“短歌タイムカプセル”で好きな歌が多くあった歌人が七名。
このまえ、“葉ね文庫”へ行った際、購入した本の中の一冊。
なぜか、大事に、大事に読みましたよ・・・・。
気になった歌は、
美しい傘をいっぽん抜き取って空とふたりを遮断する夏
こいびとはひとりでもいい傾いた電信柱にもたれるように
ひとりしか抱けないひとのゆるやかな眠気を今は受け入れている
きんいろのバターナイフをすべらせて始めるなにも選ばない朝
こいびとの膝の裏から亜熱帯めいたにおいがこぼれたら夏
こなぐすり飲むときだけは少年の時代の顔を見せるのですね
やわらかな炎に水をこぼすときあなたの淡い悲鳴 ちがうの
父親になってくれないひとなんか捨ててしまえと書く診断書
こいびとが三人いれば三倍のしあわせかしら に答えられない
くちびるの感触はなぜひとりひとり違うのですか に答えられない
おとうとのカルピスは濃くこいびとのカルピスはやや甘くする朝
くるぶしは男の肩に載せるためにこんなかたちになったのですね
お互いのうろこを外し合うときに目からこぼれるひかりが好きよ
透きとおる部屋、透きとおるわたしたち眠れる眠れないどちらかが
下着入れに忍ばせている石鹸のような感情ひとつ渡せない
ソープ皿購うときは匂い立つふたり暮らしをやさしくはらう
ドーナツがぐしゃぐしゃなのも性愛の思い出にしてよいのでしょうか
体ではないものばかりなじむからあなたのものは返さないから
さびしさをめくってほしいかなしみをはがしてみたい上澄みだけ、 でも
しますか。しないのですか。今もまだ日暮れのようなわたしの体
ブルーベリージャムをチョコレートに載せてもっと汚れたこと言っていい?
愛してるどんな明日でも生き残るために硝子の弾丸を撃つ