連載「ぶらり不登校」
AERAdot 石井志昂2021.7.20
1年以上に及ぶコロナ禍で「不登校が増えた」と言われています。正確な結果は、今秋の文科省調査を待つしかありませんが、不登校新聞編集長の石井志昂さんは、フリースクールや相談機関の職員から「不登校の相談件数が多い」という話を聞くそうです。実はコロナ禍の前から、小学生の不登校は近年急増していました。石井さんが、その背景を説明します。
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コロナ禍の不登校について私が直接、取材したケースでは下記のような声が聞かれました。
「昨年の休校明け以降、なかよしだった2人から急に嫌な行動をされ始めたんです。無視や陰口などがくり返されて、内容もだんだんひどくなりました」(中1女性)
「休校明けから遅刻が多くなり、7月からは登校しようとすると『おなかが痛い』と動けなくなりました」(小3の娘の母親)
あまりにも長いコロナ禍による閉塞感や無力感は、大人同様に子どもも感じており、その影響は、不登校というかたちでも出ているようなのです。
こうした状況のなかで私が心配しているのが「小学生の不登校」です。あまり報道されていませんが、小学生の不登校は過去5年間で倍増しています。文科省調査(※)によれば、2014年度の小学生の不登校児童数は2万5864人。5年後の2019年度には5万3350人に倍増し、過去最多を更新しました。過去の推移を詳しく見ると、子どもの数は減る一方で、不登校の数は右肩上がり。変化が起きているのがよくわかります。
急増の背景のひとつには「いじめの低年齢化」が指摘されています。文科省の調査によれば、いじめが最も多い学年は「小学校2年生」です。さらに言えば、小1から小3までが学年別のトップ3を占めており、統計上、いじめの低年齢化は顕著です。取材した子どもからも、小学校の低学年から集団での仲間外れや陰口が「苦痛だった」という話を聞きました。
一方、小学校の不登校で切実な課題といえば「受け皿の少なさ」です。ひとり親家庭の場合などは、子どものめんどうを見る人も少なく、「不登校によって途方に暮れた」「どうすることもできずに悩んだ」という話を保護者から聞いてきました。
不登校の「受け皿」として有名なフリースクールも全国で500か所程度しかありません。文科省の調査では、岩手県や高知県には、フリースクールが県内に1団体しかありません(2015年段階)。県内に1つだけとなると「家から遠いため現実的には通えない」という家庭もあります。また公的なフリースクールとも言える「教育支援センター」は、主な対象が中学生のため、小学生の不登校の受け入れを断るケースもあります。
受け皿が少なければ自然と家にいる子も増えます。しかし、「わが子がどこへも行けない」という状況に親が焦ってしまい、子どもを追い詰めてしまうことも、よく聞く話です。そして周囲から追い詰められれば、小学生の子もひきこもって苦しみます。小学校4年生の際に「ひきこもっていた」という14歳の女性から当時の気持ちを聞いたことがあります。
「学校へ行けないときは、まったく動けませんでした。カーテンを閉めたまま、昼も夜も寝っぱなし。布団のうえだけですごしている時期もありました。その前から学校へ行くと体調が悪くなる、夜中には咳が止まらないという状況だったんですが、運動会を機に本格的に動けなくなりました。それが小学校4年生の10月ごろです。(中略)当時、思っていたのは『学校に行かなきゃ』という類の悩みではありません。自分が生きていていいのかがわからない、もう誰かに殺してほしい、と。そう思っていたんです。そういう衝動に駆られているなかで『今日はこのテレビがあるから生きていよう』とか、一日一日、生きる意味を見つけていました」(14歳・女性)。
小4当時の彼女は、とても危険な領域にいたなと感じました。話してくれた内容が、自殺未遂をくり返して病院に搬送された人の話しと近かったからです。このように彼女が追い詰められたのは、学校での人間関係に疲れたこと、高圧的な先生や学校に耐えられなかったことなどが理由だったようです。
人間関係に苦しむことも、高圧的な学校で苦しむことも残念ながら避けられないことかもしれません。しかし、これほど追い詰められる前に、早めに学校から離れられるのが正解だと私は思っています。学校は命がけで通うところではありません。早めに学校から離れるためには、不登校への理解や対策が必要です。一例をあげれば、学校へ通っているときから、学校が合わなかった場合の具体的な選択肢を親が調べていたり、いじめで苦しんだ場合の対応を親子で話し合えていたりすることは有効でしょう。
また親の方や先生がこの記事を読んでいたら、お願いしたいことがあります。小学生の不登校で周囲が心配するのは「将来」です。数日間、学校を休んでも、将来には大きな影響を及ぼさないでしょう。それでも学校を休むことを周囲が心配するのは、「一度休めば、この先もずっと続くのでは」と不安に思うからです。
小学生の子を持つ30代の母親は「不登校なんて許したら後戻りができなくなる」とも語ってくれました。しかし「将来」よりも「今」を心配してほしいと思っています。子どもが今、苦しんでいることに目を向けて、幸せになるためには、どうすべきかを考えてほしいのです。小学生の際に不登校になっても、会社員や公務員になった人もたくさんいます。将来を見据えるあまりに「今」を犠牲にしないよう、重ねてお願いいたします。
一方、小学生の不登校は各家庭の対応だけではカバーできません。国による不登校の受け皿の整備や支援は急務です。少なくとも公的な機関である教育支援センターが「小学生の不登校は対象ではない」と断るのは変えていただきたいと思っています。(文/石井志昂)
※「令和元年度児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果」より
■石井志昂(いしい・しこう)/1982年、東京都町田市出身。中学校受験を機に学校生活があわなくなり、教員や校則、いじめなどを理由に中学2年生から不登校。同年、フリースクール「東京シューレ」へ入会。19歳からNPO法人全国不登校新聞社が発行する『不登校新聞』のスタッフとなり、2006年から編集長。これまで、不登校の子どもや若者、識者など400人以上に取材してきた。
暑いので今朝は5時にハウス入りです。
10時に脱出です。
ズッキーニが次から次へと成ります。雨がないので葉が萎れています。
紫陽花も花が縮れ可愛そうです。
今日咲いた花、ヤブカンゾウ。