東京地下鉄の副都心線が6月14日に開通する。山手線の内側を池袋から渋谷を結ぶ路線である。山手線や埼京線の混雑緩和の意味もあるが、東武東上線と西武池袋線からの乗り入れと、2012年の東急東横線との乗り入れを通じて、池袋と渋谷が通過地点になってしまうのではないかとの懸念が報じられている。
しかし、そんな事はもっとずっと前から分かっていた事だ。地下鉄有楽町線は今までの地下鉄とは違い、同じ方向で二つの私鉄と相互乗り入れをしている。東武東上線と西武池袋線である。その内の東上線との乗り入れは早くに完成した。ところが、西武線との乗り入れがなかなか出来なかった。
有楽町線が北西へ延伸し、その途中から二手に分かれて、一方は東上線との接続を目指して北進し、もう片方は西武鉄道が西武有楽町線として建設した。東上線との乗り入れをする8・3キロはとっくに完成して相互直通運転が開始されているのに、西武線の1・2キロは完成しているが、残りの肝心の直通になる部分の1・4キロがなかなか出来ない。
性格の悪い私は考えた。西武線は地下鉄有楽町線との直通運転でも、ターミナル駅の池袋は通る。しかし直通路線に乗るのは、池袋を通過してその先に行く人である。となれば、途中駅になる池袋には降りない。池袋は西武鉄道のターミナルであり、そこには西武百貨店とパルコが存在している。その客が多分、減少する。
それで、西武鉄道は直通路線の完成を引き延ばしたのではないか、と私は疑ったのである。こうした邪推は全く根拠が無い訳でもない。東武と西武の有楽町線への乗り入れ計画は、当初は都営地下鉄三田線のはずだった、と読んだ記憶がある。都は同線を建設するに当たって、その軌道を両鉄道と同じ狭軌にした。都営地下鉄の既に開通している浅草線は、京浜急行線と京成線との乗り入れのために、広軌（新幹線と同じ。世界的には標準軌と呼ばれる）である。この浅草線と三田線は三田駅で接続する。そうであるからには同じ軌道の方が都合が良い。それでも、狭軌の私鉄と乗り入れをするために、狭軌にしたのである。
ところが、有楽町線の建設が決まったら、二社は乗り入れ先を変えた。有楽町線の方が儲かると踏んだのである。乗客の利便ではないはずだ。
ただ、このように邪推をすると、東武はなぜ同じターミナルの池袋（東武百貨店がある）通過を許したのか、と言う疑問にもなるのだが、東急にしても小田急にしても地下鉄との直通路線では、ターミナル通過は仕方が無いと思っているはずなのだ。
そして今度は有楽町線だけではなく、副都心線との直通で、新宿・渋谷に直通となる。偏見で言うのではないが、新宿に比べれば池袋は劣る。私は三十年間も池袋をターミナルとする東上線と西武線の両方の沿線に住んでいたから分かるが、多くの人にとって、池袋より新宿の方がずっと憧れの都心であった。
両線の乗客が、池袋ではなく、新宿に流れるのは確かだろう。
一方、東急は渋谷駅が地下5階に出来るので、高齢者の下車を鈍らせるのではと恐れている。しかも渋谷は若者の街のイメージが強過ぎるので、大人の客が新宿に行ってしまうのでは、とも考えている。
多分、それはあるだろう。渋谷は東急王国である。東横線と新玉川線のターミナルであり、京王帝都井の頭線のターミナルでもあるが、井の頭線は郊外からの客を運び込む路線ではない。それに比べて新宿は小田急線、京王線、西武新宿線のターミナルであり、ＪＲの中央線の中心駅でもある。集客力は新宿が渋谷を上回るはずである。
そこで、東急が渋谷を大人の駅にしようと立ち上がると言うのである。それを是非とも池袋でもして欲しい。一点集中はつまらない結果にしかならない。
東京は一点集中の弊害を一身に集めている観がある。東北新幹線も東京駅がターミナルになった。更には今度は在来線の東北本線や常磐線までもが東京駅がターミナルになるのだと言う。
一極集中なんて、何の面白みも無い。様々な個性が競い合ってこその都会ではないか。大阪では北と南しか盛り場が無いと言う。京都では一つ。昨日、どこどこで誰々と一緒だったね、などと言われてしまうと嘆いている。東京では、知人と出会う事などまずは絶対的とも言えるほどに無い。それが都会の良さでもある。それが誰もが新宿へ、となると、東京は田舎になる。誤解して頂きたくないが、大阪や京都が田舎だなどと言うのではない。 大阪も京都も十分に都会である。東京はうっかりすると田舎になる、と言うのである。もっとも、京都の人に言わせれば、東京は既に十分に田舎である。
同業の編集者が京都に仕事で行った。取材先で東京はどちらにお住まいで? と聞かれたので、板橋です、と答えた。すると、ほんまに東京らしい所にお住まいどすな、と言うので、いえいえ、板橋なんて田舎ですと謙遜すると（正直な弁でもあるが）、その人は何と言ったか。
そやから、東京らしい言うてますのや。
何とも怖いお人です。上の京都弁は私のうろ覚えで、正確ではありません。
しかし、そんな事はもっとずっと前から分かっていた事だ。地下鉄有楽町線は今までの地下鉄とは違い、同じ方向で二つの私鉄と相互乗り入れをしている。東武東上線と西武池袋線である。その内の東上線との乗り入れは早くに完成した。ところが、西武線との乗り入れがなかなか出来なかった。
有楽町線が北西へ延伸し、その途中から二手に分かれて、一方は東上線との接続を目指して北進し、もう片方は西武鉄道が西武有楽町線として建設した。東上線との乗り入れをする8・3キロはとっくに完成して相互直通運転が開始されているのに、西武線の1・2キロは完成しているが、残りの肝心の直通になる部分の1・4キロがなかなか出来ない。
性格の悪い私は考えた。西武線は地下鉄有楽町線との直通運転でも、ターミナル駅の池袋は通る。しかし直通路線に乗るのは、池袋を通過してその先に行く人である。となれば、途中駅になる池袋には降りない。池袋は西武鉄道のターミナルであり、そこには西武百貨店とパルコが存在している。その客が多分、減少する。
それで、西武鉄道は直通路線の完成を引き延ばしたのではないか、と私は疑ったのである。こうした邪推は全く根拠が無い訳でもない。東武と西武の有楽町線への乗り入れ計画は、当初は都営地下鉄三田線のはずだった、と読んだ記憶がある。都は同線を建設するに当たって、その軌道を両鉄道と同じ狭軌にした。都営地下鉄の既に開通している浅草線は、京浜急行線と京成線との乗り入れのために、広軌（新幹線と同じ。世界的には標準軌と呼ばれる）である。この浅草線と三田線は三田駅で接続する。そうであるからには同じ軌道の方が都合が良い。それでも、狭軌の私鉄と乗り入れをするために、狭軌にしたのである。
ところが、有楽町線の建設が決まったら、二社は乗り入れ先を変えた。有楽町線の方が儲かると踏んだのである。乗客の利便ではないはずだ。
ただ、このように邪推をすると、東武はなぜ同じターミナルの池袋（東武百貨店がある）通過を許したのか、と言う疑問にもなるのだが、東急にしても小田急にしても地下鉄との直通路線では、ターミナル通過は仕方が無いと思っているはずなのだ。
そして今度は有楽町線だけではなく、副都心線との直通で、新宿・渋谷に直通となる。偏見で言うのではないが、新宿に比べれば池袋は劣る。私は三十年間も池袋をターミナルとする東上線と西武線の両方の沿線に住んでいたから分かるが、多くの人にとって、池袋より新宿の方がずっと憧れの都心であった。
両線の乗客が、池袋ではなく、新宿に流れるのは確かだろう。
一方、東急は渋谷駅が地下5階に出来るので、高齢者の下車を鈍らせるのではと恐れている。しかも渋谷は若者の街のイメージが強過ぎるので、大人の客が新宿に行ってしまうのでは、とも考えている。
多分、それはあるだろう。渋谷は東急王国である。東横線と新玉川線のターミナルであり、京王帝都井の頭線のターミナルでもあるが、井の頭線は郊外からの客を運び込む路線ではない。それに比べて新宿は小田急線、京王線、西武新宿線のターミナルであり、ＪＲの中央線の中心駅でもある。集客力は新宿が渋谷を上回るはずである。
そこで、東急が渋谷を大人の駅にしようと立ち上がると言うのである。それを是非とも池袋でもして欲しい。一点集中はつまらない結果にしかならない。
東京は一点集中の弊害を一身に集めている観がある。東北新幹線も東京駅がターミナルになった。更には今度は在来線の東北本線や常磐線までもが東京駅がターミナルになるのだと言う。
一極集中なんて、何の面白みも無い。様々な個性が競い合ってこその都会ではないか。大阪では北と南しか盛り場が無いと言う。京都では一つ。昨日、どこどこで誰々と一緒だったね、などと言われてしまうと嘆いている。東京では、知人と出会う事などまずは絶対的とも言えるほどに無い。それが都会の良さでもある。それが誰もが新宿へ、となると、東京は田舎になる。誤解して頂きたくないが、大阪や京都が田舎だなどと言うのではない。 大阪も京都も十分に都会である。東京はうっかりすると田舎になる、と言うのである。もっとも、京都の人に言わせれば、東京は既に十分に田舎である。
同業の編集者が京都に仕事で行った。取材先で東京はどちらにお住まいで? と聞かれたので、板橋です、と答えた。すると、ほんまに東京らしい所にお住まいどすな、と言うので、いえいえ、板橋なんて田舎ですと謙遜すると（正直な弁でもあるが）、その人は何と言ったか。
そやから、東京らしい言うてますのや。
何とも怖いお人です。上の京都弁は私のうろ覚えで、正確ではありません。