地域循環共生圏概論㊽

2022年04月28日 | 防災と琵琶湖


作成日:2022.4.27|更新日:2022.4.28
地域循環共生圏概論㊽
□ 地盤強化と地震防災 ⑬
 
備計画書の「事前評価調書」の比較事例研究
先回の「軟弱地盤改良環境保全工学概論①」では、ま
ず、廃棄物埋立地すなわち廃棄物地盤の安全性・安定
性に関する地盤材料及び地盤工学的考察が必要であり、
地盤改良等を踏まえ処分場の工学的管理の視点から考
察をはじめた。
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出所文献:小野 諭, 講座地盤改良技術と環境保全「4.
廃棄物の処理処分・廃棄物地盤の跡地利用と地盤改良
技術」,一般社団法人 廃棄物資源循環学会「材料」(
J. Soc. Mat. Sci., Japan), Vol.49, No.11, pp. 1249-1254, Nov.
2000
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5.跡地を地盤工学的に有効利用する
 地球にやさしい、環境に適合した新しい地盤を創造
するために、廃棄物地盤に対する効果的な地盤改良に
取組む必要がある。この廃棄物を焼却溶融固化あるい
は、無害化して処分場を有効利用し、将来の地盤汚染
も未然に防止するということが望まれる。.
  
5-1 廃棄物地盤改良の問題点と課題
 最終処分場においては埋立廃棄物の種類が多種化し,
また汚染物質およびその形態も多様な状況となってい
る。地盤改良を行う際には、汚染物質の浸透・拡散等
に十分留意し、
廃棄物を放置することによる周辺環境
への影響だけでなく、長期的な地下水や地盤汚染を未
然に防止する。
 地盤改良による地盤環境の改善対策として、①汚染
の拡散防止、②無害化・固結化あるいは汚染物質の除
去、③環境改善状況を把握するための監視・評価技術
等の確立が必要とされる。
 処分場には汚染の拡散防止対策は勿論のこととして、
廃棄物の分解促進や無害化・固結化がタイムスケジュ
ールで処理される廃棄物を受入れしてから何年で閉鎖
完了し、地盤改良を経て、何年後に跡地利用のための
工事に取り掛かれると言った明確な将来構想に対する
事業であれば、地元の反対や土地確保の困難さは少な
くなるであろう
 廃棄物埋立地盤を早期に安定化させ跡地を有効利用
するためには地盤改良が必要不可欠となる。その実施
に際しては、周辺環境に配慮した工法の選定と改良効
果に対する検討が重要となる跡地利用を踏まえて, 時
間的制約・利用目的からの条件等を満足するものとす
る。現在埋立中の処分場に対してはこれらの対策を実
施するが、これからの処分場には、地盤改良工法、跡
地利用目的を決めた上で廃棄物の受入れ基準、埋立方
法を確立する必要がある。

5-2 処分場が負の遺産にならないための跡地管理
 環境展が各地で開催され廃棄物に寄せる関心は一般
の市民を巻込んで急激に上昇している。廃棄物を分類
して処理処分しようとする に「焼いて、捨てて」のご
み行政からの脱皮も一つの重要な課題である。ごみ焼
却を如何にすべきか?に対して,①)焼却残さの最少化と
再利用、②エネルギーの最大回収、③金属等有価物の
回収、④ダイオキシンをはじめとする環境対策の万全、
⑤安価な建設コスト・維持コストが期待されている。
今後は、廃棄物を資源として利用する「資源循環型社
会」の構築に向けてのエコタウン事業等の推進が求め
られる資源循環型廃棄物処理のためには、①廃棄物の
発生抑制、②廃棄物のリサイクル促進、③処理に伴う
環境負荷の低減、④再生品の利用といった条件を満た
すことが求められる。また、高齢化、情報化、ハイテ
ク化、価値観の多様化、経済や消費のソフト化、世界
化資源の涸渇化社会といった21世紀の社会像をにらん
だ上で、「社会システム」様式と廃棄物の発生形態に
対応していくことがめられる。. 

表Ⅱ 廃棄物地の改良工法

 そこで、将来廃棄物処理を選択する場合には、想定
する時代の生活レベルや価値観都市構造や産業形態、
さらに周辺環境の制約条件、ごみ処理形態がどのよう
に変化するかを検討する必要があるその上で、廃棄物
の質による処理目標を明確に設定し、処理システムを
社会に適合させることも考えなければならないであろ
う。
6.おわりに
 自然の生態系システムにおける植物(生産者),動物
(消費者),微生物(分解者)にならい、「廃棄物処理業者
は資源の再生者、創造者」であると認知する意識革命
が求められるすなわち、太陽エネルギーを享受して生
産活動を行う緑色植物、それを消費する動物と植動物
の遺骸を分解する生物がいて、資源として再び生産者
に使われる社会システムでは、製造者(生産者)と購
入者(消費者)に対して廃棄物処理業者(分解者)の立場
となる。そこで循環の立場、廃棄物処理の視点から生
産流通消費のあり方を提示し、それぞれの条件に優先
順位をつけて取り組むことによって、円滑な物流と循
環型社会の構築に移行される。資源循環型社会におい
ても、最終的に処分すべき廃棄物は発生し続
け、跡地
管理のための地盤改良対策工は重要であり続けるであ
ろう。将来的には開発から跡地利用まで“新しい島・
地下処分場構想”等の地盤を生産する完結システム
確立されれば、廃棄物の循環、土地のリサイクルとの
社会的認知が得られれば地元の反対も少なく、用地確
保に大いに役立つものと考
えられる。環境地盤に対す
る社会的問題解決にどのように対処していくべきなの
かの一つの扉がある。汚染が生じるに未然防止(地改
良・改善)する方法を捜すことも, これから着実に進
めていかなくてはならないであろう。

ここまできて、「環境防災学」に基づく、彦根広
域の独自の「彦根広域環境防災基本計画」がないこと
に気づく。計画の対象自治体と区画を決定し、例えば
「2050年家庭・産業ごみ廃出量ゼロ」を目標に掲げ、
「実行計画」を定めた上で、計画の「関連連既存施設
及び更新施設計画」を定め、それを今回の更新計画を
住民全体に告知し、丁寧説明すべきだったではないか。
勿論、目標は彦根広域自治体の独自性をもつための地
方・中央政府との調整し住民との合意形成すべきだっ
ただろうと後知恵であるがそう考える(もっとも、ワ
ーキング・グループの力量が問われる)。

ところで、環境防災学・環境地盤工学とはどのような
ものか。環境地盤工学は、先回の「地域循環共生圏概
論㊼」で嘉門雅史・環境地盤工学研究所理事長の「環
境地盤工学と廃棄物問題」(1994)で触れた。



また、「環境防災」とは何か。これは「環境」と「防
災」という全く関係のない2つの概念をただ並列で並
べたものではない。2つの概念は,互いに密接不可分
な関係にあり,互いに補完し合わなければ,健全な体
系にならない宿命を背負っている。災害は最大の環境
破壊である。その災害を減らそうとする防災は,環境
保全対策の最も重要な根幹をなすものである。したが
って,防災を考える時,望まれる環境形成にいかに資
するか,という視点が最も重要な目標であらねばなら
ない(竹林征三著「環境防災学-災害大国日本を考え
る文理シナジーの実学-」の「はじめに」より)と書
かれている。また、立命館大学 理工学部 環境都市学
系の「環境防災会」の「設立の趣旨」には次のように
書かれている。

  世界の防災・減災対策は、たとえ被災してもいち
 早く元の状態に戻れるレジリエント(resilient)な社
 会の構築に向かいつつあります。激甚災害によって
 被害が生じた後の回復力を向上させるには、住環境
 が災害によって激変しないことが必要ですが、環境
 を自然災害から守るための研究はあまり進んでいな
 いのが現状です。そこで、地震や豪雨などの自然災
 害が環境に及ぼす影響について検討し、自然災害前
 の環境リスク評価、自然災害後の環境クライシス評
 価の両者に対するマネジメント手法を確立すること
 を目標として本研究会を設立しました。
  まず、研究の前提である"環境リスク"を定義して
 おきます。環境を自然環境と社会環境の2つからな
 ると定義したことで、2種類の環境リスクが定義で
 きます。まず、自然災害による都市施設、各種構造
 物の被災そのものも環境リスクです。これを "1次
 環境リスク" と呼びます。次に、都市施設や各種構
  造物が被災すると、それに起因して副次的に水質汚
 濁や大気汚染等のいわゆる環境破壊が進行すること
 になります。これを"2次環境リスク"と呼びます。
 本研究会では、これら1次と2次の自然災害による
 環境悪化リスクの把握と改善を通して、環境マネジ
 メントを軸とする災害対策の革新を目指します。 

以上のことを踏まえ、次回は「防災学講座3  地盤災
害論」から、①地すべりの定義から始まり、地すべり
の分類とそれらの多様なメカニズム----とくに、地震
時に発生する地すべりの研究からわかった「すべり面
液状化」についてについて、②1999年広島災害など斜
面崩壊が土石流化して発生する「崩壊誘起土石流」に
ついて、モデルと実験----
これらの現象は都市周辺で
発生すれば深刻な被害が発生させ、今後の斜面災害研
究の進むべき方向をを学び。③土石流の基礎から述べ、
発生のメカニズム、流動のメカニズムについて理論、
実験と現場の比較を通し、氾濫・堆積シミュレーショ
ンの進歩とハザードマップ、対策工や避難誘導の研究
を学び、さらに、④1964年の新潟地震災害から1995年
の兵庫県南部地震までの地震で発生した主要な液状化
現象による被災事例やクイッククレー、クイックサン
ド現象とそのメカニズム、さらに液状化の発生メカニ
ズム、発生予測法の研究の進展、ハザードマップ作成
技術の進展を学び、「ごみ焼却施設建設計画」の防災・
減災策を考察する。

.
                 この項つづく 

【エピソード】

  
従姉妹の富田千賀子さん(和泉市)につづき、守る会
の谷口三平さん(彦根市)、町内の児玉文男さん(彦
根市)、従姉妹の吉田百合子さん(大阪市)、そして、
実弟の有山龍作が相次いで他界。そんな折、浄土宗の
月訓暦が印象的に腑に落ちる。

         咲 い て 誇 ら ず

  When things go well, don't halt but take another
  step forward.

物ごとは上手くいくと、ついそこで歩みを止めてしま
いがちだが、さらなる一歩をひたむきに重ねていくこ
とが大切だと教える。
わたしにとっては、最悪の日々と思えるのだが、なぜ
か、それを超越し素直に前に歩むことの背中をおされ
る気がした。「言葉」とは誠に不思議なものですね。
皆さま方にはいかがでしょうか。


【脚注及びリンク】
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