前町)、(4)三都(江戸、大坂、京
都)
の往来を支えた五街道沿道とともに発展した宿場町
(5)三都と地方との生産品等の物資集積や
流通の隆盛
により発展した港町(川湊町を含む)(6)戦国時代よ
り寺院の境内と町から形づくら
れた寺内町の6つに区分
する。

なお、寺内町と門前町は、両方とも神社仏閣などの宗教
施設を中心とした歴史的な都市であり、広蓋の門前町に
寺院・神社の信徒が近隣に集落を形成した寺内町等も含
まれる場合があるが、都市成立の背景や歴史的経緯が異
なる。

また、歴史まちづくりを推進するためには、成立した当
時の昌昭の構造やその歴史的な背景をもとに、地域に残
る文化財や歴史的な建造物等の資源を、地域固有の歴史
文脈・ストーリーとして関連づけて、保全・活用する必要
のある資源を検討し、これらを保全活用するために必要
な敗り組みを念頭に置きつつ計画及び個別事業の実施を
行うことが重要であり、歴史まちづくりに活用できる構
成要素について、地域の歴史性を踏まえた都市の属性
に、対象とするスケールや範囲、歴史的資産の特徴を捉

これらの建造物等を組合せて歴史的な関係性を導き出し
、ストーリーを構築することが望ましいとされる。

 

● 「城下町」の成り立ちと都市の構造

城下町の基本構成は、①城郭(城下町の中心施設)、②武
地け級武士が居住する武家地から下級武士の足軽屋敷まで
格式に応じて城郭中心部から周辺部に配置)、③寺社地(
一般的に防衛
上の要所に集中的に配置)、④町人地(一般
的に、鍛冶屋町、紺屋町、魚屋町等の個別職業に応じ
た区
分配置)からなる。

こうした構成要素ごとに町割は異なり、地形要件等によ
り、その配置や形状も異なる。
例えば、彦根の城下町は、
三重の堀によって4つの寡に区画されている(最上図)。
内堀の内側の
第1郭は、天守を中心として各櫓に囲まれた
丘陵部分と珊庁である表御殿(現在の彦根城博物館)な

からなる。内堀と中堀に囲まれた第2郭は、藩主の下屋敷で
ある欄御殿(現在の玄宮園・楽々園)と
家老など千石以上の
重臣の邸宅が広がっており、内曲輪と柘きれた。中堀と
外堀の間の第3郭は、武
家屋敷と町人の屋敷が存在し、武士
・町人あわせて居住していたが、居住地は明確に区分され
てい
た広い敷地を有する寺院は、一朝事ある時は軍事的
役割も担うため、武家屋敷とともに外堀の防衛を形成し
ていた。

このため、堀に面した要所は武家屋敷と寺院で占められ
町人の居住区の大半はその内側に広かっていた町人の居
住区は、油屋町・魚屋町・極星町一様人町など職業による
分配配置が見られる。外堀の外側の第4郭は、町人の住居
と足軽の組屋敷があった。また重臣の広大な下屋敷が置
かれたのもこの地域であった。彦根庸の足軽は、下組(中
教組・池須町組)、善利組上組(大霊寺組)、北組(切通組)、
中組、鐘叩組で構成されていた。足軽組屋敷は、城下町の
最も外側に、城下を敗り囲むように屋敷を連ねて、彦根城
と城下町を守備する役割も担っていた。現在の彦根市街
地でも、特徴的な三重の堀や町割等の当時の都市構造が朗
える。

城下町は、城郭を中心に、武家池、町人地(商人、職人等)、
県社地といJ二身分や職種に合わせ
て、周囲に集積させた
碑成となっており、各境界は濠や堀等によって分けられて
いる。
掘割は、都市の規模にもよるが、城郭周辺の内堀、武
家屋敷辱が内側に配された中堀、下級政和
や町大池が内
側に配された外堀といりた三屈による構成が多い.このう
ち、現存している堀は内堀が
多く、中堀や外堀辱は、道路
や地割りとLてのみ痕跡が見られる場合がある。このよ
うな堀,等で囲まれ
た曲輪と呼称され、地名として残ってい
いる場合がある。

城郭は、本丸の天守閣を中心に、外側に向けて二の丸、三の
丸と配されており、周囲を囲む城壁、
四隅等に配された楢
二の丸や三の丸から城外へと通じる入口に設けられた門
(大手門瓦これら城
郭の基盤となる石垣といった構成であ
る。また、門と櫓の機能を兼ね備えた僧門など、その当時
担っ
た機能や立地した場所に応じた。名称が残っている
場合がある。城郭内に整備された庭園辱も、歴史
的資源で
ある。

武家地は、家臣等のh級武士の住居が城郭から近い中堀内
に配される。地域独特の生垣や塀、
門等に囲まれ・た屋敷
(武家屋敷)を構えることが多く、特に、塀や生垣、屋敷林
等は、現在残りでいる。
武家屋敷群の特徴を示す要素とな
っている。、足軽等の下級武士の住居はその外周に配され
ており、足
軽長屋等が残されていることもある。寺社地
は、城下町の内と外の境界、防衛ト.の前線に集中配|置され
ることが多く、塀や、屋敷林等に
よって囲よれた敷地内
に神社仏閣の建造物が配されている。
 

町人地(商人、職人)は、主に外堀内へ職業別に集積配置さ
れた。鍛冶町や船場町など、その地
域に集注した職業がそ
のまま町名になった例も多く、現在でも伝統的な工芸品等
を生産する地域とし
て残っている場合もある。なお、ま
ちの起源は城下町であっても、屡の転封(移封)等によっ
て廃城となったのち、残った町人
地か商業やエ業の生産や
物資の流通等に糖化し、在郷剛的な発展を遂げた地域も数
多くある(高
山史、川越市など)。

 

 

序説 ヘルダリーンと現代(4)

● 最初の詩集からヘリングラート版全集


へルダリーン生前の唯一の詩集は、病期の1826年、
グスタフク・シュヴァープ(1792~1850)と、
ルートヴィヒ・ウーラント(1787~1862)を中
心とする郷土の詩人たちの尽力になる「ヘルダリーン詩
集」にである。これはヘルダリーンヘの友情の結品であ
り、彼もこの愛すべき一冊を非常に喜びいつも手許に置
いて大切にしたが、折に触れて彼自身も不満を漏らすほ
ど編集内容には相当に不備が認められ、詩集と名づける
にはいかにも不完全だった。

彼の死の直後の1846年に出たクリストフ・テ-オド
ール・シュヴァープ(1821~83)、グスタフの息
子以下小シュヴ″ァ-プと略記)編ペルダリーン全集、
全二巻は、全集の名を初めて冠して評伝まで付いた最初
のまとまった作品集であり、これが以後のヘルグリーン
ーテクストの最
初の、ひとつの土台となったのは間違いない。

ヴィルヘルム・ベーム(1877~1957)編を始め
とする、中規模
程度の整った全集が、19世紀末から20
世紀初頭にかけて数
種出たのも、この時点での小シュヴ
ァープの綿密な仕事があっ
たればこそと言ええる。

20世紀に入りしばらくして、時代を画するひとつの出
来事が生じた。ゲオルゲ派の一人、ノルベルト・フォン
・ヘリングラート(1888~1916)は、ヘルグリ
ーンの詩人世界に深く魅せられ、散逸状態のまま捨て置
かれていたヘルダリーンの手稿をほとんど独力で蒐集し
成立期に応じて詩篇・詩型別にテクストを創り全集を編
むという一大事業を企図したのである。ヘルダリーンの
詩により存在を激しく震撼させられたこの若き貴族の仕
事が傑出した先駆性を持つと言えるのは、死後60年以
上にわたり何かしら素晴らしい内容のようだがやはり異
常にも見え、狂気の所産とも見なされてきた後期讃歌の
ほぼ全貌を注付きでテクスト化したからである。

彼の試みは、第四巻『詩篇 1800~1806年』(
1916)に結晶した。彼は惜しくも28歳の若さでヴ
ェルダンに散華したが、遺志を継いだフリードリヒ・ゼ
ーバス(1887~1963)と、ルートヅィヒ・フォ
ン・ピゲノート(1891~1976)が、ヘリングラ
ートが収絨しきれなかった詩篇、他作品を含む全6巻を
まとめた。1913年の第一巻よりちょうど10年目の
ことだった。フランツ・ツィンカーナーゲル(1878
~1935)も同時期に立派な全集を出したが、最後の
ヘリングラート版全集は、以後約40年にもわたってヘ
ルダリーンーテクストのひとつの基準を示しつづけた。

しかしながらヘルダリーンの詩集の巨きさがこうして更
に明らかになるにつれて、およそこの詩人の全作品を、
文献学が到達した学問水準を駆使して集成した全集を誕
生させる機運が強まってきた。折しもこの時間がナチス
政権下にあたっていたことがそれに拍車を掛け、ちょう
ど1943年が没後百年に重なるのを公的機縁として、
まず代表的研究者らによる「記念論文集」そして国家的
規模で新しい人全集が企画刊行となり、またヘルダリー
ン協会がやはりこの年に設立されるにいたったのもこの
歴史状況を背景にしている。協会は翌年1944年に協
会誌『イドゥーナ』(Iduna)を出し、現在まで続く活動
を開始した。

           小磯 仁 著『ヘルダーリン』 清水書院

 

【エピソード】      

       

  

 

          16年度新年会(案) 

日時 2月6日(土)か2月13日(土)のどちらかで
   開宴18:00~20:00まで  

場所 彦根市内西今町 『水幸亭』050-5871-1454
会費 寿司懐石(6千円+飲み放題酒代1・2千円)
送迎 幹事が責任もって手配します。
                              幹事敬白   

 

  

     

  【脚注及びリンク】
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  1. 中山道 高宮宿場町|彦根市
  2. 中山道 高宮宿 彦根観光協会
  3. 宿駅散策 近江中山道中絵巻:高宮宿 
  4. 中山道 道中記 第64宿 高宮宿
  5. 中山道 高宮宿/高宮宿から愛知川宿
  6. 滋賀県彦根市 高宮宿 Japn Geographic
  7. 彦根市西葛町籠町~高宮宿-街道のんびり旅
  8. 高宮町~鳥居本宿-ひとり歩み-ひとり歩きの
    中山道 2004.4.9
  9. 彦根文化遺産 中山道と宿場町 高宮宿高宮ま
    つり・高宮布
  10. 日本写真紀行 鳥居本宿~64高宮宿
  11. 中山道高宮宿 馬場憲山宿
  12. 高宮宿 栗東歴史民族博物館民芸員の会のブログ
  13. 新高宮町史 自費出版デジタル
  14. 歴史まちづくりの特性の見方・読み方 国土技術
    政策総合研究所 2013.04.11
  15. 近江百人一首  滋賀県立近代美術館
  16. 近江百人一首 滋賀県文化振興事業団∥編集 滋賀
    県教育委員会 1993年 S-9100- 93 p.14
  17. 淡海万葉の世界 藤井五郎∥著 サンライズ出版
    2000年 S-9100- 00 p.233
  18. 萬葉の近江 滋賀アララギ会∥編 白川書院 1971年
    S-9100- 71 p.200
  19. 滋賀文化のススメ
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  80. 彦根古図略図 彦根市
  81. 金亀山彦根寺の観音堂 ―近江西国第14番 金亀山
    北野寺とも
  82. 淡海文庫 44 「近江が生んだ知将 石田三成」 太田
    浩司 サンライズ出版
  83. 佐和山城 [5/5] 大手口跡は荒れ放題。現存する移築
    大手門は必見 | 城めぐりチャンネル
  84. 中井均 『近江佐和山城・彦根城』サンライズ出版2007
  85. 滋賀県彦根市 専宗寺 JAPAN-GEOGRAPHIC.TV
  86. 彦根御山絵図 彦根三根往古絵図など古絵図デジタル
    ・アーカイブ化に、彦根市立図書館  2012.05.27
      

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