吉村さんが死んだ。
私は吉村さんの小説のファンであった。
ある人が、吉村さんの”破獄”は面白いと言ったので、読んでみた。
予想以上に面白い本だったので、他の本も読み漁った。
私が最も面白かったのは、”逃亡”。
高野長英がシーボルト帰国に当たって、ご禁制の日本地図を渡したために幕府から終われる立場になる。
スリルあふれる物語であった。
その吉村さんは、昨春、舌がんと宣告され、今年2月には膵臓全摘の手術を受けていたという。
死後が近づいたことを知った吉村さんは、死の前日の30日夜、点滴の管を自ら抜き、ついで首の静脈に埋め込まれたカテーテルポートも引き抜き、直後に看病していた長女に「死ぬよ」と告げたという。
遺言状にも「延命治療はしない」と明記していたという。
人間の尊厳を強く意識していた人なんだなと、改めて感銘した。
私が30歳を過ぎて読み始めた作家で、彼の死でちょっと動揺している自分を発見した。
追悼の気持ちで、近々、何か彼の本をもう一度読んでみたいと思う。
安らかに、お休み下さい。