亀井幸一郎の「金がわかれば世界が見える」

マクロな要因が影響を及ぼす金(ゴールド)と金融の世界を毎日ウォッチする男が日常から市場動向まで思うところを書き綴ります。

NY金、米PPIと地政学要因で1790ドル

2022年11月16日 20時27分11秒 | 金市場

11月15日のNY金は上下に不安定な値動きとなった。

通常取引は前日比ほぼ横ばいの1776.8ドルで取引を終えたが、午前に一山あった。 朝方発表された10月の米生産者物価指数(PPI)が、前週発表の10月の米消費者物価指数(CPI)に続き市場予想ほど上昇しなかったことから、インフレのピークアウト観測が広がった。米連邦準備理事会(FRB)が利上げペースを緩めるとの見方を一段と強め、米長期金利の低下とともに、ドルが主要通貨に対し弱含みに推移する中で、金は一時1791.80ドルまで買われた。

ただし、このところ1週間で100ドル以上水準を切り上げたこともあり、利益確定売りも出やすく、切り上げた水準を維持できず前日終値近辺に押し戻されることに。終盤は、1770ドル台半ばでこう着した。

 

第2波は日本時間の今朝話題になったポーランド領内へのロシア製ミサイルの着弾だった。

大西洋条約機構(NATO)加盟国であるポーランド領内に着弾し、死者が出たということで、市場は色めいた。流れミサイル?であってもロシアが発射したものであれば、集団的自衛権を定めたNATOゆえに、ロシア対NATO軍の戦いが始まる可能性が出ることになる。もちろん双方ともに望んでいないとみられ、冷静な対応が進められたようだ。

この日、ロシアはウクライナの主要な約10都市に対し大規模なミサイル攻撃を仕掛けており、大方の見方は、その中のものがポーランド領内に着弾したというものだったろう。現時点でも調査中のようだが、ウクライナ側の(ロシア製)迎撃ミサイルが、ポーランド領内に飛び込んだということで、幕を下ろすような展開となっている。この辺りは様々な憶測を挟むことができるので、この後、いろいろ分析記事やら憶測記事やらが、飛び回ることになりそうだ。ウクライナ支援疲れが広がっているタイミングでもある。

ちょうどこのニュースが報じられたときは、NYコメックスは時間外取引の時間帯に入っていた。1770ドル台に押し戻されていたNY金だったが、まさにPPI発表直後と同じような軌道で1790ドルに急接近し、間もなく値を消すことになった。ただ、落ちた値位置は1780ドル台で時間外取引は1781.90ドルで終了ということに。

朝方は、発表された10月PPIの結果を受け、ドルが対ドルを中心に売られドル指数(DXY)が急落し 一時は105.34ポイントと8月12日以来の低水準に落ちたのが、金市場ではファンドのショートカバー(空売りの買戻し)を促した。ただしミサイル報道では場所が欧州でありユーロが売られ、DXYは106ポイント台まで戻したことから、以後のファンドの動きは限られたとみられる。

偶発的な事故や攻撃をきっかけに、大きな戦争が勃発したのは歴史が教えるところではある。しかし、通信手段が格段に発展し情報収集に時間を要せず、相手側の意思も確認できることから、大事には至らないと思われるものの、予断を許さぬ時代に入っているのも事実で、この先もこの類のことは起きそうだ。 今夜はユーロが強含んでおり、DXYは再び106を割れ、NY金は1780ドル台で推移中となっている。

 

なお、明日のオンライン・セミナーに申し込みいただいている方は、本日17時以降、明日使用のレジュメ(資料)のダウンロードが可能になっています。ダウンロード有効期限は11月24日までになります。

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