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世界から人権改善を指摘された日本の「回答」

2023年09月28日 | 生活

「日本が改善すべき点は300」

       現代ビジネス2023.09.28

 

 9月28日は「国際セーフアボーションデー」。

「セーフアボーション」とは、安全な中絶のことだ。世界中の女性たちが、安全な中絶を選ぶ権利を行動を起こす日として定められている。9月26日が「世界避妊デー」であることと合わせて、SRHR(Sexual and Reproductive Health and Rights:性と生殖に関する健康と権利)について考える週間として、緊急避妊薬をはじめとした避妊、中絶薬の解禁などを求めるイベントなども開かれている。

 9月26日に緊急避妊薬のOTC化が進まない日本の現状と未来への展望について、アクティビストの福田和子さんが『世界90カ国で「緊急避妊薬を薬局で」買えるのに、日本では許されないのはなぜか』という記事を寄稿した。福田さんは、SRHR先進国ともえるスウェーデンに留学し、そこで欧米には当たり前にある多様で安全な避妊選択が日本にない現実を知り、「#なんでないの」を立ち上げ話題を集めた。その後、ルワンダへの健康支援やSRHRの国際会議などにも参加し、今年『Forbes30under30 2023(Forbersが選ぶ、世界を変える30歳未満 2023)』にも 選出された。

 そんな福田さんは、今年3月に国連人権理事会で、指摘された世界の現状を避妊や中絶、性教育に関する「日本が改善すべき300の項目」について記事にした。今回はその続報が7月に更新。日本政府が改善案に回答を示したのだ。国際セーフアボーションデーの今日改めて、世界が指摘する日本のSRHRの課題について、福田さんが整理をしてお伝えする。

国連が指摘の「日本が改善すべき点は300」の回答は?

 今年2023年3月、私は、『日本が改善すべき点は300」世界から日本が「人権状況改善」を指摘された理由』という記事を書いた。それから、あっという間に半年が経った。

 300というのは、国連人権理事会における「UPR(普遍的・定期的検査 / The Universal Periodic Review)」で日本に対して出された勧告の数だ。もう少し詳しく説明すると、UPRとは、国連加盟国の人権状況改善を支援する機能のひとつだ。すべての国連加盟国は、約4年半のサイクルで、国連機関や加盟国により審査され、きちんと人権が尊重される社会が保たれているか公平に見守るために、人権状況改善のための勧告を受ける。審査基準は、国連憲章、世界人権宣言などで、これには日本も同意している国際的に認められた人権条約だ。その4年半に1度の機会が、今年日本に巡ってきたのだ。

 2023年1月31日に、ジュネーブの国連本部で115の国連加盟国から、様々な国が人権状況について勧告を受けた。その日本に対する総数が300で、これは日本への勧告としては過去最高だったのである。

 その内容は、女性、性的マイノリティ、障がい者、子ども、先住民、移民、無国籍者等、様々な属性を持つ人に対するあらゆる差別の禁止や、死刑制度、核や原発をめぐる問題、人権に対する理解の促進と国内人権機関の設置要求など、勧告の内容は多岐に渡る。今回は中でも、私が大学院時代から取り組んでいる「性と生殖に関する健康と権利(SRHR)」に関して、はじめて勧告される内容も多かった。

 このUPRのすごいところは、日本政府が各勧告に関して必ず、Accept(日本語では「受け入れる」といったニュアンス)やNoted(日本語では「確認する」といったニュアンス), Not Accept (「受け入れない」)等で、回答(採択)することになる。Acceptと回答したものに関しては、改善義務も生じるのだ。そんな1月末に出された勧告に対して、日本政府による回答が、7月に発表された。

 今日は、その回答にも大きく関係する「国際セーフアボーションデー」。日本政府が国連理事会において、包括的性教育や避妊、中絶へのアクセス、性的マイノリティの権利などに関してどのような姿勢を表明したのか、確認していきたいと思う。

包括的性教育:Not Accept (受け入れない)

 子どもたちにとって重要な、自分の心、からだ、人生を守るために欠かせない性教育については、各国から以下のような勧告が出ていた。

 ◆「国の教育カリキュラムを見直し、教師があらゆる年齢の生徒に適した科学的根拠に基づく包括的なセクシュアリティ教育を行うようにする」(コスタリカ)

   ◆「国際基準に沿って、学校内外で包括的性教育を実施する」(アイスランド)

包括的性教育というといわゆる「性教育」で連想されがちな性感染症や望まない妊娠の予防、からだの発達といったことだけと思われがちだが、実際には違う、対等な人間関係の築き方や人権、ジェンダー・セクシュアリティ、性的同意など幅広い内容を年齢や発達段階に合わせて繰り返し学ぶものだ。ユネスコをはじめとする国連機関等による『国際セクシュアリティ教育ガイダンス』の発行もあり、国際的にも一般的になりつつある。

 一方日本では、2000年代、性教育をしたことで教員が処分を受ける「七生養護事件」等が起きたり、これまで学べていた避妊や性器の正しい名前、受精・妊娠に至る過程が、学習指導要領内の「はどめ規定」によって教えにくくなったりした。それにより、性教育がずっと下火であり続けてきた現状がある。そのような背景を踏まえての勧告であったが、日本政府は以下のように回答した。

 「日本では生徒の発達段階に応じて様々な視点からの性教育がすでに学習指導要領に沿って提供されている。一般用語としての包括的性教育およびUNESCOガイドラインで提唱されている包括的性教育について、日本政府はいずれも受け入れない」

避妊: Accept(受け入れる)

緊急避妊薬のパブリックコメントの調査では大多数が賛成をしているのに現状は変わっていない。

 日本では、避妊へのアクセスも十分ではない。

そもそも、日本ではWHO(世界保健機関)の必須医薬品リストにも掲載されているのに、承認されていない避妊法が数多くある。日本で承認されている避妊もすべて自費診療で高額になりがちだ。結果として、低用量ピルの普及すら他国に比べて、信じられないほど低い現状がある。また、世界90ヵ国以上で薬局で、処方箋の必要なく入手できる緊急避妊薬も、日本では処方箋がないと手に入らない。そのような状況から、オランダから以下の勧告が出た。

 ◆「生殖年齢にある女性が、質の高い最新の避妊薬を、政府の補助金によって入手しやすく、手頃な価格で購入できるようにし、緊急避妊薬を医師の処方箋なしに薬局で購入できるようにする取り組みを加速させる」(オランダ)

 この勧告に日本政府はなんと「受け入れる」と表明した。これはつまり、推進のための責任が伴う。数少ない「受け入れる」判断が出たことを、とても嬉しく思う。

 とはいえ、現状、緊急避妊薬の薬局販売については、夏から試験的運用が開始されるはずだったが未だ開始されていない。始まったとしても、「設置数については購入希望者が性交後3日以内に緊急避妊薬にアクセス可能」な程度で、約6万件存在する薬局のうち、52~335程度、すなわち全体の約0.08~0.5%程度でしか実施されないようだ。予算計上を見る限り、試験的運用は来年度も続く。

 これから本当に取り組みがどのように「加速」されていくのか、注視していきたい。

中絶: Not Accept(受け入れない) /一部受け入れる

本人が中絶を望むのではれば、安全に中絶にアクセスできる権利はある。それが欧米では主流になってきている。

 中絶に関しても、複数の勧告が出た。

日本において中絶は、1907年から今も、刑法堕胎罪で違法だ。しかし、母体保護法によって、条件を満たせば合法的に中絶にアクセスできることになっている。

 しかしこの「条件」が厄介で、特に中絶を受ける際に必要と定められている「配偶者同意」は、長年、中絶を必要とする人たちを苦しめてきた。この法律によって、相手が逃げた、DV男だった、といった理由で中絶の同意がもらえない女性たちは、どうしたらいいか悩みながら、中絶可能な期間を過ぎてしまうケースも起きている。しかも、中絶のために配偶者の同意を求める国は世界で日本を含めてたった11ヵ国しかないのだ。

 世界各国はそんな日本の中絶について、堕胎罪の廃止や母体保護法の見直し、配偶者要件の撤廃を求め日本に勧告を出した。それに対して日本政府は、「 Not Accept(受け入れない)」「Partially accept(一部受け入れる)」との姿勢を見せている。

 残念だったのが、中絶に関して、「個々の倫理観、道徳観に深く関わるイシューとして認識している」として、中絶を妊娠した本人の自己決定や権利の文脈では一切捉えられていない点だ。現在世界で主流になりつつある、SRHRの観点でいえば、他者や社会がどう思おうと、本人が中絶を望むのであれば、安全な中絶にアクセスがあって然るべきではないだろうか。

性的マイノリティの権利:Not Accept (受け入れない)

 性的マイノリティの権利については、非常に多くの国から勧告が出た。同性婚や差別禁止など、その内容は多岐に渡ったが、私が特に気になったのが、以下の勧告と、政府の対応だ。

◆「トランスジェンダーの人々の法的性別変更プロセスにおける強制的不妊手術を撤廃する」(アイスランド)

 これに対し政府は以下のように答えた。

「Not Accept (受け入れない):この勧告で言及されている要件を撤廃するには、慎重な検討が必要であると考える」

 日本では、性同一性障害特例法によって、トランスジェンダーの人が戸籍上の性別を変更する際には、生殖能力をなくす手術が求められている。

 これに関して現在最高裁は、この規定が憲法に違反するかを審理中で、年内にはその判決が出る予定だ。WHOなどは「特定の人々において、断種手術などのうち本人の同意に基づかない医療処置は、生殖に関する権利、差別されない権利などの人権を害する」としており、日本国内でも当事者・支援者らが手術要件の撤廃に向け声を上げている。今後「手術要件」にどのような判決が下るのか、注目だ。

国際社会に対して日本はどう答えを出していくのか

G7広島では、福田和子さんもオフィシャルエンゲージメントグループW7(Women7)の共同代表として、広島入りした。

 日本は今年、比較的国際社会の目に晒された1年であったと思う。国連人権理事会の「ビジネスと人権」作業部会による​ジャニーズ氏の性加害に関する調査に、G7広島サミットもあった。

 私は、今年のG7広島サミットにおいて、G7リーダーにジェンダー平等に関する提言を提出するオフィシャルエンゲージメントグループW7(Women7)の共同代表として、その行く末を見守ってきた。

 そんな中、今年のG7首脳コミュニケ(公式声明)には、以下のような文章が書き込まれていた。

 「特に脆弱な状況にある妊産婦、新生児、乳幼児及び青少年を含む全ての人の包括的な性と生殖に関する健康と権利(SRHR)を更に推進することにコミットする」

として、以下の事柄を具体的に挙げた。

 「我々は、特に危機的な状況下で女性及び女児の権利が後退することに強い懸念を表明し、世界中の女性及び女児並びにLGBTQIA+の人々の人権と基本的自由に対するあらゆる侵害を強く非難する。

我々はさらに、SRHRがジェンダー平等並びに女性及び女児のエンパワーメントにおいて、また、性的指向及び性自認を含む多様性を支援する上で果たす、不可欠かつ変革的な役割を認識する。

我々は、安全で合法な中絶と中絶後のケアへのアクセスへの対応によるものを含む、全ての人の包括的なSRHRを達成することへの完全なコミットメントを再確認する。国内外において、ジェンダー平等及びあらゆる多様性をもつ女性及び女児の権利を擁護し、前進させ、守ることにコミットし、この分野における苦労して勝ち取った進展を損ない、覆そうとする試みを阻止するために協働する」

 日本政府は、G7開催国として、この文章の作成においてもリードを取り、世界と約束を交わしたはずだ。

 今回の勧告に対して、2年後の中間報告では確実な進展を、4年半後の第5回目となるUPR審査では確実な前向きな変化を見られるように、政府には努力してほしいし、私も市民社会に生きる一人として、引き続きウォッチしていきたい。

 国際セーフアボーションデー、自分のからだについて自分で決められない苦しみを、ひとりでも多くのひとが想像し、寄り添う、そんな一日であってほしいと心から願っている。

福田 和子( #なんでないの プロジェクト代表 SRHRActivist )


 



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