夏木広介の日本語ワールド

駄目な日本語を斬る。いい加減な発言も斬る。文化、科学、芸能、政治、暮しと、目にした物は何でも。文句は過激なくらいがいい。

「旅客鉄道」を「JR」と呼ぶのは利益が目的

2008年02月29日 | Weblog
 JRって不思議な名前だと思いませんか? 正式名称は例えば「東日本旅客鉄道株式会社」。それが「JR東日本」になる。分割したのだから、各地域を印象付ける名前が付くのが当然。「名古屋鉄道」「近畿日本鉄道」「西日本鉄道」などの私鉄はそれそれの地域名を頭に付けている。それが「名鉄」「近鉄」「西鉄」の略称あるいは愛称になる。

 しかしJRは違う。「東日本旅客鉄道」なら「東鉄」に、「西日本旅客鉄道」なら「西鉄」、これはまずい、既に九州に私鉄の「西鉄」がある。だから、「東日本会社」「西日本会社」などで十分その目的は達せられる。
 あるいは、「北海道日本鉄道」「東日本鉄道」「東海日本鉄道」「西日本鉄道」(これは一考を要するが)「四国日本鉄道」「九州日本鉄道」などで良いではないか。「JR=Japan Railway 」なのだから「日本鉄道」を生かして当然である。
 でも何で英語の名前と日本語の名前が違うのだろうか。

 それが変則的とも言える「JR東日本」などの呼び方をしてくれと、当のJR側が言ったのである。この名称の目的は「JR」にある。「JR」で6つの旅客鉄道を総称する事によって、「JR=旧国鉄」だと言っているのである。分割したとは言っても、線路はどこまでも繋がっているのだから、どこへでも簡単に行けますよ、と宣伝している。

 このどこに分割の意義があると言うのか。単に利用者には不便になったに過ぎない。直通運行を皆無と言えるほどに無くしたのだから。
 実は分割はそれほどの目的ではないのだ。真の目的は民営化にある。「民営化=利益追求が自由自在」なのである。福知山線の脱線事故で、我々はJR西日本のあくなき利益追求の姿勢をはっきりと見た。しかしマスコミはそれを明らかには言わない。

 JR西日本が安全投資の決定権を、経営全般を統括する総合企画本部から、鉄道の運行に責任を負う鉄道本部に移すと発表したのは事故から何と一年以上も過ぎてからだ。全JR各社に、鉄道部門には安全投資の決定権が無いのだと言う事もその時に分かった。
 本当はマスコミはそうした事をもっと前から知っているべきなのだ。国鉄が分割民営化する事が決まった時から、そうした研究をしていてしかるべきである。それはマスコミだからこそ出来る。大きな資本力と人材を生かす事でそれが出来る。
 しかし、マスコミにそうした見識は全く無い。だから、「JRと呼んでくれ」との言い分に何の批判も無く唯々諾々と従った。はっきり言えば、「JR」と呼び続ける事によって、JR各社の利益追求方針を認めたのである。

 それにしても安全が投資の対象になっていたなんて、想像も付かない。安全は損得なく守らなければいけない事である。それが「安全投資」だと。誰も彼もが言葉をいい加減に扱っている。「安全投資」で驚かなくてはいけないはずだ。しかし新聞も全く驚いてなどいない。それはあたかも、そんな事、前から知ってましたよ、と言っているかのようだ。

 この「運行部門に安全に関する権限を委譲した」とのニュースは、朝日新聞で見る限りはわずか11字詰め35行、400字にも満たない小さな記事に過ぎない。
 けれども、この小さな記事にJR西日本のホンネも朝日新聞のホンネもはっきりと読み取れるのである。小さな記事だからと、うっかりと読み過ごしてはいけないのです。
 ホンネを見付けようと言う事と、このJRの話をこれから少し続けます。