1月18日、クロアチア出身の驚異のチェロの革命児デュオ・2CELLOSの追加コンサートに、つれあいと2人で行ってきました。
渋谷公会堂なんてところで、いったいどんなことになるのかと、ワクワク楽しみにしていました。
2CELLOS - Welcome To The Jungle
結論から言うと、とても面白かったけれど深い感動はなかった、ということでした。
期待が大きかっただけ、ちょっと残念です。
理由はいくつかあります。オープニングにステファンとルカが交互にソロで、僕の最も愛するバッハの無伴奏チェロ組曲第1番のサラバンドとプレリュードを弾いたのはいいのですが、楽器がなんとエレキチェロ!
エレキチェロはサイレントチェロという商品名でヤマハなどが売っているそうですが、アンプにつなげば幾らでも大音量になります。
のっけからその大音量で、バッハを弾いたのです。それも、ジャズ風にアレンジしたわけでもなく、彼らが得意のロック風でもなく、本来のクラシックの演奏スタイルで。
ロストロポーヴィッチの最後の弟子だったというステファンとそれに近いキャリアを持つルカは、もちろん今でもチェロの演奏家としてバッハとその無伴奏チェロ組曲に大きな敬意を持っているのでしょう。
しかし、それをエレキチェロの大音量で弾く。
ちょうど1年前、youtubeで注目されて彗星のように登場した若い才能豊かな二人の現在を、これが端的に象徴しているように思います。
中途半端です。
バッハを本来のスタイルで演奏するなら、アコースティックチェロでなければ人の心を深く打つような演奏はできません。もちろん、バッハをエレキチェロの大音量で演奏してもいっこうにかまいません。
しかし、バッハの音楽の高みを失わないようにするためにはそれなりの相当のアレンジが必要です。クラシック音楽とチェロを若い人たちにも親しみやすいものにしたいというのが、2cellos結成の大きな動機だったと聞いています。せっかくの豊かな才能を持った二人だけに、人気爆発に任せて安易な道をたどってもらいたくありません。
初心忘るべからず。
とても面白かったけれど深い感動はなかったという最大の理由は、それです。
第2の理由は、渋谷公会堂の音響がよくなかったということでした。特に後半からは、同じクロアチア出身のドラムスも加わって強烈なロック調の演奏になり、彼らの超絶技巧とあいまって、若い聴衆は総立ちとなって楽しんでいたのですが(僕たち老人の聴衆も立ちました)、大音量になればなるほど音響の貧しさが目立ち、興をそがれました。
ステージの二人は、奢ったところもすれたところも見えない、とても感じのいい好青年でした。しかし、これだけ急にビッグネームになってしまえば、自分たちの意思を超えたさまざまな力と誘惑が日々若い彼らに近づいてくることは、容易に想像がつきます。
果たして、彼らが僕の期待するようなカザルスに次ぐ第2のチェロ革命遂行を全うできるのか、それとも初心を忘れ、エンターテインメントの世界での一時の寵児で終わってしまうのか。
残念ながら、今回のコンサートを聴く限り、後者の可能性のほうが大きいのではないかと心配になりました。