里の家ファーム

無農薬・無化学肥料・不耕起の甘いミニトマトがメインです。
園地を開放しております。
自然の中に身を置いてみませんか?

国立大交付金 学問は「長い目」で見よ

2019年01月16日 | 教育・学校

  東京新聞「社説」2019年1月15日

 

 国立大学を競争させることで「改革」を促す動きが今春、さらに加速する。評価に応じて国からの交付金を増減する枠が拡大されるのだ。「長い目」で学問を育む姿勢が薄れることを懸念する。

 運営費交付金は、授業料などとともに大学の定期収入で、人件費や公共料金、備品代などに充てられ、研究や教育の土台を支えている。配分方法によって、大学のありようは大きく変わる。あらたな方針が本当に学生や研究者、地域社会などのためになるのか、注視していく必要がある。

 教員数や学生数などに応じて配分されるが二〇〇四年の法人化以降減少傾向が続き、名古屋大と岐阜大が法人統合に向けて動きだすなど、スリム化の動きも顕在化している。新年度の政府予算案では、一兆円余の交付金のうち、評価によって上乗せされたり減額されたりする傾斜配分の枠を現行の3%から10%に拡大。評価指標には外部からの研究資金や寄付金の獲得実績や、引用回数の多い論文数などが使われる。

 評価による配分は今後も拡大していく方向で、安倍晋三首相は二二年度以降「交付金全体の配分方法の見直しを実現する」とも話している。

 国立大学側は「毒まんじゅうの毒が身体に回って死んでしまう」(国立大学協会会長の山極寿一・京大学長)と猛反発してきた。評価によって増減するお金は人件費には使えない、というのが言い分だ。すでに若手研究者が正規採用されにくくなっており、不安定な研究環境に、梶田隆章・東大宇宙線研究所所長らノーベル賞受賞者も懸念の声を上げている。

 評価指標には若手研究者の比率や、外国人教員や女性教員など多様性の確保に努めているかなども含まれ、改革に資する部分もあるだろう。

 ただ企業などからの外部資金の獲得実績となれば文系学部が苦戦することは目に見えている。少子化も踏まえて、教育学部の廃止などの検討に入っている大学もあり、卒業生を教員として受け入れている地方自治体側は神経をとがらせている。

 人工知能(AI)が、人間の仕事を代替していく時代もいずれくるならば、人間とは何かが今より強く問われる局面も訪れるかもしれない。人文科学が答えを探すヒントを与えてくれることもあるだろう。性急に「役に立つ」学問ばかりを求めず、長期的な視点も大事にしたい。