昨日、足元の上昇は買い持ち(ロング)を抱えたファンドの回転売買としたが、今週は日替わりメニューの買い手掛かりが連日現れ、上値追いに。
20日の上昇はトランプ政権の関税政策を巡る米国および世界経済の不透明感や地政学リスクなどを手がかりとした買いに加え、前日の連邦公開市場委員会(FOMC)後の見通しで年内2回の利下げが示唆されたことも買い手がかりとされた。
NY金は前日比2.60ドル高の3043.80ドルで終了し、8連騰ということに。終値ベースでは6営業日連続の過去最高値更新となる。ちなみに8連騰は2020年7月17日から29日の9営業日続伸以来のこと。
20日のNY金は上昇パターンに変化があった。NY時間外のアジア時間のスタート時から買いが先行し、昼過ぎには一時3065.20ドルまで買われ、3営業日連続でザラ場(取引時間中)の最高値を更新し日足の最高値となった。一般的には中国勢の買いということになる。買いが先行したのはアジア時間の未明に終了したFOMC後の記者会見にてパウエル米連邦準備理事会(FRB)議長が先行き見通しの不確実性についてたびたび言及したものの、先行きのインフレに過度の懸念を示さず、経済が鈍化した場合は行動する用意があると示唆したことによる。
実際に今回示されたFOMCメンバーによる経済見通しでは、昨年12月会合にて示した25年内2回の利下げ見通しに修正は見られなかった。一方でパウエル議長は、利下げを急がない方針も示した。トランプ政権の通商政策の影響は時差を置いて出るとみられ、引き続き状況を注視するスタンスを示した。
一方、買いが先行したアジア時間の流れは高値更新後に失速した。利益確定売りにアジア午後、ロンドンさらにNY早朝にかけて水準を切り上げながら相場は進行した。NY早朝には一時3032.80ドルまで売られこれが安値に。通常取引に向け買い直されたものの売り買い交錯状態で上値は重くなり、終盤まで3040ドル台での横ばいで推移し終了した。
昨日書いたが目先は「この上を誰が買う」という状況が続いている。
米経済の先行き不透明感がくすぶる中、今週に入りNY金の買い手掛かりとして浮上した地政学要因だが、中東情勢は再び混とんとした状況に陥りつつある。イスラエル軍はパレスチナ自治区ガザへの攻撃を再開しているが、イスラム組織ハマスも20日にイスラエルを攻撃し、1月に合意した停戦の継続が事実上崩壊している。ウクライナとロシアの停戦は交渉に前進がみられるものの、全面的な停戦で合意するメドは全く立っていない。
FRBの政策決定に関しては、FOMC開催日の19日夜、トランプ大統領は自身のSNSに関税政策が経済に浸透し始めるにあたり、「FRBが利下げする方がはるかによいだろう」と書き込んだ。今回は表現こそ直接的ではなかったものの利下げを求めるスタンスに変わりなし。「相互関税」を導入する予定の4月2日を「米国解放の日」とも投稿している。こういう表現が次々現れる劇場型政治。