亀井幸一郎の「金がわかれば世界が見える」

マクロな要因が影響を及ぼす金(ゴールド)と金融の世界を毎日ウォッチする男が日常から市場動向まで思うところを書き綴ります。

金とプラチナ、直近の価格逆転はスイスフラン・ショック以降のこと(特性の違いが価格差に反映)

2016年01月27日 10時05分56秒 | 金市場

昨夜の更新で最後のパラグラフが書き起こしたワードファイルから転載されておりませんでした。その部分を加えた上で、タイトルも加えました。

偏西風の“大きな”蛇行が、寒気団を南国に運んだらしい。奄美大島や沖縄本島や久米島でも雪がちらついたという。また台湾でも寒気の流入で亡くなった人も多いと。異常気象と割れて久しいが、今回の寒気はついにここまで来たかという感じだ。印象的には地球温暖化に逆行するものだが、これ自体も温暖化がもたらしたものなのだろう。

話題はかわってこのところ金とプラチナの価格逆転現象について問われることが増えている。もっともプラチナというより日本的には「白金」と呼ぶ人の方が多いようだ。いずれにしても国内の感覚では「白金」のほうが「金」より貴重なものであって、プラチナが金より安いというのは、いわば異常気象であって、おかしいという見方が多い。価格面で長ら金<プラチナという状況が続いて来たし、これは日本独自のことではなく国際価格がそうだったのだから国際的にもそういう認識だったということか。

市場規模は金の20分の1ほどなので、確かに比較上希少性はある。この5年ほどの間に金価格がプラチナを上回ったのは2011年8月にユーロ圏でソブリン・リスクが高まりスペインやイタリアすら危ういという市場環境の下で、S&P社が米国債の格下げを発表した時だった。この時は金が1900ドル突破まで一気に駆け上がり、プラチナを一気に抜き去った。もっともプラチナも1900ドルを突破したものの、その後は値を消すのも早く、一方の金はしばらく1600~1800ドルで滞留したことから価格差が180ドル程度まで広がるということがあった。

この関係が変わったのは、2013年4月に金が大きく売られた時だった。2営業日で金が200ドルもの暴落状態となった際に、プラチナも売られたものの価格面で金を上回ることになった。

次に「金>プラチナ」の動きが出始めたのが、2014年夏以降のドル高傾向が鮮明になる中での原油安に象徴されるコモディティ下落トレンドの中でのことだった。10月に金、プラチナともに1200ドル台で並ぶものの逆転現象は見られず、その後11月には少し差が開き、12月に再び接近。この頃はOPEC総会にてサウジがスィングプロデューサー(生産調整役≒価格調整役)の役割を降りたことから原油の下げが加速していたタイミングだった。

そのまま2015年1月に入り、同水準ながらやや(数ドル程度)プラチナが金を上回る関係が続いた後に、あるイベントをきっかけに逆転現象が起こり、その後金がプラチナとの値差を開くことになる。そのイベントとは、2015年1月15日の日本時間の夕刻に発生した「スイスフラン・ショック」だった。

結局、金融的側面を有する金と希薄なプラチナの特性が価格を分け、その後プラチナの方は原油安に象徴されるコモディティ全般の下落トレンドに巻き込まれる形になっているわけだ。金も影響は受けてはいるものの、中国人民銀行やロシア中銀の買いなどもあり、一定の価格は維持することに。この中銀の買いは、プラチナ他の貴金属にはない部分。

年始からの金融市場の波乱局面で金とプラチナの価格差がさらに開いたのは、産業用メタルであるプラチナと金融的側面を持つ金の特性を考えると、ごく自然な流れと捉えている。


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