『仕掛け、壊し、奪い去る アメリカの論理』(原田武夫著)を読みました。副題は「マネーの時代を生きる君たちへ―原田武夫の東大講義録―」。へ~、東京大で、こんな講義をしてたんだ。
それにしても、刺激的なタイトルですね。
同書には、大統領でも軍でも、大企業やITベンチャーの社長でもなく、それらをも支配下に置く隠れた勢力が紹介されています。とくに「誰」とは特定できないが、権力を持つ人々のグループだから<奥の院>と称されています。アメリカ建国時にヨーロッパから渡ってきた人たちの子孫で、現代では、全寮制のボーディング・スクールで子女の教育をさせ、代々、伝統を受け継ぎ、資産運用で自分たちの富を肥やしてきたのだとか。
もちろん彼らは、額に汗して働きません。稼ぐ手段は、投資です。しかし、その金儲けは、世俗的な目的でなく、宗教的な意味合いが強いそうです。惜しげもなく大金を寄附したりするのも、そのためです。この辺り『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』を連想しました。
同書は、郵政改革を断行した小泉元首相を、日本人の資産をグローバルな金融自由主義に晒させた、日本のマネーが弱肉強食の世界に流れる回路を作った、と批判します。小泉元首相はアメリカの手先だ、というのです。
同書の出版は2007年。では、小泉氏がアメリカの手先なら「原発推進」のはずですが、2013年のいま、彼は即・原発廃止を訴え始めましたね。これは、どういうことでしょうか?
いま『黒金の志士たち』を読んでいます。幕末モノです。鉄製大砲で武装しないと、日本は列強の植民地にされてしまう。そういう危機感が、草莽の志士たちにはありました。
新自由主義というのは、領土こそ奪わないが、バーチャルマネーを奪い合う「植民地主義」なのかもしれません。
君子危うきに近寄らず。いたずらに資本経済に足を踏み入れず、実体経済の地に安住するのが得策と思います。鎖国よ再び、というわけには行かないのでしょうかね。