信濃路は今の墾(は)り道刈りばねに
足踏ましむな沓(くつ)はけ我が背
=巻14-3399 作者未詳=
信濃路は今切り開いたばかりの道。切り株に足を踏みつけなさいますな、沓をおはきなさい、あなた。という意味。
神坂峠は、木曽山脈恵那山を越える峠道で、続日本紀に、「大宝二年、始メテ岐蘇山道ヲ開ク」、「和銅六年(702)、美濃、信濃二国ノ堺、径道険隘ニシテ往還艱難ナリ。仍テ吉蘇路ヲ通ス」とある。「今の墾道」とはこの木曽道のことであろう。
若い妻が旅に出る夫を気遣って詠んだ歌。沓は正式には革製で、ふつうは布や藁(わら)、木などで作ったが、一般庶民の多くは素足だったようだ。
神坂神社は神坂峠の直下にあり、南アルプスの赤石岳(3120㍍)、聖岳(2982㍍)を望む険しい山岳路に位置する。当時は険しい道を越えて、つらい旅を強いられる時代であった。
中央高速道路が中央アルプスを貫き開通し、この工事の際に温泉が湧き出して、「昼神温泉郷」として誕生した。神坂神社へはこの温泉宿から車で楽に行くことが出来る。万葉当時と比べて隔世の感である。
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