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<原発のない国へ 福島からの風> 飼料作物から発電

2019年01月03日 | 社会・経済

東京新聞 2019年1月1日 朝刊

 

富岡町の農地で栽培されたソルガム=エコロミ提供

 

 

二〇一一年三月に大事故を起こした東京電力福島第一原発から七キロの福島県富岡町で、飼料作物であるソルガム(コーリャン)によるバイオガス発電の実証試験が一月からスタートする。放射能で農地が汚染された同町。事故から八年近く経過した今も農業はほとんど復興していない。試験が成功すれば農地再生の足掛かりになると期待が高まる。

 サクラ並木で有名な富岡町・夜の森に近い農地脇に設置されたバイオガス発電プラント。昨年末から、大きな筒状の発酵槽に砕いたソルガムの投入が始まっている。発酵したソルガムから大量のメタンガスが発生、風船状のタンクにたまる。一月下旬にはガスエンジンで燃やし、発電試験を開始する手はずだ。電気は照明に使う。

 富岡町で大規模ソーラー発電を管理する「エコロミ」(東京都千代田区)と、福島県飯舘(いいたて)村で太陽光発電に取り組む「飯舘電力」が手掛ける。ソルガムは富岡町や飯舘村の農家に栽培を委託、秋に約四十トンを収穫した。

 「ソルガムで発電できることが証明されれば、農家は利益を得ることができる」。飯舘電力専務の近藤恵さんは言う。プロジェクトの背景には被災地の農業が直面する厳しい現状がある。 (池尾伸一)

農地の横に設置されたバイオガスプラント=福島県富岡町で

 

衰えた農地と町を再生へ 放射能で汚染、富岡町の挑戦

 コメ作りは富岡町の産業の柱だったが、放射能除染のために農地は五~十センチ剥ぎ取られ、山砂が投入され土地は痩せた。セシウムは基準以下となったが、作物を作っても風評で売れるか分からないため、農業を再開できた農地は九百ヘクタールのうち十ヘクタールだけで、ほとんどがさら地のままだ。国がお金を出し雑草を伐採しているが、この予算も二〇二〇年度で終了。このままなら同町の農地は荒れ放題になる。

 

 福島県全体でも、耕作を再開できない農地は一八年三月末時点で一万二千ヘクタールに上る。東京ディズニーランド二百四十個分に相当する土地だ。

 そうした中、エコロミと飯舘電力が着目したのが飼料やエネルギー原料に使えるソルガムだ。伐採後の根や茎をトラクターで土にすき込むことで養分にし、将来の農産物生産に備え地力を回復させる効果もある。

 両社は事業を二〇年度をメドに商業ベースに乗せることを検討する。収益性を高めるためにソルガムの一部を周辺の畜産農家に牛のエサとして販売し、提供された牛のふん尿からバイオガス発電することや、発電の熱をビニールハウスに供給することも計画する。

 事故前に一万六千人いた同町の住民は、約八百人しか戻っていない。エコロミ社長の小峯充史さんは「農地が徐々に再生し、利益を生むようになれば人口も戻っていくのではないか」と期待している。

<バイオガス発電> 有機ゴミなどを発酵させて、メタンガスを取り出し、ガスエンジン発電機を回して発電する。北海道で牛のふん尿を利用した発電が行われているほか、静岡県牧之原市では食品廃棄物から発電している。ガスを取り出すのではなく、有機ゴミを燃やした熱を利用して蒸気でタービンを回すのは「バイオマス発電」と呼ばれる。

<ソルガム> アフリカ原産のイネ科の作物で、日本ではタカキビ、中国ではコーリャンと呼ばれ古くから栽培されてきた。環境耐性が強く収穫量が多いのが特徴。食糧(種子)、家畜飼料(茎や葉)に活用され、近年はエネルギー作物としても注目されている。