Netflixのドラマ
「アンオーソドックス」
がよかったので紹介します。
前回紹介した「BODIES/ボディーズ」に登場した、2053年の刑事メープルウッド役を演じたシラ・ハースという女優さんが独特で素敵だったので、彼女が主演のドラマ「アンオーソドックス」を見てみたのですが、これがまたすごくよかった。
NY市ブルックリンのウィリアムズバーグには、ユダヤ教のハシディックと呼ばれる、超正統派(ウルトラオーソドックス)の人たちが共同体(コミュニティ)を作って暮らしています。
このことを、私は全く知らなかったので、驚きの連続でした。
ハシディックの人たちは、ユダヤ教の教典とされるトーラー(律法)の遵守を強要され、信者たちの生活全般は厳しい戒律により厳格にコントロールされています。
このハシディックの戒律の厳格さは想像を超えるものでした。
ドラマの主人公であるエスティは18歳で親が決めた相手と結婚させられますが、結婚というのは、子孫を残す生殖のために行われるので、肉体の快楽を求めてはいけない、と戒律で決められています。
セックスをするのは金曜日の夜のみで、子作りのためだけに不快なセックスを強要される。エスティは毎回激しい痛みに襲われますが、それでも子どもを産まないと共同体の中で生きていけないので我慢するしかない。これは強姦と同じです。
女性には学ぶ機会もなく、本を読むことも禁じられ、人前で歌うことも許されず、ただ男性に従うしかない。
こうした前近代的な戒律にがんじがらめにされた人たちが、現代の、自由の国であるアメリカの、NYのど真ん中に存在する、ということ自体本当に驚きでした。
第二次世界大戦のホロコーストを生き延びたユダヤ人たちが再建した共同体だといいます。
エスティはNYのコミュニティから逃げ出して、ドイツのベルリンに行き、そこで出会った若者たちと交流していくうちに、音楽に目覚めます。しかし、NYから夫がエスティを探しにやってきて・・というのが基本のストーリーです。
実際にNYのハシディックの共同体で暮らし、結婚して子どもが生まれた後、子どもを連れて共同体から逃げ出したデボラ・フェルドマン、という女性が書いた同名の自叙伝が原作です。
ユダヤ教の厳しい戒律について描かれていますが、これは普遍的に女性の置かれた立場についての物語でもあります。
以前、ここでも取り上げた「ハンドメイズ・テイル/侍女の物語」にも共通するものがあります。
子どもを産むことにしか女性の価値を認めない。
日本でも、子どもができない夫婦は親戚からやいのやいのと言われる現実がありますね。
同じくNetflixには、ハシディックのドキュメンタリー「ワン・オブ・アス」もあり、これも興味深く見ました。
この中で一人の女性が「この共同体は第二次大戦の答え」だと言います。
「今ある共同体とは、犠牲者の上に成り立ってるの。トラウマを内包してるのよ。親と600万人の犠牲者のどちらに子どもは属するのか・・子どもたちの魂が世界を是正することこそ、彼らの原動力なのよ・・」
戦争が生み出すトラウマは、何世紀にもわたって子孫に受け継がれていくようで、今の世界情勢を見ると恐ろしい限りです。
できれば多くの人に見てもらいたいドラマです。
シラ・ハースが何より可愛くて素晴らしい。注目の女優さんです。