歌舞伎 家と血と藝 (講談社現代新書) | |
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講談社 |
☆☆☆☆☆
先般、某落語家さんが書いた本とは、雲泥の違い。
力作で、5年後も10年後もずっと読み続けられる素晴らしい本でおます。
歌舞伎の世界で繰り広げられた世襲と門閥。
“家系”“血統”“芸”の継承
歌舞伎座の舞台では、血統にによる世襲と門閥主義により、幹部役者の家に
生まれた者でなければ主役は演じられない。
また、その血が絶えることは、一門の歌舞伎界での勢力争いに負ける事であり、
実の子は元より、妾の子でも、あるいは一門であれば、
甥や従弟にいたる者までを養子にしてまで、後継者をつくりだす。
それは、芸の継承というより名跡の継承、しいては一門が絶えることない為である。
そして、昔からそこに小屋主、興行主の思惑も絡み、襲名一つとっても兄弟といえども
争いごとになり、勝者と敗者に別れる。
一番の頂点は、劇界の最高位である歌舞伎座で主役を演じられること。
明治以降のこの「権力闘争」でもいうべき歌舞伎界での動きをこと細かに紹介している。
例えば、今年の4月から6月までの3カ月間の、歌舞伎座の杮茸落興行の21演目で
主役に据えられたのは10名。
最後に、列挙すると、七つの家からの10名。
市川團十郎家(海老蔵)
尾上菊五郎家(菊五郎)
中村歌右衛門家(梅玉、橋之助、坂田藤十郎)
片岡仁左衛門家(仁左衛門)
松本幸四郎家(幸四郎)
中村吉右衛門家(吉右衛門)
守田勘彌家(坂東玉三郎、坂東三津五郎)
やはり、耳にしたことのある役者さんばかりですが、
この中の、幸四郎、吉右衛門のように血統上は兄弟なのに家はバラバラ、
玉三郎と三津五郎は家系上は同じ家ながら、血統は繋がっていない、
この複雑な関係がいかにして起こり、なぜ形として継続されているのかを
著者“市川右介”さんが丁寧に解説してくれるが、余りの複雑さにいったりきたり
家系図と見比べながらの読書、頭の整理を兼ねて是非お試しあれでおます。
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歌舞伎関係の本は業界に配慮したヨイショが少なくないだけに、「公的には実子だが実は養子(らしい)」といったような部分に踏み込んでいる点は貴重です。
ただ、この著者は客観的なようで、実は結構好き嫌いで書いている部分もあるので、鵜呑みは危険です。
また、これまであまり書かれなかった「権力闘争」にこだわっている反面、実際の舞台に対する評価や愛情があまり伝わって来ないですね。
それにしても、片岡仁左衛門家を除いて、上方歌舞伎についての扱いが冷たいですね・・・。
現在仁左衛門家と中村鴈治郎家以外の上方の家は絶えているので、仕方がないのでしょうけれども。
あまりの複雑さに驚愕。
それにしても、誰もが主役をはれる落語は単純明快でよろしいな・・・・。