雪の朝ぼくは突然歌いたくなった

2005年1月26日。雪の朝、突然歌いたくなった。「題詠マラソン」に参加。3月6日に完走。六十路の未知の旅が始まった…。

日々歌う 2007 その2(4月~6月)

2007-12-26 08:52:56 | 日々歌ふ2007

070404 
 どれほどの血潮を吸ひてクメールの大地のかくも赤く染まるや
 クメールの樹々花々の美しくして人のくらしの芽吹きかなしも
 穏やかなガイドに問へば彼もまたポルポトに父虐殺さるると
 職問はば小学校の教師たりポルポト殺めしガイドの父は
 産業のシェムリアップに観光を除きてなくも息吹くくらしの
070405 
 戦乱と忘却の渕ゆクメールの数多の遺跡蘇りける
070406 
 虚ろなる巨像を仰ぎ忠誠を日々強ひらるるくらしを想ふ
 離陸時に不安のよぎりまぶた閉づ落ちなば落ちむすでに術なく
                  *
 歌詠みと英語教師のビミョーなる日々を生きをり大松達知の
 (大松達知=おおまつ・たつはる、「コスモス」所属歌人)
 チェロの音のかくも深きか趙静の奏くカザルスの<鳥の歌>はも
 (趙静=チョウ・チン)
 若死にの夫の写真を亡き母にひとは問ひける息子なるやと
 (夫=つま)
070408 
 ツバメ翔ぶ空のなつかし六年ぶり<ホーおじさん>の像の彼方に
 (六年=むとせ)
                  *
 産経のまづき<正論>読む後の紅茶はうまし<スリランカ>産の
 <卒塔婆>の意味を知らずば木片の墓場に林立つをわれ恐れけり
 (林立つ=たつ)
 泰淳の最高峰はとひと問はば即座に挙げむ『富士』の名前を
070409 
 満天星のわれを待つごと咲き初めし花の白きにこころ明るむ
 (満天星=どうだん)
 いつしかに新芽の萌えて若やげるハナミズキ見ゆ桜も散れば
 ゆつくりと七キロ余りを走りなば総身の毒素汗に流さる
 春よ春一夜の雨に芽吹きけむ萌黄のかなし欅・銀杏の
 (一夜=ひとよ)
                  *
 <征露>をば<正露>に変へて丸薬を売りつづくるを誰ぞ怪しむ
 戦世の末に生れたる吾にして空襲想ふサイレンの音に
070410 
 四十路過ぎわれ恋初めしユリノキの六十路の春になほ恋しかる
 血を厭ふ吾にしあれど咲く花の血潮の色を厭ふにあらず
070412 
 癩王の遺跡のありしクメールの木陰に物乞ふをとめ病みをり
                  *
 足腰は鍛へをれども国老ひて待つ山坂の険しさ増せば
 列島に富士の裾野ゆ筒音の広がりゆかむ九条改へて
 閑居して不善は為せど退屈を覚ゆることの絶えて久しき
 戦世に向ふきざしを知りてなほ安部・石原を人の選びしや
070413 
 冬ざれの銀杏に生れし鈴なりのみどり児わらふ梢を揺らし
 石をもて追はるるごときかなしみの啄木早世けど消ゆることなし
 (早世けど=ゆけど)
 一夜をばブログ仲間と愉悦しみぬ神楽坂なる蕎楽亭で
 (愉悦しみぬ=たのしみぬ、蕎楽亭=きょうらくてい)
 布製のガムテープをば切り裂きて一本残る繊維のあはれ
 (一本=ひともと)
070414 
 旅すればアジアの街の夜暗く愚かにぞ知る夜の暗きを
                  *
 五十路をも踏み能はずに漱石の残せる<こころ>今に古びず
 一本のボタン桜の咲く下で知るや知らずや子らは遊べり
 (一本=ひともと)
 辛夷散る戸山の原に白妙のハナミズキ咲く時を惜しみて
070415 
 ―<富士霊園を義父の墓参に訪ひて見し「文学者の墓」なる碑に寄せて>
 宮柊二・宮英子とて黒と朱の文字の並びぬ富士の裾野に
 牧羊子・開高健に並び見る道子の刻字すでに黒かり
 別姓の刻字の赤き夫婦あり鹿野政直・堀場清子の
070417 
 さ緑のかくもやさしく深まれば許しにけりな冷たき雨を
 夜の森はわが故郷なりき匂ひ咲く桜の並木くぐる日の来よ
 (夜の森=よのもり)
 質問に限りてひとの語尾上ぐる習ひ棄てゆくオジン・オバンも
 命をば奪ひ奪はれ滅びける過去のありしも幻ならむ
070418 
 太平の海を隔てて凶弾のゆゑなく絶ちぬいのち数多を
 学生を逃がして教授撃たれたるホロコーストを生き延びしひと
070419 
 清楚なるホテル待ちをり惨劇の血潮に赤きクメールの地に
                  *
 戦世の末にし吾の生れたるを父母いかに祝ひ給ひき
 福は内鬼は外なる伝統のしぶとくあらむ列島社会に
 静やかに群れ咲くシャガのわれの目に入らざる春の長くありたり
 コデマリの咲けるがごとき恋人をわれ求めざり花は愛づれど
070421 
 ネパールの古都のパタンよ路地裏よ煉瓦の粗き人のつましき
 足熱きわれ憎みをり旅先の要らざる堅きベッドメイクを
                  *
 どれほどの季節巡れど陽水の今に変はらぬ<心模様>の
 変貌の速度も規模も加速度をなほ増しゆかむ話しことばの
 吹き荒るる青き嵐に繁る葉のざわめき狂ふ楠の大樹の
070422 
 ボストンの海を染めたる紅は茶の色なれど血の色に似て
 (紅=くれなゐ)
 あてもなき旅にしあればわが六十路歩み求めむ終の住処を
 朋来たりわれも一品アジ捌きもてなす夜の酒の美味かり
 咲き初むるオホムラサキの浮かびけり小暗き道に灯を点すごと
070423 
 バタヒタと迫りし音をいぶかれば吾抜きゆける孫のごときの
070424 
 市場フェチ国家フェチをば隠さざる男を長にわれら戴く
 (男=をのこ、長=をさ)
070425 
 ―<六本木・国立新美術館にて>
 水滴の創りし模様のモネよりも印象深くわれを打ちたり
070426 
 道の端にオホムラサキのしんとして咲き濡るる色深きに惑ふ
 小雨降る丘を登ればつる草の繁りて咲きぬむらさきの花
 咲き浮かぶ花ニラ白く木洩れ陽に樹陰の狭間星落つるごと
070428 
 ―<チェロの巨匠ロストロポービッチ逝く>
 圧政に屈せざるをもカザルスに倣ふ巨匠の八十路に斃る
 ベルリンの壁に抗してチェロ奏ける巨匠の姿われは忘れじ
070430 
 妙高を映し静もる黒姫の高原隠す小さき池の
 妙高と黒姫仰ぐ名も知れぬ沼のほとりに水芭蕉咲く
 春遅き野尻の森にカラマツの高く芽吹けば空のあをかり
070501 
 見はるかす雪の残れる妙高の姿の美しくおほきかりけり
070502 
 フキノタウ採りつ下ればゲレンデの枯れ草脚にやさしかりける
                 *
 大小の手まりのごとに咲く花の家路に白く風にゆれをり
070503 
 政府をば縛りて民のしあはせを図るためにぞ憲法のある
 いつしかぞ小沢一郎のまだしもに見ゆる世にとはなりにけるかも
                 *
 おほらかな黒姫山の寝姿にC.W.ニコルの巨体を想ふ
 地震のごと轟く音と飛沫あげ百名滝の滝は落ち来る
 (地震=なゐ、飛沫=しぶき)
070504 
 古利根の川流れゐし牛島を藤花求め訪ひ初めにけり
 (古利根=ふるとね)
 古利根の川辺に近く子ら植えし花鮮やかに咲き乱れをり
070505 
 名も知らでその花咲くを知らざりし過去の悔やまる紫蘭の花よ
 (過去=とき)
 鰹なく目鯛を求めふと思ひタタキになせば舌のとろける
070506 
 鈍色の空を背負ひて窓辺にぞ楠の花咲く欅葉繁る
 (鈍色=にびいろ)
 連休を疎むこころの芽生へしと職退く女の記すを読みぬ
 (女=ひと)
 連休の終るを惜しむ心根も消えさりゆかむ二年後に
 (二年=ふたとせ)
070507 
 咲き初むるユリノキ仰ぎ花求む一年ぶりの逢瀬のごとに
 (一年=ひととせ)
070508 
 ―<キース・ジャレット・トリオ ジャパン・ツアー 2007>を聴きて
 ケルンの音耳にこだます復活のキース・ジャレットのピアノを聴けば
 前回の歌を忘るる演奏の悪夢晴らせりキース・ジャレットの
070510 
 静もりて咲く花ばなのかなしかり向島なる百花の園に
070511 
 言問の橋をくぐりて人気なき川端ゆけば驟雨の上がりぬ
 (驟雨=あめ)
 驟雨止み<ウンコビル>とぞひとびとの呼びゐるオブジェ川辺に光る
070512 
 練兵の夢跡知るや皮膚色の違ふ人らの集ふ代々木に
 (違ふ=たがふ)
070513 
 ―<旧古河庭園にて>
 民の血を吸ひし者らの夢跡に薔薇の色濃く咲き乱れをり
 薔薇はバラ血の色のみにあらずして秘めやかに咲き清らに咲けり
 橙の薔薇のひときはかなしかりドヌーブの名をかぶりて咲けば
                 *
 亡き父の面影浮かぶアラバマの映画の原の物語読む
 (原=もと)
 原作を読みてなほ知るアラバマの映画描ける世界かなしも
070514 
 咲く薔薇のはなやかなればひと知れず和の色にほふ都忘れの
070515 
 不忍の池ゆ冬鳥すでに去り水面に蓮のひと茎萌え見ゆ
                 *
 ことさらに何をするでもなかりせどけふの日逝ける亡き母想ふ
070516 
 やはらかに夕陽に浮かぶ池の端のゆるる柳に心のゆるる
070517 
 ほの暗き水辺に咲ける黄菖蒲の盛りを過ぎて観る人なくも
070518 
 初夏に萩の名持てる紫の色秘めやかな花ぞ咲きける
 (初夏=はつなつ)
070519 
 紫の色濃くあれど花群に既視感ありて光琳の名出づ
070520 
 築山の小道明るみ敷石の三角四角玉形浮かぶ
070521 
 垂直の護岸を覆ふ緑あり芭蕉偲びて川面を染めむ
070522 
 木漏れ来る夕陽に明き奉納の酒樽積まれわれを誘ひぬ
070524 
 <ひとつ>をば<hititu>と友の打ちしなむ<ホト>表はす文字<日>に続けり
 (文字=じ)
 夕陽浴び点字ブロックに影させば障害持たぬわれにもやさし
070525 
 雨にぬれ常行く舗道の朝光に石組み美しくわれを待ちをり
 (朝光=あさかげ、美しく=はしく)
 東北の訛りなつかしわが腕ゆ血をば抜かむと針さす女の
 (女=ひと)
070526 
 雨去りて空の光ればいのちあるものみな挙げむ声なき歓声を
 (歓声=こゑ)
                 *
 歌人たる英語教師のテストをば監督しつつわれは歌詠む 
 最後まで自力でやれよとわれ言へば一瞬おきて生徒らは笑へり
 (生徒=こ)
 さもあらむ生徒らの記せり黒板に<夏休みまであと46日>と
                 *
 竹橋にミューズおはせば初夏の光と緑オブジェに宿る
 戦世に仆れし君のまがふなく天才なるを知る 靉光よ!
 (靉光=あいみつ)
 誰ぞ知る露草白く群れ咲くを都の真中われを除きて
 初夏の落ち葉の色の見事なる泰山木の秋を知らざり
 われ知らずカルメン想ふ黄昏の木立の中の花くれなゐに
070527 
 黄昏の木立を行けばくれなゐの花穂の浮かびぬ一本の木に
 (一本=ひともと)
 おほらかな朴の葉群を愛しみて残り陽照ればみどり目に染む
 堀水にさざ波立ちてビル影の見る間に砕けゆるる黄金に
 開発に取り残さるる一隅に色のかなしく信号灯る
070528 
 吹く風に池面の波の綾なせる光と影の一期一会を
 木洩れ陽の樹影を踏みて小道行く異国の人の青きシャツ見ゆ
070529 
 欅樹の太き幹にぞ木洩れ陽のモミジの葉影映しけるかな
 悪しき名の白き花こそかなしけれ夕陽に祈り捧ぐるごとの
 黄葉する楠の葉落ちし小道行く黒き葉影と木洩れ陽踏みて
070530 
 杜奥に彼岸のごとくもみじ葉のあをく光れば音の消えさる
 大楠のみどり覆ひし空仰ぎ大きくおほきく息を吸ひたり
 あをあをと池面を染めて初夏の一日暮れゆくもみじ萌えなば
070531 
 期せずして出会ひし像のまなざしはいづくを見むかホセ・リサールの
 口元を強く結びてリサールの今しも言はむ <ノリ・メ・タンヘレ!>
 (ノリ・メ・タンヘレ=Noli Me Tangere=我に触れるな)
 はつ恋のひとに遭ふごとわが胸の高まり鳴りぬヒメシャラ咲きて
070601 
 アオサギの緑に染まり獲物をば狙ふ姿にやすらぎ覚ゆ
070602 
 ほぼ花の終はる池面は睡蓮の青葉青葉に埋もれてありぬ
 ザリガニを獲りて数へむ児の知るやサツキの紅と池面に映るを
 新緑の坂を競ひて駆けゆける児らのをりたりうれしかりけり
070603 
 去りがてにふりさけみれば空を背にユリノキ高くわれを見送る
 億年を生きぬき来たる化石樹のいのちの繁り高く仰ぎぬ
 (億年=おくとせ)
 たわわなる枇杷のみのれど誰ぞ見むわれ懐かしく独り仰ぎぬ
 菖蒲田にあまたの花の咲き描く白むらさきの心模様を
070604 
 道の端の陰に日向に紫陽花の日ごと増しゆく色のかなしき
070605 
 蓮の葉のあをく光りて水面埋めわれを迎へぬ不忍池は
 冬鳥の去りて静まる池の面をカルガモゆらし一日暮れゆく
 (一日=ひとひ)
070606 
 木洩れ陽にしろく浮かびて舞ふがごとヤマボウシ咲くあをき葉群に
 渋き美を防御の門のそこここに残して滅ぶ徳川の世は
070607 
 溢れゆくモンテヴェルディの多声部の楽に包まる心も身をも
 法悦のむべなりしをば知りにけるモンテヴェルディの楽に満たされ
   目白バ・ロック音楽祭2007
   ラ・ヴェネシアーナ&ガッティ&リクレアツィオン・ダルカディア もうひとつの「ヴェネツィアの晩課」
   東京カテドラル聖マリア大聖堂にて
                 *
 さやぐ葉にはや夏光の照り映えて萌黄に染まる楠の一本
 (夏光=なつかげ、一本=ひともと)
070608  
 ―<自由学園明日館にて>
 柱廊にけふの夕べの陽の差せばもと子・ライトの夢の浮かびて
                 *
 警報のクヮンクヮンと鳴りガウガウと電車過ぎゆく黄の影残し
070609 
 雷雨待つつかの間明くシーボルトゆかりの花のシチダンカ咲く
070610 
 芝あをき彼方に浮かぶくれなゐのサツキいざなふ小道うねりて
 いかづちの雨の去りゆき心待つ紫陽花訪へばなほ鮮らけき
070611 
 <水槽>の文字青あをとオレンジの蓋は浮かべぬ一日の無事に
 (一日=ひとひ)
 笹の葉の緑とどめし露吸ひて静もる蝶の名は知らずとも
                 *
 義理と言ひ正義・理性にあらずして道説き来るわれらの父祖は
070612 
 ペダル踏む主人を待たむ自転車のオレンジ色に車体を焦がしつつ
 (主人=あるじ、車体=み)
070613 
 マンションの入り口護る狛犬のシルクロードを経めぐる末に
 ライオンの獅子にシーサー、狛犬に変ずる旅を今し想はむ
                 *
 われを見て瞬時に席を譲り立つ韓国女性に不意を衝かるる
070614 
 夕光の朱き鳥居に木洩れ射しゆらめきをりぬ樹影燃やしつ
 (夕光=ゆうかげ)
070615 
 一目見てわかりましたと教へ子の三十年ぶりに声をかけ呉る
0706016 
 梅雨入りの空晴れわたるこの国の暗雲すでに深くもあれば
 人工の渚にあれど癒すものあらばいのちのさまざま集ふ
070617 
 陽は沈み空は血塗られ虹橋の静かに浮かび渚暮れゆく
                 *
 鴎外のゆかりの坂こそかなしけれ民家にゆるるデュランタの花
 愛求め伸びゆく茎の切なくてアガパンサスの蕾ふくらみ
070618 
 道へだて鴎外旧居にむかひ咲く青葉がくれの彼の花白し
070619 
 小魚をたくみに獲りて満ちたるるコサギの染まず憩ふ緑に
 生ひ茂る蓮の葉群はあをき血を湛へて花の咲くを待たなむ
 公園のベンチに独り後手をつきて動かぬ若きをみなの
070620 
 公園の緑を背にしてドラム打つ肌黒きひと楽をたのしむ
070621
 歓声の夕陽に響き代々木なる緑の園に子らは走りぬ
                 *
 菖蒲田の消えてはまたも現れぬ水元訪ひて花を惜しめば
 コアジサシ空舞ふ水の豊かなる公園ありて花菖蒲咲く
                 *
 谷中・根津・千駄木つづめ谷根千と名づけし女に街で行き交ふ
 (女=ひと)
070622 
 武蔵野にキスゲ群れ咲く地のあればはるかな尾瀬のさらになつかし
 梅雨厭ひ生き越しあれど梅雨来ずに夏に至るを誰ぞよろこぶ
070623 
 ―<町田市立国際版画美術館「菊池伶司とその時代」展を訪ねて>
 また一人われの知らざる夭折の異才のありて銅版刻む
 忽然と現れ去りて二十二の菊池伶司はいのち刻みぬ
 ジンジンと照る陽騒げど町田なる菊池伶司の画業しづもる
                    *
 オール5の通知表をばもらふごと吾妹に伝ふ健診結果を
 六十を過ぎて酒量の減らざれど肝臓検査の値減りゆく
070624 
 特攻を強ひられ今も大和なる巨艦の沈むわたつみ深く
 沖縄の礎刻めり特攻に沈む大和の兵士らの名を
 (礎=いしじ)
                    *
 梅雨いづこノウゼンカヅラの咲き乱るいつはり青き空に焦がれて
 日陰こそ柘榴の花はかなしけれ朱のしづかに緑穿ちて
 (朱=あけ)
 打ちはなすコンクリート壁の見事なる民家のありてしばし見ほるる
                    *
 われを待ち木立の陰に白く咲く一本高きアガパンサスは
 (一本=ひともと)
070625 
 落ちゆけばコンクリートの路地待てるノウゼンカヅラの花の骸を
 (骸=むくろ)
070627 
 亡き母の教へたまひし鉄扇の紫深き花ぞ咲きける
 叢を朱に彩る秘めやかな姿目に入る花の名知れば
070628 
 日光の霧降る山を黄に染めむ十日の後にキスゲの花は
070630 
 四十路をも知らずに逝ける父憶ふ子らの旅して六十路半ばを
 地に落ちし花の骸の雨に濡れ束の間憩ふ終はりの時を



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6 コメント

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生を謳歌し感謝する歌群! (びっけ)
2007-12-26 09:59:14
こちらも拝見しました。
お写真ですくわれていたかな?という歌が、ほとんど見当たりませんでした。歌もこれほどにきっちり歌われていたのですね。

素材も広くとられていますね。興味が尽きません。

なんといっても命あるものの歌いぶりがいいですね。お人柄でしょうか。

歌をつづけていると、それまでは専門外で詳しくもなかった分野にも開眼しますでしょう?たとえば植物の名前や色の名前など。日本語のゆたかさをあらためて楽しめますよね。

故郷の「夜の森」、なんてロマンチックな。夜の森シリーズで連をつくると素敵でしょうね!地名というものは魅力がありますね。各地の駅や停留所で気をつけて書き留めたり、地図上で探すのも、楽しい歌の準備になりますよ。

来年もご健詠ください。
一読者でしかないのに興奮してとうとうと・・・。
ご容赦ください。
返信する
命の重さ・・・ (setu)
2007-12-26 11:04:14
心に響く歌の数々に命の重みや
大切な時の流れを感じます。
頂いたアランの言葉に・・・は、
今も大事にしています。
良い年越しをなさって下さい。

鈴木安蔵さんのブログを書いていましたが、
28日で消えていきます。
ご覧頂くのは無理かもしれませんが、アドレス書かせて頂きます。
http://200710yt-ts-aozora.cocolog-nifty.com/
返信する
その2まで… (髭彦)
2007-12-26 15:18:43
びっけさん、その2まですぐに読んでコメントをいただき、感謝です。
写真との関係は、歌だけをこうして一覧したらどうかなと僕自身も危惧していたのですが、そうでもなくてほっとしています。
びっけさんにもいろいろと教えていただきましたが、やっぱり開眼がありましたね。
これからも楽しみです。
ありがとうございました。
返信する
setuさん、こんにちは (髭彦)
2007-12-26 15:22:09
読んでくださって、ありがとうございます。
鈴木安蔵さんのブログ、今チラッと拝見しましたが、消えてしまうんですか。
もったいないですね。
情報をなんとか保存しておきたいと思います。
よいお年をお迎え下さい。
返信する
おわび (setu)
2007-12-28 12:41:22
プロバイダー変更のため、ブログは、きょうで一応消えます。今、読み直していましたら、1930年のところに、上杉八束という名前がありました。(ーー;)
すみません。上杉慎吉、穂積八束を混ぜてしまったようです。ドジなので、他にも間違えがあると思います。おわび致します。m(__)m
1933年1月7日消印の吉野作造のハガキを見て、翌日鈴木安蔵が行動しているということになりますので、日本の郵便業務の迅速さに勝手に感動していました。 
返信する
setuさん、すみません (髭彦)
2007-12-29 00:04:23
あの後、夕方から忘年会で、翌日は昼から群馬に出かけ、合間に何とかしようと思っていたのですが、結局保存ができませんでした。
残念です。
ぜひまた、他のプロバイダーでブログを再開してくださるようにお願いします。
鈴木安蔵の出身地である相馬の小高は、僕の曽祖父半谷清寿(はんがい・せいじゅ)の出身地です。
何らかのつながりがあるかもしれません。
よろしくお願いします。
返信する

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