冬の朝父の呼びたる大声の緬羊の仔の生れしを告げり
(生れ=あれ)
育める緬羊の毛を刈り上げて母編みくれし吾がセーターを
素人の父母刈りし緬羊の哀れな裸身に血のにじみをり
姉兄のお古のみ着る末つ子に母は編みくる白きセーターを
入学の記念写真にわれ独りまとひて写るセーターの白き
校庭に大穴あきてグラマンの駄賃の跡の残りてありぬ
*
陽だまりに野の花愛でて膝をつき春撮るひとの姿想へり
初めての街を歩きて古書店のあらば逃さぬ吾のありたり
今朝食みしものを忘れど判断の力の増さば老ゆるもよきか
(生れ=あれ)
育める緬羊の毛を刈り上げて母編みくれし吾がセーターを
素人の父母刈りし緬羊の哀れな裸身に血のにじみをり
姉兄のお古のみ着る末つ子に母は編みくる白きセーターを
入学の記念写真にわれ独りまとひて写るセーターの白き
校庭に大穴あきてグラマンの駄賃の跡の残りてありぬ
*
陽だまりに野の花愛でて膝をつき春撮るひとの姿想へり
初めての街を歩きて古書店のあらば逃さぬ吾のありたり
今朝食みしものを忘れど判断の力の増さば老ゆるもよきか