今朝、私のところにも、”振り込め詐欺”がやってきました。
朝の9時20分、私は息子”健”(仮称)と一緒に家を出て、最寄り駅まで車で送った。
車の運転中、健は、「今日は大学に行く」、と言っていた。
また、
「ちょっと、悩んでいるんだけど、就職の問題で・・・・」
と私に聞いてきた。
会話はいつもと変わりはなかった。
私は、息子を駅で降ろし、オフィスに行った。
それから、40分後、家に残っていた家内に電話が入ってきた。
健の偽者(偽健)曰く、
「俺の友達の志田が会社を作るというので、500万円を金融会社から借りたんだ。300万円は返済したが、残り200万円未納のまま、どこかへ行ってしまった。俺が連帯保証人になってるから、今日中に払わなければならないんだ。今までは言わなかったんだけど、俺、追われてるんだ。」
家内と偽健の会話
家内:「あんたは、今、どこなの?」
偽健:「新潟にいる。」
家内:「何をしに新潟まで行ったの?」
偽健:「死のうと思って。みんなに迷惑をかけるから。」
家内:「何をいってるの!お父さんがオフィスにいるから、電話しなさい。」
偽健:「オフィスの電話番号を知らない。」
家内:「それじゃあ、お父さんから電話するように言うから待っていなさい。」
偽健:「やつらに自分の携帯番号を知られているから、
携帯は折って捨ててしまった。
これからかけるときには、プリペイドの電話にかけて。
番号は090-****-***。」
この会話が終わると、家内は直に私にその旨電話してきた。
状況は逼迫していた。
家内曰く、
「健は変だよ。健は友達の借金の連帯保証になっていて、今、追われているんですって。お父さん電話してやってよ。直に。」
私は、直に偽健のプリペイド携帯に電話をした。
私と偽健の会話
私:「健、今、お前はどこにいるんだ?」
偽健:「今、新潟にいるんだよ。海に来ている。」
私:「一体、どういうことになっているんだ?」
偽健:「あまり、詳しい事は話せないんだ。もう、死にたいよ。」
私:「お前は誰に追いかけられているんだ?」
偽健:「佐々木という男。電話番号は090-****-****。」
私:「解った。電話してみるよ。」
この時点で、変だなと思ったのは、時間が合わないということだけ。
つい40分前に別れたのに、新潟にいるわけがないと思ったものの、
健は嘘をついているなとしか、思わなかった。
そこで、佐々木という男に電話をした。
私と佐々木との会話。
私:「健の父親です。」
佐々木:「健さんの生年月日を教えて下さい。」
私:「昭和**年**月**日です。」
しばらくして、
佐々木:「ああ、解りました。木村健さんですね。
志田さんの連帯保証人ですね。」
私:「一体、事情はどうなっているんですか?」
佐々木:「お宅のお子さんは志田さんの連帯保証人になっているんです。
その志田さんには、5年前に500万円を融資したんですが、
200万円の残額未払いのまま、雲隠れしてしまったんです。
だから、残額を連帯保証人のお宅の息子さんに、
支払っていただきたいのです。」
私:「支払期限はいつまでですか?」
佐々木:「今日なんです。」
私:「志田さんの融資にかかわる書類をファックスしてください。」
佐々木:「そんなものはありません。」
私:「連帯保証した書類はあるでしょう。それを送ってください。」
すると、段々語調が変わってきて、
佐々木:「つべこべ言わずに、金を払えよ。
お前の息子が今日までに払うと言ったんだよーっ。」
私:「それは口頭ですか?そもそも、お宅の会社は、どこにあるんですか?」
佐々木:「そんなものはねえよ。インターネットで金を借りたんだよーっ。」
私:「じゃあ、いつ、どの用紙に連帯保証の印をついたんですか?」
佐々木:「そんなんじゃあねえよ。2ヶ月前に、
お前の息子が今日中に残金を払うと一札入れたんだよーっ。」
佐々木:「もう、いいよ、今日中に金を振り込まなければ、
債権取立て会社のものが、そちらに行くからな。」
佐々木:「今日払うなら、元金でいいけど、債権取立て会社なら、
高い金利まで吹っかけられるぞ。俺はしらねえぞ。」
私は、直に、知っている弁護士に相談した。
すると、弁護士は、
「それは心配することはありません。インターネットバンキングの場合、
ほとんどが違法ですから、問題にはなりません。まして、連帯保証などの意味はありません。仮に、嫌がらせをしてきたら、裁判所に訴えなさい。その判決に従います、と言えばいいのです。」、と実に明快だった。
もう一つ、付け加えてくれた。
「この手の話は、連帯保証ではなく、白紙に、名前と印を押すだけ。何枚か書かせます。これが実は大変なことになる恐れがありますから、本人に確認してください。」
その旨、偽健に電話をしてやると、偽健は、
「ああ、そうなの。あっ、チョット待ってよ。おなかが痛くなったから、15分後にもう一度かけてよ。」、と。
そこで、15分後にかけた。私は、一つの質問をした。
「お前は、連帯保証にサインをしたというけれど、どんな用紙にサインをしたのか?」
すると、健は、
「3枚くらいの白紙の用紙に、サインをし印を押した。それがどうしたの?でも、もういいよ。もう、そんなことなんか、もうどうでもいいから。」、と言うだけであった。
そうこうしているうちに、家にいた、家内がオフィスにやって来て、
「どうだった?」
と、私に聞く。
私が、事の顛末を説明すると家内は、
「ひょっとすると、振り込め詐欺じゃあない?」
私は、一瞬、そこで我に返った。
「健に電話をしてみな。でもあの声は、確かに健だったけどな。」
と私は家内に言った。
直に、家内は新潟の健に電話をした。
家内曰く、
「愛想ない返事だったよ。あの声は、元気のない健の声には間違いなかったけど。
でも変だと思わない? 家を出たのが1時間半前で、あの時間の間に新潟に行っている筈はないし、家を出る前は、わざわざ、携帯を忘れて家に取りに帰ったぐらいだもの。その携帯を、追われているから、折って捨てるとは思えない。ちょっと、あの携帯に、電話してみるわ。」
しばらくして、家内は、
「おかしいの、健の携帯はつながるの。メッセージを残していたけど、これどうなっているの?何があったんだろうね、健に。」
そうこうしているうちに、健から電話が届いた。
「直に、電話しろとメッセージがあったけど、何かあったの?」
健の声は、明るくはっきりとしていて、先程の偽健とはまるで違っていた。
健に事の経緯を説明してやると、電話の向こうで笑っていた。
この瞬間、振り込め詐欺の全容がわかった。
そこで、我々はもう一度分析をしてみることにした。
偽健の声は、沈んでいて、ゆっくり、しゃべっていた。
まさに、本物の健と区別できなかった。
時間的につじつまの合わないことも解っていながら、勝手に我々が推測していた。
振り込み指示をする人間に、色々聞くと、直に、キレてしまう。
チンピラまがいの態度に変わる。
弁護士の話を出した途端に、トーンが変わってしまった。
問題は、日頃から話し合っていなければ、勝手に想像する部分がある。
常日頃の会話がいかに重要なことかが理解できた。
”ヤクザのおどし”をチラつかせると、ほとんどの人は不安になるという心理を上手く利用している。
息子に連絡できない時間帯、すなわち、朝の10時から12時が、彼らの勝負時間になっている。
みなさん、くれぐれも、ご注意を。
朝の9時20分、私は息子”健”(仮称)と一緒に家を出て、最寄り駅まで車で送った。
車の運転中、健は、「今日は大学に行く」、と言っていた。
また、
「ちょっと、悩んでいるんだけど、就職の問題で・・・・」
と私に聞いてきた。
会話はいつもと変わりはなかった。
私は、息子を駅で降ろし、オフィスに行った。
それから、40分後、家に残っていた家内に電話が入ってきた。
健の偽者(偽健)曰く、
「俺の友達の志田が会社を作るというので、500万円を金融会社から借りたんだ。300万円は返済したが、残り200万円未納のまま、どこかへ行ってしまった。俺が連帯保証人になってるから、今日中に払わなければならないんだ。今までは言わなかったんだけど、俺、追われてるんだ。」
家内と偽健の会話
家内:「あんたは、今、どこなの?」
偽健:「新潟にいる。」
家内:「何をしに新潟まで行ったの?」
偽健:「死のうと思って。みんなに迷惑をかけるから。」
家内:「何をいってるの!お父さんがオフィスにいるから、電話しなさい。」
偽健:「オフィスの電話番号を知らない。」
家内:「それじゃあ、お父さんから電話するように言うから待っていなさい。」
偽健:「やつらに自分の携帯番号を知られているから、
携帯は折って捨ててしまった。
これからかけるときには、プリペイドの電話にかけて。
番号は090-****-***。」
この会話が終わると、家内は直に私にその旨電話してきた。
状況は逼迫していた。
家内曰く、
「健は変だよ。健は友達の借金の連帯保証になっていて、今、追われているんですって。お父さん電話してやってよ。直に。」
私は、直に偽健のプリペイド携帯に電話をした。
私と偽健の会話
私:「健、今、お前はどこにいるんだ?」
偽健:「今、新潟にいるんだよ。海に来ている。」
私:「一体、どういうことになっているんだ?」
偽健:「あまり、詳しい事は話せないんだ。もう、死にたいよ。」
私:「お前は誰に追いかけられているんだ?」
偽健:「佐々木という男。電話番号は090-****-****。」
私:「解った。電話してみるよ。」
この時点で、変だなと思ったのは、時間が合わないということだけ。
つい40分前に別れたのに、新潟にいるわけがないと思ったものの、
健は嘘をついているなとしか、思わなかった。
そこで、佐々木という男に電話をした。
私と佐々木との会話。
私:「健の父親です。」
佐々木:「健さんの生年月日を教えて下さい。」
私:「昭和**年**月**日です。」
しばらくして、
佐々木:「ああ、解りました。木村健さんですね。
志田さんの連帯保証人ですね。」
私:「一体、事情はどうなっているんですか?」
佐々木:「お宅のお子さんは志田さんの連帯保証人になっているんです。
その志田さんには、5年前に500万円を融資したんですが、
200万円の残額未払いのまま、雲隠れしてしまったんです。
だから、残額を連帯保証人のお宅の息子さんに、
支払っていただきたいのです。」
私:「支払期限はいつまでですか?」
佐々木:「今日なんです。」
私:「志田さんの融資にかかわる書類をファックスしてください。」
佐々木:「そんなものはありません。」
私:「連帯保証した書類はあるでしょう。それを送ってください。」
すると、段々語調が変わってきて、
佐々木:「つべこべ言わずに、金を払えよ。
お前の息子が今日までに払うと言ったんだよーっ。」
私:「それは口頭ですか?そもそも、お宅の会社は、どこにあるんですか?」
佐々木:「そんなものはねえよ。インターネットで金を借りたんだよーっ。」
私:「じゃあ、いつ、どの用紙に連帯保証の印をついたんですか?」
佐々木:「そんなんじゃあねえよ。2ヶ月前に、
お前の息子が今日中に残金を払うと一札入れたんだよーっ。」
佐々木:「もう、いいよ、今日中に金を振り込まなければ、
債権取立て会社のものが、そちらに行くからな。」
佐々木:「今日払うなら、元金でいいけど、債権取立て会社なら、
高い金利まで吹っかけられるぞ。俺はしらねえぞ。」
私は、直に、知っている弁護士に相談した。
すると、弁護士は、
「それは心配することはありません。インターネットバンキングの場合、
ほとんどが違法ですから、問題にはなりません。まして、連帯保証などの意味はありません。仮に、嫌がらせをしてきたら、裁判所に訴えなさい。その判決に従います、と言えばいいのです。」、と実に明快だった。
もう一つ、付け加えてくれた。
「この手の話は、連帯保証ではなく、白紙に、名前と印を押すだけ。何枚か書かせます。これが実は大変なことになる恐れがありますから、本人に確認してください。」
その旨、偽健に電話をしてやると、偽健は、
「ああ、そうなの。あっ、チョット待ってよ。おなかが痛くなったから、15分後にもう一度かけてよ。」、と。
そこで、15分後にかけた。私は、一つの質問をした。
「お前は、連帯保証にサインをしたというけれど、どんな用紙にサインをしたのか?」
すると、健は、
「3枚くらいの白紙の用紙に、サインをし印を押した。それがどうしたの?でも、もういいよ。もう、そんなことなんか、もうどうでもいいから。」、と言うだけであった。
そうこうしているうちに、家にいた、家内がオフィスにやって来て、
「どうだった?」
と、私に聞く。
私が、事の顛末を説明すると家内は、
「ひょっとすると、振り込め詐欺じゃあない?」
私は、一瞬、そこで我に返った。
「健に電話をしてみな。でもあの声は、確かに健だったけどな。」
と私は家内に言った。
直に、家内は新潟の健に電話をした。
家内曰く、
「愛想ない返事だったよ。あの声は、元気のない健の声には間違いなかったけど。
でも変だと思わない? 家を出たのが1時間半前で、あの時間の間に新潟に行っている筈はないし、家を出る前は、わざわざ、携帯を忘れて家に取りに帰ったぐらいだもの。その携帯を、追われているから、折って捨てるとは思えない。ちょっと、あの携帯に、電話してみるわ。」
しばらくして、家内は、
「おかしいの、健の携帯はつながるの。メッセージを残していたけど、これどうなっているの?何があったんだろうね、健に。」
そうこうしているうちに、健から電話が届いた。
「直に、電話しろとメッセージがあったけど、何かあったの?」
健の声は、明るくはっきりとしていて、先程の偽健とはまるで違っていた。
健に事の経緯を説明してやると、電話の向こうで笑っていた。
この瞬間、振り込め詐欺の全容がわかった。
そこで、我々はもう一度分析をしてみることにした。
偽健の声は、沈んでいて、ゆっくり、しゃべっていた。
まさに、本物の健と区別できなかった。
時間的につじつまの合わないことも解っていながら、勝手に我々が推測していた。
振り込み指示をする人間に、色々聞くと、直に、キレてしまう。
チンピラまがいの態度に変わる。
弁護士の話を出した途端に、トーンが変わってしまった。
問題は、日頃から話し合っていなければ、勝手に想像する部分がある。
常日頃の会話がいかに重要なことかが理解できた。
”ヤクザのおどし”をチラつかせると、ほとんどの人は不安になるという心理を上手く利用している。
息子に連絡できない時間帯、すなわち、朝の10時から12時が、彼らの勝負時間になっている。
みなさん、くれぐれも、ご注意を。