降り注ぐ太陽エネルギー

2010年09月15日 | 日誌






【琵琶湖に注ぐ太陽エネルギ】  


プロジェクト研究紹介「琵琶湖に注
ぐ太陽エネルギー」
(琵琶湖研究所
ニース「オウミア」No.81)より




赤潮やアオコの発生は、富栄養化
に伴う植物プランクトンの異常増
殖と考えられている。湖の周辺か
ら、大量の窒素やリンが流入し、
特定の植物プランクトンを急激に
増殖させる。赤潮やアオコを形成
する植物プランクトンは、有害・
有毒藻類。植物プランクトン自体
は、湖の生態系を支える重要な役
割を果たしていて、太陽エネルギ
ーと、水、二酸化炭素を利用して
光合成を行い、湖内に多くの有機
物を作り出している。その恩恵で
で、自分で体を作ることができな
い動物プランクトンや魚類が生存
できる。

それでは、琵琶湖に降り注がれる
太陽エネルギーはどのぐらいだろ
う。彦根気象台によれば、過去10
年間において、琵琶湖北湖に注が
れた太陽の年平均全天日射量は、
6.8×1014 Kcal (因みに、全球的
日射量は約4.1×1028Kcal
。これは、
電力量に直すと約 7.9×1011KWh
なり、滋賀県で年間に使用する電
力量1.25×1010KWh2002年実績)
の約60倍に相当。また、わが国に
おける全発電力量の約78%にも達
する。



驚くほど多くのエネルギーが、太
陽から琵琶湖に注がれている。た
だ、このエネルギーのすべてが湖
に吸収されるのではなく、湖面で
反射されて大気中に逸散するもの
もあり、いったん湖水に吸収され
たエネルギーも、水の蒸発(潜熱)
や大気乱流による熱交換(顕熱)
などによって空気の運動(対流)
を生じ、降水現象や風などといっ
た天気の変化を引き起こす。琵琶
湖に取り込まれる太陽エネルギー
のほとんどは、湖水を暖めるため
に使われます。春から夏にかけて、
湖は暖められ水中に熱が蓄積され
ます。



水温の非均質な分布や、局所的に
生じる風(湖陸風)は、水平的な
循環流を引き起こし、やがて環流
や吹送流を駆動する。一方、秋か
ら冬にかけて、冷却によって湖の
熱は大気へと伝わり、水温は低下
する。暖まった大気は、逆に、琵
琶湖周辺の気候を穏やかに保つ。
滋賀県でもっとも寒いのは、県南
部に位置する信楽地方。例えば、
2004年2月11日の最低気温は信楽で
マイナス8.0℃。琵琶湖北西部に位
置する今津ではマイナス3.6℃





滋賀県立衛生環境センターが、琵
琶湖北湖の中心で1978年から2002
年の25年間に測定しました水温デ
ータを用いて、湖面を通して交換
した熱エネルギーを計算
した。そ
れによると、大気から湖水に入っ
た年平均熱エネルギーは、3.05 ×
1014Kcal
、湖水から大気へ出た年平
均熱エネルギーは3.03×1014Kcal
したがって、琵琶湖に注がれる全
天日射量の約45%が正味の水温上
昇として使われる
。加熱と冷却の
間に差があるのは、湖が少しずつ
暖まることを示す。実際、25年間
で琵琶湖内に蓄積した熱量は5.5×
1013Kcalであり、水温は約2.0℃
。これは過去25年間における
賀県の平均気温上昇とほとんど同
じであり、琵琶湖の水温変化が地
球温暖化傾向と同調
していること
を裏付けている。  


湖に入る光エネルギーは、熱だけ
でなく植物プランクトンや水草な
どの光合成にも利用される。琵琶
湖北湖における植物プランクトン
年平均基礎生産量は約1.8×1012
Kcal
であり、先に求めた年平均全
天日射量の0.27%。これは水稲
の光エネルギー利用率の20%
程度、
急激に光が減衰する水中を浮遊す
る植物プランクトンの生産量とし
ては、妥当な数値と考えられてい
る。食物連鎖における栄養段階を
考慮して魚類の生産量を推定する
と、約1.7×109Kcalになります。一
方、漁獲量をエネルギー換算する
と約3.3×107Kcalなので、琵琶湖で
は全魚類生産量の約2%を有用魚種
として捕獲している計算になると
いう。


 
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【目的について】

琵琶湖研究所では琵琶湖未来環境
実験計画を推進し、新しい計測手
法を積極的に導入して、生物資源
量や生産速度を正しく評価し、栄
養やエネルギーの流入とバランス
した、望ましい琵琶湖の未来環境
を実現するための最適な解を見出
ことを目的とするという。現在
は地球温暖化によって、世界にあ
る琵琶湖のように深くて大きい湖
沼のいくつかでは、急激な環境変
化が起こり、従来、湖沼の環境問
題といえば、富栄養化という地域
的な現象のみを取り扱っていたが、
最近はそれだけではなく、地球規
模のエネルギーによって支配され
る気候の変化が、各地に洪水や渇
水を引き起こし、湖沼の植物プラ
ンクトンなどの生物相を大きく変
えたりしています。つまり、
という小さなエネルギーと、地球
という大きなエネルギーの相互作
用に関する研究が重要となってき
。化石燃料利用に代表される浪
費型エネルギー社会を、環境に負
荷を与えない新しい高効率型エネ
ルギー社会にどう転換するか、と
いう普遍的な課題解決への挑戦だ
と位置づけている。
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