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人生に第二にはあれどビールには第二のなくて第三のある
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なぜならむヤブカンザウの花見れば胸底ゆ湧く眠る思ひの
時空超え飛び来たりけむ玉虫のふいに止まりぬ吾が眼前に
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友の母手打ちし蕎麦のほのかなる香り甘さに昼餉満ち足る
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翅黒く肌あを光る細き身の静かに憩ふ繁る水辺に
青き葉をつかの間白く粧ふと知りてかなしき半夏生見ゆ
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かぜふけどなゆれそゆれそネジバナよマクロのレンズにとらふるまでは
ひたぶるにシロツメクサの蜜を吸ふちひさき蝶の赤き夏翅
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戦世の末期に生(あ)れし吾もまた虱飼ひけり坊主頭に
鉄砲や槍より稗をわれ好む雀につづく雑草(あらぐさ)の名に
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見沼野にヤブカンザウの咲き群れて妖しく招く真昼間われを
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ザリガニを食する習ひありしかば餓鬼の日々にぞ喰らひしものを
野の花に白蝶とまり蜜吸ふを息止め撮りぬ身をばかがめて
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ほの暗き木陰にゆれて紅白の花水引の咲き初めにけり
原産ははるか南アにあるといふ朱の花高く野辺に咲き燃ゆ
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雨蛙蓮(はちす)の花で雲見かな
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雑草(あらぐさ)を手折れば穂にぞ止りゐぬちひさき虫の未知の姿で
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千載に一遇ならむ政権の交代無にし民主カン敗
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秘めやかに葦の根本に虎の尾の白く咲きけり踏む者もなく
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国民は己に似合ふ政府しか持てぬと苦く誰ぞ言ひける
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家と屋の微妙なちがひこの国の政治に極む悲しからずや
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梅雨明けの近きを告げて朱に咲かむ姫檜扇の水仙の花
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玉虫の五色妖しく飛び来り幼き日々に吾を連れゆく
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はや里に下りて来るかアキアカネ梅雨明け近き見沼の里に
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虫取りの網にし代ふるカメラもて野にぞ遊ばむ老ひてふたたび
指先を回す代はりに顔隠しマクロレンズでトンボを狙ふ
われもまた蓼食ふ虫か野の蓼の花のみ愛でて茎は食はねど
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夕顔も待宵草もしのばれぬ紅の花持つ夕化粧の名に
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東京の十六傑で教へ子の球児が夏は燃え尽きにけり
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―<「熱中症」といふネーミングに違和感を覚えつつ>
「熱中」に濡れ衣着せて列島の猛暑酷暑に連日うだる
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逃げ場なき夏陽の猛く熱風の日陰に入れど吹きわたりけり
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珍らかな巨大な花の咲くといふニュースに吾も躍らされけり