飛鳥への旅

飛鳥万葉を軸に、
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万葉アルバム(中部):高岡、桃の花

2009年02月01日 | 万葉アルバム(中部)

春の苑(その)紅にほふ桃の花
下照る道に出で立つ少女(をとめ)
   =巻19-4139 大伴家持=


春の園は紅色に照り輝いている。その桃の花の木陰までも輝いている道に、つと立っている少女の、なんと美しいこと!、という意味。

この歌は「にほふ」が効果的で、「にほふ」は”みずみずしい盛り”を暗示している。桃の花のみずみずしさと、少女の初々しさの両方にかけている。


題詞に、天平勝宝2年3月1日の夕暮れに、春の庭の桃と李の花を眺めて作った歌とある。
少女は、前年に越中に下向してきた家持の妻・坂上大嬢(さかのうへのおほいらつめ)を指しているようだ。それまで四年近く越中国府(現在の高岡)として単身赴任であったが、
やっと正妻が来た嬉しさをすなおに読んだ歌である。

家持は越中に来てからの四年間、寂しさや辛さをバネにしたおかげで、すばらしい万葉歌を多く作った。
高岡の万葉山光暁寺に、この歌碑が立っている。

逆境なくしては、名歌が生れなかったという、まさに人生のお手本であろう。




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