追いつめられながらヒューマンな心を杖にして必死で生きようとする家族たちを見て、読者は文学というものが、何を達成しうるかを考えずにはいられない。家族の中心にいて、その核心を鋼のように支えているのは母ちゃんである。ほとばしる愛情とともに、エネルギーが滾々と湧きあがる。
父ちゃんは故郷を離れてから、根を絶たれた植物みたいに腑抜けになってしまったため、一家の長は母ちゃんが果たす。
作中人物に注ぐ、スタイン . . . 本文を読む
■スタインベック「怒りの葡萄」(上・下巻)黒原敏行訳 ハヤカワepi文庫 2014年刊
重たい小説である。
しかも、当時の社会的経済的な問題や、差別、死などといった、考えたところで、答えの出ないものばかりを、具体的にストーリーに溶け込ませて表現しようとしている。容易ならぬ長篇小説である。
上巻447ページ、下巻422ページ(ハヤカワ文庫)
ことに“オーキー”という差別用語に、ガツンと頭を殴られ . . . 本文を読む