![]() | 冒険者たち (新鋭短歌シリーズ38) |
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書肆侃侃房 |
☆☆☆
これも、“まちライブラリー”での一冊・
今回は、男性歌人の“ユキノ進”さんで、
サラリーマン、会社員、働く男の実社会がみえてくる。
何気ない言葉に、職場のシーンが浮かび、あるあると共感。
そこで、気に入った歌を・・・・・。
飛べるのだおれよりもずっと高くまでローソンのレジの袋でさえも
幾年も回り続けて山手線は東京の空を飛んだことがない
マンションの高層階から一階まですこしずつ違う空を見ている
乗り合わす朝のエレベーターこの中のひとりは昨夜泣いてた人だ
雨の日だけバスに乗るので車窓から見る風景はいつも濡れてる
いつまでも僕はあなたに話していたい海にまで至るようなことばで
会社には不満はないという部下が暗い香りの紅茶を淹れる
マンションのどこかで揚がるコロッケがまもなく春の岸辺へ向かう
家族より仕事ですかと尋ねられ少しのあいだ途切れる会話
幸せの意味を問いつつキッチンで鳥だったものを解凍している
骨になるまでのひととき薄紅の花の名前を教えてもらう
とんかつのキャベツの盛りが高くなり今年も春が来たことを知る
たった五年で世界は変わる地下鉄で夕刊フジを読む人がいない
損益計算書がすこし傷んで躊躇なくコストと人を会社は削る
内線表に並ぶ名前の階級制 社員、 契約、 派遣の順に
ストラップの色で身分が分けられて中本さんは派遣のみどり
社員ひとり減らして派遣をあとふたり増やす部門の年次計画
これ明日の朝イチまで、 と言いかけて午前中にと指示をし直す
人がひとを裁く疚しさ 意欲とか責任感まで評価するのか
オフィスの蛍光灯の両端が腫瘍のように黒ずんでゆく
幾年も回り続けて山手線は東京の空を飛んだことがない
マンションの高層階から一階まですこしずつ違う空を見ている
乗り合わす朝のエレベーターこの中のひとりは昨夜泣いてた人だ
雨の日だけバスに乗るので車窓から見る風景はいつも濡れてる
いつまでも僕はあなたに話していたい海にまで至るようなことばで
会社には不満はないという部下が暗い香りの紅茶を淹れる
マンションのどこかで揚がるコロッケがまもなく春の岸辺へ向かう
家族より仕事ですかと尋ねられ少しのあいだ途切れる会話
幸せの意味を問いつつキッチンで鳥だったものを解凍している
骨になるまでのひととき薄紅の花の名前を教えてもらう
とんかつのキャベツの盛りが高くなり今年も春が来たことを知る
たった五年で世界は変わる地下鉄で夕刊フジを読む人がいない
損益計算書がすこし傷んで躊躇なくコストと人を会社は削る
内線表に並ぶ名前の階級制 社員、 契約、 派遣の順に
ストラップの色で身分が分けられて中本さんは派遣のみどり
社員ひとり減らして派遣をあとふたり増やす部門の年次計画
これ明日の朝イチまで、 と言いかけて午前中にと指示をし直す
人がひとを裁く疚しさ 意欲とか責任感まで評価するのか
オフィスの蛍光灯の両端が腫瘍のように黒ずんでゆく