足柄の 御坂(みさか)に立して 袖振らば
家なる妹は 清(さや)に見もかも
=巻20-4423 防人の歌=
足柄の御坂に立って袖を振ったなら、家に居る妻ははっきりと見るだろうか。 という意味。
普通なら見えるはずはないのだが、足柄の御坂は特別の場所だから家に居る妻が見えるかもしれない、と神だのみしているのだろう。
ここ足柄峠は、奈良・平安の時代には東国と西国とを結ぶ官道(足柄道)であり、東海道の交通の要所でもあった。当時、東国から西日本の防備のために赴いた防人が、足柄山や足柄地方を詠んだ歌が万葉集の中に多いことでも知られている。
峠付近には足柄山聖天堂(しょうでんどう)や、茶屋がある。黒澤明の映画『乱』で使われた門が関所として置かれているる。
足柄峠の近くの足柄万葉公園に、万葉歌碑が7基ある。
この万葉歌碑はこの7基のなかのひとつである。