先週末1月27日のNY金は1929.40ドルとなり、週間ベースで6週連続の上昇となった。
市場では一連の米経済指標の発表をその都度消化し、今後の金融政策の方向性を探る手掛かり材料を探ろうとする動きが続いている。ただし、6週連騰ではあるものの、先々週は6.50ドル、0.3%高、先週は1.20ドル、0.06%高と完全なもち合い相場となっている。1週間前の24日のタイトルを「過熱感なき高値追い」としたが、未だその状況にある。
米インフレのピークアウトを思わせる指標が続く中で、市場では利上げ打ち止め接近に対する思惑が高まる一方で、FRBはインフレ鎮静化の確証が得られるまで引き締め姿勢を堅持すると牽制してきた経緯がある。
NY金は前週まで2カ月半で300ドルほど水準を切り上げ、その後滞留状態にあるだけに、高値警戒感が根強く、上値の重い状態が続いている。
300ドル高に意外感を持つ向きが多いと思うが、金市場も(利上げは進むものの今なお続く)過剰流動(カネ余り)環境の中にあり、FRBの政策転換接近(利上げ局面の終盤)を映し(昨年秋以降)ドル高基調が転換した今や、この程度の上昇は不思議はないと思う。資金の矛先が少し向くだけで2000ドル突破もある環境といえる。
ドル安への転換を示すのはドル指数(DXY)の下落トレンドが続いていることだ。NY金とDXYとの逆相関性は、昨年春以降特に強まった。
その中で昨年9月末にDXYが20年ぶりの高値114ポイント台を記録し、11月上旬にかけて高止まりする中でNY金は新型コロナ禍前の水準(1630.90ドル、22年11月3日)まで売り崩された。
その後、DXYの反落に伴い上昇基調に乗り、ここまで水準を切り上げてきた。
歴史的な著名ファンド・マネジャー、ジョン・テンプルトンの言葉に倣えば、「悲観の中で生まれた相場」が、今は「懐疑の中で育つ」時間帯に位置していると思われる。1900ドル超は買われ過ぎという、疑い。
DXY弱含みの背景にあるのは、この指数の構成比率の高い(60%弱)ユーロの対ドルでの上昇がある。 先週23日のユーロは対ドルで一時1.0927ドルと、昨年4月以来の高値を更新。欧州中央銀行(ECB)の複数の当局者が、2月と3月の理事会でそれぞれ0.50%の利上げ実施を提唱。ラガルドECB総裁も、高すぎるインフレを抑制するために引き続き迅速に引き上げるとの認識を示したと伝わり買われた。
またここでも書いたと思うが、先週は25日に米S&Pグローバルが、1月の米総合購買担当者景気指数(PMI)速報値を発表。46.6となり、景気拡大と悪化の分かれ目となる50を7カ月連続で下回った。注目されたのは、米国指標低迷の一方でユーロ圏の総合PMIが予想外に改善したことだった。1月の速報値は50.2と前月の49.3から上昇し、好不況の分かれ目となる50を昨年6月以来初めて上回った。 利上げサイクルの終盤に差し掛かっているとみられるFRBに対し、強めの利上げを続けるECB。さらに予想外に回復を見せる欧州に対し、景気後退懸念が高まる米国。それを映すユーロドル相場の上昇が、DXY低下を通し、NY金をサポートする状況が続いている。
もちろん、ユーロ圏が盤石というわけではないことは、注意を要する。
いずれにしても、1日のFOMCのみならず2日のECB政策理事会も要注目ということになる。