松原磯の本諸子

2011年12月15日 | 滋賀グルメ紀






【子持ちホンモロコのどろ酢がけ】

琵琶湖の固有種で、モロコの中では最もおいしいと
されるホンモロコ。近年、漁獲量が激減した特に貴
重な食材だ。1月から3月の子持ちの時期が最も美
味。どろ酢(からし酢みそ)につけて食べても美味
しい。つくりかたは至って簡単。魚を洗い、こんが
りと素焼きする。材料には、ホンモロコ、どろ酢(
からし酢みそ)用に白みそ、砂糖、酢、練りからし
を準備する。

ホンモロコは、琵琶湖固有種であり、春季には湖岸
のヤナギの根、水草などに産卵。この時期の湖岸に
は、ホンモロコを狙った釣り竿が並ぶ。しかし、最
近は資源の減少で風景はあまり見られなくなってい
る。ふ化した稚魚は、沿岸域で生活し、冬季には沖
合の深層で群泳する。 ホンモロコは生まれて半年で
全長10cmほどになり、翌春には産卵。ホンモロコを
対象とした漁業は、冬から早春には沖曳網、春から
秋には刺網で行われる。漁獲量は1993年ごろまで20
0~400トンでほぼ安定していたが、1995年は96トン
と急激に落ち込み、その後も減少が続き、2006年に
は7
トンにまで低下。このため、ホンモロコの価格
は急騰する。 
 
彦根市松原から米原市磯の湖岸、矢倉川から天野川
にかけて、かっては本諸子(ホンモロコ)の大産卵
地であったが、琵琶湖総合開発による埋め立て、水
質汚染、外来魚による駆逐で壊滅する。わたしたち
の運動リーダの故田中豊一が経営する居酒屋でよく
この子持ちホンモロコのどろ酢がけをこの季節にな
ると3月ごろまで食べながら、居酒屋政治談義をし
ていたことを思い出す。このどろ酢がけ、焼き魚の
香りにどろ酢がからむとバター風味に変化し独特の
美味しさを醸し出すから一押しのお勧めだが、最近
は入手困難となり口にすることが無くなる。この滋
賀ではふな鮨を一番としているが、個人的には、
本文化を凝縮させた
この料理が一番と思っている。

 



 
【エピソード】

 

 磯の崎 漕ぎたみ行けば
 近江の海 八十の湊に鶴さはに鳴く 

                                    高市黒人


 磯がくれおなじ心にたづぞ鳴く
 なが思じ出づる 人やたれぞも

                   紫式部



この近くには竹生島にまつわる弁財天があるが、伊
吹の荒ぶる神の毒気に当たった日本武尊が、醒井の
居醒の清水で正気を取り戻し、都へ帰る途中に千々
の松原にて崩御。この地の磯山に葬られたが崩御し
たはずの日本武尊が白鳥となって飛び立ったと伝わ
る日本武尊を厚く守護神に祭る磯崎神社が建立され
ている。

毎年5月3日の例祭で「磯武者行列」がおこなわれ
日本武尊にあやかって男児は武者姿、女児は稚児姿
で巡行する。ところで、礒崎神社に神官として武内
宿禰(すくね)の後裔、武内信實が京都より派遣さ
れ、蒲生姓を名のり後に、礒崎を名乗って磯崎神社
の宮司となったのが礒崎家の始まり。礒崎金七は、
藤堂高虎に従い、文禄・慶長の役に参加し、関ヶ原
の戦いに参加、大坂夏の陣では長宗我部氏の吉田重
親、横山将監を討つた。系図によれば一時は2万石
を知行し、慶長12年(1607年)に藤堂姓を授けられ、
藤堂式部を名のる。大坂夏の陣の時で受けた戦傷に
家康が与えた「権現様頂戴之御軟膏」が現在でも伝
わっているという。

松尾芭蕉は藤堂新七郎家の家来であったが、式部家
の組下になる。さらに、家信の在世中に荒木又右衛
門、河合又五郎の伊賀越えの仇討ちがあり、敵討ち
が終わった後、式部家にお預けとなる。藤堂式部家
信は、寛永13年(1636年) 2月19日に京都に没し、
紫野大徳寺の大光院には藤堂式部家の5代と礒崎九
郎左衞門の墓がある。また、伊賀市朝屋の龍王寺が
式部家の菩提寺である。3
代将軍徳川家光の時代、
紫衣事件によって大徳寺から追放になった沢庵禅師
の高弟、清巌和尚を藤堂家が預かったとされる。

そんなこんなことを考えながら、縁ゆかしき地酒「
七本槍」を飲みながらどろ酢かけを食べることを楽
しみにしている。

Daitokuji Kyoto06n3200.jpg
                                    

 

【脚注及びリンク】
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1.「ホンモロコ増殖に関する研究

2.「琵琶湖漁業を支える魚たち

3.「琵琶湖と河川

4.「ホンモロコ料理
」滋賀県
5.「磯崎神社
6.「磯崎古墳群
7.「藤堂家信
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