旅芸い者放浪記

前沢政次 ブログ

老いても子に従わない生き方

2013-10-31 23:28:07 | 診療
きょうの外来は1例1例が重く、なかなか先に進みません。

ご家族も一所懸命なのは分かりますが、複雑な問題がからむのが高齢者。そしてそれぞれの症状は改善できるものとは限りません。低たんぱくからのむくみなど治療は難しいですよ。

医原病も少なくありません。

ひどいなあと思ったのは支援困難事例で地域ケア会議までしていて、「認知症で治療を拒否するケース」とされていた人。

確かに幻視はありますが、白い物体だそうで、本人も「自分にだけ見える。分かってるよ」と笑って話してくれました。

家族によると部屋が寒くて、暗闇でご飯食べているというのです。

室温は? と尋ねたら14~15℃。おー随分あったかいじゃありませんか。昔、札幌で検討した事例は92歳の男性で 0~1℃の部屋で暮らしていました。凍死なんかしません。

石油ストーブや電気の暖房が嫌いで、まきストーブのみ。それも家族がまきを入れるとストーブの外へ出してしまう。絨毯の上に置いたりするそうです。(これは危険)

本人は森林組合からチップを買ってきて、それを午前中燃やして、まきを使わず、あとは暖房なしとのことです。

幻視はありますが、それ以外は昔ながらの生活・暮らしを好んでしているだけではないでしょうか。みんなで寄ってたかって認知症にすることもないでしょう。

この方はぼくの外来で唯一着物を毎回着てこられます。といっても下はもんめみたいなの。なんていうのかな。そうなんです。昔のまま。いいんじゃないかなあ。

ぼく以外の医者にはかかりたくないとのこと。

なおしばらくは認知症のクスリなど処方する気になりません。本人も飲みたがらないし。

まきは無駄と思っているようなので、ご家族もおせっかいでまきをあげるのはやめたほうがよいでしょう。チップは長持ちしませんが、本人が好きなのだからよいでしょう。もちろん、ストーブをたく午前中は交代で火の元に注意して見守ってあげましょうね。

生活に寄り添うとは、古い生き方にも寄り添ってサポートを工夫することでしょう。



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