夏木広介の日本語ワールド

駄目な日本語を斬る。いい加減な発言も斬る。文化、科学、芸能、政治、暮しと、目にした物は何でも。文句は過激なくらいがいい。

JR東海が消費期限偽装の駅弁を販売

2008年02月24日 | Weblog
 JR東海が売っていた子会社の弁当に消費期限を偽装した物があった。偽装は1年以上も前から行われていた。消費期限は製造から14時間以内と18時間以内で、それを最大5時間半延長していたのだと言う。14時間以内の5時間半は大きい。
 健康被害の報告は無いと言うが、これでは消費期限を決めている意味が無い。偽装の理由は、「弁当が売れる夕方などに出荷数を揃えるため、早めに製造した」である。
 まあ、理由など聞いても意味は無い。単にどんな汚い手を使っても儲けたいだけなのだ。偽装が判明してもそのまま当日の弁当は売り続けたと言うのだから、その執念の凄さが分かる。
 毎日新聞は2月23日にその記事を流し、建守猛社長は陳謝したと書いているが、同時に社長発言を次のように書いている。

 「法的には問題はないのではないか。健康上の実害もないと思う」

 偽装がなぜ法的に問題は無いのか。実害が無かったようだから、いいでしょう、と言うのなら、警察だって検察だって要らないよ。法的な規制はなぜあるのか、と言う基本的な事を全くわきまえていない。
 これは陳謝ではない。開き直っているのではないか。なぜ毎日新聞はこれを陳謝したと書くのか。多分、この発言の前に「申し訳ありませんでした」などと述べたのだろう。だが、続くこの発言で、それがまやかしに過ぎない事は明々白々である。
 そんな事も分からないような記者は記事を書くべきではない。

 しかしデスクはこの記事を通しているし、校閲も何の文句も言っていない。となると、常識では、これで通るらしい。私の常識とは相容れないが。
 同紙は同日の夕刊の「近事片々」と言う短いコラムでこの発言を批判し、「売り上げを伸ばすためにはウソもOKの社風のようだ。消費者の自衛には食材の産地表示なども疑う他にない」と書いている。ウソをついてどうして陳謝になると言うのか。

 これは子会社のやった事だが、親会社のJR東海は以前、JR西日本が福知山線の脱線事故でPRを自粛した時(PRを自粛すべきかどうかも大きな問題だが)、JR西日本に代わって、「のぞみ」の宣伝をして、JR西日本の管轄範囲の岡山方面の観光宣伝をした。
 朝日新聞は脳天気にこれをJR東海の他社宣伝と書いたが、他社宣伝と同時に同社の宣伝であるのは明白である。そして問題は、親戚が謝っているのに、私は関係がありませんよ、と代役を買って出る。これを「しゃしゃり出る」と言う。これでは謝っている事にはならない。そんな事も分からない会社なのである。

 俗に子供を見れば親が分かる、と言う。これは全くの真実の言葉である。

 ついでに、上に引用した記事で毎日は「他にない」と書いている。「他」は常用漢字表では「た」としか読めない。「ほか」は「外」である。これは小学校2年で習う。 同社も朝日も、市販している用字用語集で「他=ほか」を認めている。しかし共同通信社の『記者ハンドブック新聞用字用語集』では「他」は駄目だと書いてある。
 もっとも「外=ほか」の人気は非常に低く、だから同書も「なるべくかな書き」としている。
 この事も問題があるが、要は常用漢字に従ってつまらない事をしている新聞社が平気で常用漢字を無視していると言う事実である。そんなに無視が簡単に出来るなら、もっと重要なやるべき無視があるだろうに。

 「他=ほか」をつまらない事だと思うかも知れないが、他人の書いた原稿を校正する場合にはこれが大きな問題になる。常用漢字に従った表記をしている場合には「他」は「ほか」なら「外」か「ほか」にするしか無い。ところが、「た」のつもりなのか「ほか」のつもりなのかが、他人にはよく分からないのだ。