ソプラノ歌手 中川美和のブログ

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新宿区民オペラ「オテッロ」

2009-09-13 22:18:47 | 歌のこと
昨日は、新宿区民オペラ「オテッロ」を観にいきましたー。

デズデーモナ役を演じた沼生沙織さんは、私と幼なじみ。

彼女は、沼尻竜典さん&トウキョウ・モーツァルトプレイヤーズの「ドン・ジョヴァンニ」にドンナ・エルヴィーラ役で出演したりと、目下売れっ子驀進中
私と同い年の若さで、あの人気のあるデズデーモナ役をやれるなんて、すごいわあ・・・
また、「オテッロ」はしょっちゅうかかる演目でもないですしねえ。

彼女、物語が佳境にいくにつれて盛り上がってきて、もうもう、最後の「柳の歌」は本っっっ当~に良かったあああ!!
声の響きもきれいで、演技もいじらしくて、本当に真っ白な感じで・・・

いやー泣いちゃった・・・

終演後に、デズデーモナの余韻でふらふらとしたまま、挨拶しようとロビーで待っていたら、廊下の向こうに白い衣装に長い髪、舞台姿そのままのさおり登場~

ああ、デズデーモナ・・・うっとり・・・

と、ぼーっとしつつ、ちょっと話をしたら、既にもうデズデーモナではなく、さおりでした

さおりちゃーん、ホントに良かったよ~ お疲れさま~!!


「オテッロ」は私がレパートリーにしているオペラではないので、ふだんはあまり観たりしないのですが、「オテッロ」と言えば、思い出すことがあります。

何年か前、ある大学で行われたオペラに関する公開講座で、音楽評論家の先生が講義をなさり、その講義の中でイタリアオペラの生演奏を、ということで、私はアリアを歌うためにスタンバイしていました。

「シェークスピアの『オセロ』もオペラになっています。もちろんこれは映画もたくさん出ています。オペラと映画、それぞれのクライマックスをちょっとだけ観てみましょうか」

と、先生がオペラの映像を映しだすと、

あら、ドミンゴ・・・

オペラのもう本当に最後、自分が誤解から殺してしまったデズデーモナに、
『キスを・・・もう一度だけ、キスを・・・』
と言って息絶えるオテッロ。

うう、さすがドミンゴ、素敵だわ~ と思っていたら、

「映画もちょっと観てみましょうか。アカデミー賞をとってる俳優、ローレンス・オリヴィエのオセロですね。同じシーンです。」
と先生。細かい事は覚えていないのですが、もう衝撃でした。

BGMも何もなく、ただオセロの言葉だけが聞こえてくる…オペラとは全く違い、自分が殺してしまったデズデーモナをひしと抱き続け、

『私の真珠、私の・・・』
と、愛の言葉をむせる様に吐き続けながら、自ら殺してしまったデズデーモナにキスを浴びせ続ける。
言葉では説明できない、オセロの感情があふれて、観ているこっちも涙がぼろぼろぼろぼろ、もう止まらない・・・

・・・私、これから歌うというのに・・・

・・・泣いた直後に歌うのは、そりゃもう大変でした・・・

公開講座の終了後、
「あんな映像を見せてくれたせいで、歌う前なのに泣いちゃったじゃないですか~!先生の馬鹿・・・
と恨み事を言ったら、
「あ、あれだけで泣いちゃったの?ドミンゴは良いもんねえ~・・・・・・え!?オリヴィエの方で泣いてたの!?」
と、笑われました。

どっちでも、良いもんは良いんだわい・・・





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