夏木広介の日本語ワールド

駄目な日本語を斬る。いい加減な発言も斬る。文化、科学、芸能、政治、暮しと、目にした物は何でも。文句は過激なくらいがいい。

消費者不在のDVDの規格争い

2008年02月17日 | Weblog
 またまた、時流に乗った話になるが、テーマは「消費者不在」とは何か、である。
 DVDの規格争いがブルーレイ(BD)の圧勝で決着が付いた。HDの東芝陣営のこだわりは、単にメーカーの面子に過ぎない。言い換えれば技術者の面子かも知れない。しかし技術者なら当然に優れた技術を目指す。技術的にどちらが優れているかは分かり易い。
 HDは従来のDVDの生産技術を利用出来るので、価格が安いのが売りだった。しかし価格なんてどうにでもなる。量産すれば安くなるのは当然の事。そんな安定性の無い事と技術とを計りにかけた。それは決して消費者を思っての事ではない。馬鹿な事をするなあ、と私はずっと思っていた。
 そして最初、売れるが勝ちと考えている様々な企業は、その価格に心を奪われ、真実を見る目を持たなかった。本当に、売れて自分達が儲けられればそれで良しとする企業が多過ぎる。

 マスコミは簡単にベータとVHSの規格争いと同じように見ているらしいが、私は違うと思う。
 両方式には格段の違いは無かった。ただ、私はベータの方が優れていると思っていた。当時、雑誌で最高と評価を付けたVHS機を買った。それと前から持っているベータを比較すると、画質はベータの方が良かった。使い勝手も良かった。
 長時間録画モードはベータは1.5倍の3時間なのに、VHSは3倍の6時間。その画質はまるで見られたものではなかった。その少し前、暮しの手帖が比較をした時、この3倍モードを標準モードとして取り上げた。私は同誌の見識を疑った。

 ベータの標準はベータ2である。長時間がベータ3。それではベータ1は何かと言うと、普通の2時間テープで1時間しか録画出来ないモードなのだ。つまり、普通の2倍の速度でテープが回るから、画質が良い。しかし普通のテレビではその画質の良さはあまり生きない。

 テープレコーダーの知識をお持ちの方なら分かるが、オープンリールのテープで19センチと38センチ(1秒間に動くテープの長さ)では38センチの方が圧倒的に音質が良い。それは誰にでも分かる。
 それと同じ事を当時のソニーはやっていた。私は今でもそのソニー機を持っている。さすがに録画はDVDでしているし、古いテープの再生もほとんどしていないが、捨てられない。

 ソニーが販売競争で負けたのは、実は質の問題ではなかった。CMでベータを買おうと思った客は、そのCMがどこの会社のものであっても、買うとなるとソニーになるのだ、と言う。ソニー以外は売れないのだと言う。そこでベータ陣営の他社はベータを見限った、と言う訳だ。一社だけでは到底勝ち目は無い。相手陣営には商売上手な当時の松下が居る。
 そしてもう一つ、海外では機械が単純なVHSでないと、保守サービスが出来なかったと聞く。高度な品質を複雑な機械が保証していたのだ。
 普通に考えても、同じ2時間テープで、ベータの方がずっと小さい。小さくて同等の画質が得られるのだとしたら、そちらの方がずっと機械は優秀である。

 こうした事はあまり言われない。だから知らない。単にVHSの方が優れていたからだ、と思っている人が圧倒的だろう。マスコミは、今回のDVDの規格争いがソニーの雪辱戦だと捉えているが、違う。たとえソニー自身がそう捉えていたとしても、それは表面的な事であって、その底には技術力への自信があるのだと思う。技術が結局は消費者のためになるとの見識がある。

 はっきり言って、HD陣営の頭の中には消費者は存在していなかった。マスコミは両者の争いを消費者不在と言うが、高くても良い品質の物が生き残ると考えたBD陣営には明らかに消費者の姿が見えていたと私は思う。