ソプラノ歌手 中川美和のブログ

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「フィガロの結婚」の話。

2009-12-11 22:20:05 | 歌のこと
ふーむ。
訳しても訳しても終わらない「フィガロの結婚」の訳。
終わる時がくるんだろうか・・・(遠い目)

今度やらせて頂くスザンナは、レチタティーボ(歌以外の台詞のようなところです)も含め、とにかく量が多い、という 都市伝説 話は、先生方からきいてはいましたが。

まさかこんなにあるとは・・・
訳しても訳しても、終わらない・・・

今年やらせて頂いた、『ドン・ジョバンニ』のヅェルリーナは、出番は量としては少なかったですねぇ。特にレチタティーボなんて、ほんとに少しだけでした。
ですが、その割にずいぶん出番の多い印象が強いのは、シリアスな中のコミカルなキャラクターだから、目立つ所をもらっているんですよね
いわゆる、おいしい役、ということだと思います。

だからやりがいはあるし、その少ない場の中でどのように印象を残すか、というとこが大事なんだと思いますが。
目立つ役どころで、出番が多かったら、他のキャラクターの存在が薄くなってしまいますし。
魔笛における、夜の女王なんて、典型ですよね。
たった2曲のアリアだけで、すべてをもっていってしまう・・・でも、その代り、それに全てがかかっている、だからこそやはり、大変な曲なんでしょうが。


ええ、話は「フィガロ」に戻りますが。
まだスザンナを一本演じた事がないのでわからないのですが、このオペラはとにかく、皆がさびしいような気がします。

観客として見ている分には、伯爵夫人がさびしいのは、わかっていたけれど、それ以外のキャラクターの悲しさやさびしさには、思いが至ってませんでした。

伯爵がスザンナに言い寄っている、と知った時のフィガロのショックはすごかったでしょうねえ。
もちろん、ものすごい怒りもあるでしょうが、そこにある感情は、決して怒りだけではないのではないかな、と思います。

伯爵に対して、おそらく身分を超えた友情を感じていただろうに。
貴族は所詮、貴族でしかないということを思い知らされて、裏切られて。
しかも、それだけではなく、スザンナも守ってあげなくてはいけない。怒りと悲しみに身を任せる暇もない。

一番幸せなのは、一番最初の重唱だけではないかな・・・

あと、特に気になるのがバジリオ。

この人、ほとんど出てこないし、アリアもカットされているけれど、とっても悲しいし、すっごく良い役ですね。だから、ダ・ポンテも彼のセリフを使って「コシ・ファン・トゥッテ」につないだのだろうし。
バジリオも、フィガロを見て思うところがあるんでしょうねえ。

バルバリーナも、いずれデスピーナのようになってしまうのかもしれないと、ドキドキしてしまいます。
あんな小さなアリアが、あまりに切々としていて、辛いというか、悲しすぎる。あれしか出番がないのが、勿体なくて仕方がない。


まあまだスザンナがほとんど見えてないので、何とも言えないですけれど・・・

モーツァルトの音楽は笑っているけど、どこかさびしい、というのを私の先生がおっしゃってましたが、本当にそうなんだなあ、と改めて思います。
しかも、そんなさびしさや哀しさに誰が一番なんてつけられない、それをなくすことはあり得ない、ただ愛だけでしか包みこめない、といってしまうのには、もう、ただただ、ため息ばかり。


ところで、バジリオはフォルカー・フォーゲルのが好きです・・・





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4 コメント

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Unknown (ハカちん)
2009-12-12 02:01:41
こんばんは。フィガロの結婚の第1幕を昨日聴きました。{スマイル}その前に筋書きを調べてみました。本来なら、そんなことをしなくてもオペラを観に行ってストーリーを理解して感想をもてれば素晴らしいことなんでしょうが。{パチパチ}
私みたいな素人は「スザンナの服を着て変装する」なんて活字を拾ってしまうとのこのこと出てきた伯爵が泡食っている姿を想像し単にお笑いっぽくまとめてしまいそうですが、そんなハズでは無くあの偉大なモーツァルトの作品ですよね。身分制度とか社会風刺とか奥深いものがあるはずですよね。{涙}
かなり前に「ベルサイユのばら」の池田理代子さんがフィガロの結婚(?)を津田ホールでやるからどうぞと誘われたことがあるんですが、座席券が手に入らなかったんですよ。池田さん自身も手持ちが無いということなので、諦めたことがあるんですけど残念でした。{爆弾}
今度こそフィガロの結婚を必ず観たいと思います。かなり奥深く難しい内容だと思いますが、当日はすばらしいスザンナを見せて頂けると期待しております。{ルンルン}
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Unknown (みわきち)
2009-12-12 22:59:10
貴族批判など、強烈にあるとは思いますが、モーツァルトと、ダ・ポンテが上手に隠しているから、なかなかはわからないですよね{汗}
私の先生も、未だに「あっ!?」と思う時があるよ~、とおっしゃってました。
むしろ、批判がすぐにそれと伝わってしまうものだったら、首が飛んでしまう時代でしたから、お笑いでうまく包んでまとめられるよう、2人が苦心したのだと思います。
ですから、聴き手の皆さんは普通に笑えれば、それで良いのだと思いますよ{ドキドキ}

尤も、私たち演奏家はわかっていなければいけないと思うのですが・・・日が暮れて道遠すぎです・・・{涙}

池田理代子さんですか!すごいですね!!
一度だけコンサートを拝見した事があるのですが、こういう言い方は失礼かもしれませんが、とても初々しく、お可愛らしい雰囲気で歌われていて {ラブ}、うわあ~・・・{ため息} と、思いました。
ああいう風に歌うのはどうしたらよいのでしょうね~?{汗}
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Unknown (ハカちん)
2009-12-13 01:25:33
池田さんのフィガロは確か二期会のメンバーさんで行われたと思います。たまたま私の知人がソプラノをやっておりましてプロのコーラスに参加して勉強(?)してます。それで私が誘われたわけですが、前の日に来ないかと言われても拝聴するのは無理ですね。{汗}池田さんの持ち分の券を頂けるようだったので期待したのですが。{涙}その分も無くなるのだから好評だったのでしょうね。{パチパチ}

明日はフィガロの結婚の第2幕を聴いてみようと思います。{ルンルン}やっぱり奥深いものがあるんですね。ちなみに当日は字幕はありますよね?{天使}
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Unknown (みわきち)
2009-12-15 12:00:30
字幕についてはすみません、わからないです~{ショック}
今回、裏の方にはあまり入っていないので、当日のことはまだ私自身よくわかっていないのですよ {汗}
ごめんなさい!!
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