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城郭都市設計史 26

2016年02月19日 | 湖と城郭都市

 

【ヘルダーリーンの国の街づくり Ⅱ】

さて、先回のつづき(「都市デザインサイト - アーバ
ンデザインの実務の視点から日本の街づくりを俯瞰する
」水島信)。



● 建築は文化的行為の結果である

水島信の体験からはじめる。ミュンヘン技術大学でのア
ーバンデザインの授業での街づくりの演習は、まず住宅
の図面を描くことから始まる。それをもとにして6軒の
家をどう組み合わせるか。その次が25 軒の連棟住宅、
それを並べたらどういう街ができるか。そこから発展し
て、街の中の集合住宅とか、郊外の集合住宅へと規模が
大きく。慣れてくると、住宅の図面を描かなくても、た
とえばある区画に12メートルの幅の建物だったら8.
5メートル程度の住居がどんなふうに並んで、どんな街
区ができるかがおのずと分かるようになる、今度はバリ
エーションでタイプ違う家を組み合わせる。そんな演習
を通し、特定の地域のことだけを考えるだけでは、都市
設計としては不十分だということを学ぶと紹介する。



そこでは、ドイツでは国土計画に沿ってプランをつくり、
それに沿ってプランができるという流れがあり、街区内
の部分的に悪いところを直すだけではなくて、そこを直
したらこの地域はどう変化するかを予測する。さらに、
その地域が変化することが都市全体にどのような影響を
与えるのかという配慮も必要で、全体を視野に入れた上
で、部分をどのように計画をするのか?まず、S=1/
/25000の図面を描き、次のステップでは、S=1/
5000の検討も行った上で、S=1/2500になる
と都市のディティールが見えてくる。そんなふうに検討
し理解し、最終的にS=1/1の図面まで落とし込み、
具体的なアーバンデザインするという―――のだから、
流石、欧州の近代知を結実させた国だと驚く。


 

次に、建築家の報酬はドイツ建築家・技師者報酬令HO
AI
で保障されている。これは、建築は文化の一端を担う
という認識に立った上で、建築家はそ
の仕事に一定のク
オリティを求められていることを
意味する。その良質な
クオリティはダンピングされた報酬からは得ることはで
きないという歴史的事実に
基づいた考え方でだが、一律
の設計料規定は独占
法違反などといった日本の考え方、
または、文化の発展に逆行するような考え方では理解で
きない条令。


また、施主が設計上不都合なことを要求したら、建築家
が専門的根拠をもって制止・説得する。建物に
関しての
ことは建築家に任せなさいという
が、施主はお金を出す
ことで必要な建物を手に入れる
のが目的とし、そのため
に建築家は施主と同等のレベル
でアイディアを出し、経
費発生する。だから上下の関係
がなく、対等な関係の人
間として計画にとって何が最良
のことであるかを話し合
う。これは、お金を出す施主の
いう通りにしろといった
意識のある日本では、理解
しがたいという(実際はどうかは
?)。


ここで、日本語の建築という言葉は、行為の名詞形で
って、造形するという概念が入っていないと指
摘。だか
ら、もし一級建築士に建築家という言葉を
使うのなら、
造形するという概念も含めた言葉とし
て使う必要がある
とし、ヨーロッパでいうアーキテ
クトと同じ意味で建築
家という言葉を使うなら、創
造するという概念を新たに
入れないと意味がない。

これはArchitectureを建築と翻訳したときのボタンの掛け
違いがあって、「建物」と「建築」という言葉違いが明確
で無くなってしまう。建物という言葉は、建造物や建築
物という意味を持ち、建設されたものを指す。ところが
日本語の建築という言葉は、家屋や橋などを建設する行
為と、建設されたものの両方の意味を持っているが、ド
イツ語では Architekturは、芸術としての造形や建造を指
Baukunst、または様式としての建造、造形を指すBaustil
とされている。技巧や芸術を意味するのがkunst、様式や
スタイルを意味するstilで、日本語の建築とは違い明確に
芸術的行為の結果を指すと解説しているが、概念的にそ
うであっも、分業・細分化した社会ではデザイン(意匠
設計)、機能(構造設計)さらに分化していくために実
体は似たり寄ったりではないだろうか。



Nördlingen  ネルトリンゲン

 

● 一体的に共有すべき将来的な都市像

日本とドイツは何が違うのか?何で違うのか?それは一
言で
いうと日本特有の縦割りの行政制度からきていると、
指摘しているが、これは重要な共通認識である。同じよ
うなスキームなのに、実施する面積が違
うだけで別の事
業区分になる。時には開発事業になったり、
地区計画事
業になったりと、どういう基準でそうなるのか分
からな
上、行政側のいろいろな部署が縄張り争いをしてい
るよ
うに見えるのだと。



F-プランは自治体が都市をどうするかというビジョンを
表し、そのF-プランに則るかたちで、それぞれの部分の
B-プランを計画する。部分の計画を集めて構成するので
はなく、背景として全体のネットワークがある中で部分
の計画が造られる。ですからドイツの都市計画は、国の
計画があって、州の計画があって、地方の計画があるこ
とで流れ、国土計画や州計画から影響を受けている自治
体の責任を明確にして、ビジョンを表明したF-プランと
いうがあって、その枠内での新たな建設の詳細を示すB-
プランがある。このシステムが、必ずしも将来の都市の
状況を示すプランを意味しない日本の都市計画との大き
な違いです。部分的な解決法しか行われず、しかもそれ
ぞれの施策が有機的に関連しない日本と、市街地全体を
考えて都市計画を構想するドイツの違いとその弊害は明
瞭だと言い切る――ここで拍手!それでは「縦割り行政
を解体し行政刷新する」という命題についてどう考える
のか?それば別の機会と場で考える。 



Abensberg

さらに、著者は、日本は街づくりの手法の模索をしてい
るようだが、その原因はこのように、それぞれの地域が
独立した上で連携をとっていないからではないかとし上
で、ドイツの建設指針計画、つまり本来の形の地区計画
システムを導入すれば、全体的な視点で検討されたデザ
インをそれぞれの地区で行うことになり、結果として非
常にきれいな街になる。また、日本のように縦割りで、
道路も住宅地もそれぞれが関連なく造るのではなく、
市全体のイメージの中でつくれば良い、ドイツでも、都
市計画はパッチワークになってしまう面があるものの
F-プランという全体の枠の中で行うので、たとえ全体像
から少しはずれても、大きな枠の中には納められること
になりまる。全体像があれば、ある部分で増えたら、別
の部分で調整でき、全体像がないから、一部分でやって
しまったら、別の部分ができなくなる日本のやり方を考
え直さなくてはいけないと主張する。

                              この項つづく 

 

【エピソード】     

         

 

 【第1回現地調査日】 2016年4月下旬(予定) 

 

  

 

【脚注及びリンク】
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  1. 「地域資源・交通拠点等のネットワーク化による
    国際観光振興方策に関する研究」国土技術政策総
    合研究所 プロジェクト研究報告 2008.05.21
  2. 「歴史まちづくりのてびき(案)」ISSN 1346-73
    28 2013.11.13
  3. 歴史まちづくりの特性の見方・読み方 国土技術
    政策総合研究所 2013.04.11
  4. 「城と湖のまち彦根」中島一 サンライズ印刷出版
  5. 「続・城と湖のまち彦根」中島一 サンライズ印刷
    出版部 
  6. 中島一・水野金一・田中治是『建築空間における
    都市計画額』コロナ社
  7. 中島一元彦根市長 Wikipedia
  8. ドイツ:ニュルティンゲン市「市民による自治体
    コンテスト1位のまち(1)」 池田憲昭
     内閣
    府経済社会総合研究所
  9. The Neckar river near Heidelberg  Wipipedia
  10. ラウフェン・アム・ネッカー Wipipedia
  11. ボーデン湖 Wikopedia
  12. コモ湖 Wikipedia
  13. ネッカー川 Wikipedia
  14. 『ヘルダーリン詩集』 川村次郎 訳 岩波文庫
  15. 『ヘルダーリン』小磯 仁 著 清水書院
  16. 三島由紀夫 著『絹と明察』
  17. 三島由紀夫の十代の詩を読み解く21:詩論とし
    ての『絹と明察』(4):ヘルダーリンの『帰郷
    』詩文楽
  18. 三島由紀夫の十代の詩を読み解く18:詩論とし
    ての『絹と明察』(1)~(7)詩文楽-Shibun-
    raku
  19. フリードリヒ・ヘルダーリン  Wikipedia 
  20. フリードリッヒ・ヘルダーリン - 松岡正剛の千
    夜千冊
  21. ヘルダーリンにおける詩と哲学あるいは詩作と思
    索頌歌『わびごと』を手がかりに 高橋輝暁 2010.
    09.06
  22. 『ヘルダーリンの詩作の解明』、ハイデッガー著
    イーリス・ブフハイム,濱田恂子訳
  23. 南ドイツの観光|ドイツ観光ガイド|阪急交通社
  24. バーデンヴェルテンベルク州&バイエルン州観光
    局公式日本語
  25. リンダウ - Wikipedia
  26. ハイデルベルグ Wikipedia
  27. ハイデルベルク城 - Wikipedia
  28. 城郭都市 Wikipedia
  29. List of cities with defensive walls Wikipedia
  30. ヨーロッパ100名城 Wikipedia 
  31. 中国の城郭都市 : 殷周から明清まで 愛宕元著
  32. 中国城郭都市社会史研究 川勝守 著 汲古書院
  33. 万里の長城 世界史の窓  
  34. 中国厦門の城郭都市研究における外邦図の利用
    山近久美子(防衛大学校)2005.08.25
  35. ヨーロッパ100名城 Wikipedia
  36. 近江佐和山城・彦根城 城郭談話会編 サンライズ
    出版
  37. 淡海文庫 44 「近江が生んだ知将 石田三成」 太田
    浩司 サンライズ出版
  38. 佐和山城 [5/5] 大手口跡は荒れ放題。現存する移築
    大手門は必見 | 城めぐりチャンネル
  39. 中井均 『近江佐和山城・彦根城』サンライズ出版2007
  40. 彦根御山絵図 彦根三根往古絵図など古絵図デジタ
    ル・アーカイブ化に、彦根市立図書館  2012.05.27  
  41. 彦根市指定文化財 「山崎山城跡
  42. 都市計画の世界史、日端康雄 講談社現代新書
  43. ドイツ流 街づくり読本  水島信
  44. 続・ドイツ流 街づくり読本 水島信
  45. 完・ドイツ流 街づくり読本 水島信
  46. 列伝 井伊家十四代 国宝・彦根城築城四百年祭    

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